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母の愛を感じた瞬間。


父と大喧嘩をしてから1週間が経った。

私はまだ父とはギクシャクしたまま。

なるべく顔を合わせたくないこと
なるべく話をしたくないこと

これもまだ継続中である。

結局機械系のことは全く分からず困り果て、
詫びも入れずに平気で声をかけてくる父に、
まだ腹を立てているのだろう。

夕飯も何だか食べる気がおきずにいて、
食べない日が殆どだった。


朝が早い日があって朝ごはんを抜いたり、
昼休憩がなくて昼ごはんを抜いたり。


そんな生活も日常的にある中で
夕飯まで抜くとなり母の心配に拍車をかけた。


「一緒にご飯を食べなくてもいいから食べて欲しい」
母は私にそう言った。

うん、と素直に言えない自分が居た。

頑固だな。

心の中で呟く。

その日私は夕飯を食べずに寝た。



翌日。

人手が足りず、朝から仕事。

勿論、朝も食べてなければ昼も食べてない。

加えて体調がすこぶる悪かった。

頭痛に、吐き気。


これはきっと低血糖症。

それに加えて生理も近い。

最悪だー


周りに迷惑をかけないように平気な顔をして。

とりあえず家に帰るまで我慢。

炊きたてのご飯の匂いにしんどさを感じつつ、
私はその日無心で働いた。

偶然にもその日は父の迎えはなく。

バスもタクシーも苦手な私は、
歩いて帰宅。


家に帰ると母がキッチンから顔を出した。

「おかえり」

笑顔で迎えてくれる母の姿に、
夕飯を食べず寝てしまった行動に申し訳なさを感じる。

それでも母は私を怒らなかった。

怒る所か、
「今日はむーちゃんの大好きなもの作ったよ」
とルンルンしている。


そういえば。

玄関まで美味しそうな香りがする。

「あと、これね。」

母は私にパンパンの袋を渡してきた。

「部屋に置いておきな。お腹が空いたら食べてね」

私の大好きなさけるチーズとバターロール。
くるみぱんに、駄菓子が沢山。

「今日は、むーちゃんの大好きなビーフシチュー」
「今一緒に食べよう。あとゆで卵」
「お父さんと食べたくない気持ち、分かるから」
「先に食べて、顔合わせないようにしようね」


現状、我儘娘でしかないのに
私の好きなものを沢山用意してくれて。

怒らず、受け入れてくれて。

ビーフシチューも私が凹んでいる時にいつも作ってくれる。

感謝しかないし、何より母の愛を感じた。


あの日、
「お母さんだってあなたの親なんだから」
と言われて後悔をした。

私の行動で母を傷つけてしまったと。


後悔をしたのに、
その気持ちとは裏腹な行動をしている自分。

そんな自分に腹を立てて泣いた。


「ごめんね」
と母に伝えて泣いた。


母はそんな私を見て
「生きててくれるだけで十分だから」
と頭を撫でた。


母と一緒に出来たてのビーフシチューを食べた。

美味しくてまた涙が出た。

「美味しい」

不思議と笑顔が零れた。

長い長いトンネルを抜けたような感覚があった。

気持ちを切り替えることはまだ難しい。

父の怒鳴り声にはビクつくし、
家に電話がかかってくると動悸もする。

だけど母の愛を受けて、気持ちが和らいだ。



今日、私は一人で買い物に出かけた。

美味しいと言われているお店の、
クッキーやシフォンケーキ。

車で何軒も回って回って。


母の大好きなものばかりいっぱい買って家に帰った。


家に帰るとソファでのんびりドラマを見ている母。

「なに、沢山買い物してきたねぇ」

という母に、トトロに出てくるカンタと同じように
「ん!」
と紙袋を渡す。

紙袋を覗いては嬉しそうな顔を見せる母。

それを見て嬉しい気持ちになる私。

温かい紅茶をいれて2人で食べた。


私は母が大好きだ。

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