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20代一般女性とジストニア -その2

前回は、症状が現れてから、それが「ジストニア」だと自覚するまでの過程などをまとめました。
※10秒でふわっとなら分かるジストニアの説明も、「その1」の序盤に書いてあります。

今回は、ジストニアを治療してくれる病院を求めて右往左往していた時のことを書こうと思います。紹介状周りのこと(愚痴)を色々と書いています。
そして、書いている途中で文章がめっちゃめちゃ長くなってしまったことに気付いたので、前編と後編に分けることにしました。長文芸人です。

①発症した時のこと
②地獄の病院探し ☜今回(前編)
③ボトックス注射での治療~一度目の寛解
④再悪化~手術の決断
⑤手術とその後
⑥まとめ(もしかしてジストニア?と思った時に取るおすすめルート…が書けると良いな。)

あと、どうでも良すぎるのですが、サムネイルがあった方が楽しいので設定してみました。全然関係ない画像で恐縮ですが、プロフィール名にちなんで、自分が以前撮った紅葉の写真です。


新年の三が日を首の激痛に耐えながら寝込んで過ごした私でしたが、病院に行けさえすればどうにかなる!と思っていました。
ですが実際には、最終的にかかりつけになる神経内科の病院に辿り着くまでに、1ヶ月程の時間を要しました。
さらに、その後実際の治療(ボトックス注射)に進むことができたのは、その約3週間後のことでした。

とても辛い期間でした。スケジュールアプリを見返しても、2021年1月から4月にかけては何も書かれていなくて、過去の自分の心中をお察しします。
現在進行形で苦しんでいる再悪化後も相当辛かったですが、この頃はとにかく先の見えない不安と恐怖に毎日押しつぶされそうでした。


ジストニアの治療方法

本題に先立ち、私が選択可能だったジストニアのメジャーな治療方法について、またもやざっくりと書いてみます。
※私は局所性→分節性ジストニアらしく、全身性ジストニアには明るくありません。その場合は異なる治療方法のパターンが取られると思います。ご了承ください。

①内服治療
後述しますが、私は医師にこの方法をあまり勧められなかったので(私には効果が出にくい可能性が高いという理由)、内服治療については詳しくありません。
内服治療を行う場合、「抗コリン薬」や「レボドパ」などの薬を服用するとのことです。

②ボツリヌス治療(ボトックス注射)
局所性ジストニアの第一選択であり、私が当初から現在に至るまでメインで受けている治療方法です。ボツリヌス毒素を薄めたものを、症状が出ている筋肉に注射します。ボトックスは、美容外科の広告でもしばしば目にしますね。
治療においては、基本的に一度の注射で2~3ヶ月程度の効果があり、定期的に注射を打ちに行く形になります。眼瞼けいれんと痙性斜頸では保険が適用されます(…が、適用されても注射の値段は高く、私の財政を圧迫しました。ああ私のボーナス!!!)。

③定位脳手術
ボツリヌス治療や内服治療の効果が出にくくなった時、医師と患者の間で手術をするかどうかの検討・相談が行われます(行われるはずです)。
手術には2種類あり、持続的に電気刺激を行う「脳深部刺激療法」と、電極による熱凝固を行う「凝固術」があります。
前者の「脳深部刺激療法」では、脳内に機械を埋め込み、特定の構造物に持続的な電気刺激を与えます。組織破壊を行わないため、不可逆的な変化を避けることができます。しかし、定期的なバッテリー交換が必要であり、その度に手術を行う必要があるそうです。
後者の「凝固術」は、電気刺激の代わりに、脳の中の特定の構造物に対して熱凝固を行う手法です。私は神経内科の主治医に「焼き切る」と少し物騒な表現をされました 笑。凝固術は不可逆的で、一度施術を行うとその場所は元に戻りません。ただし、バッテリー交換などは必要としないため、基本的には一度の手術で済むそうです。こういった理由などから、環境が揃っていれば、若い患者は凝固術を勧められるそうです(私もそうでした)。ただし、この凝固術ができる病院・脳外科医は相当限られているとか…。
(参照:https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1141.html#theme5 , https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051070465.pdf , https://www.twmu.ac.jp/NIJ/column/dynamic_disorder/deep_brain_stimulation.html
これまたざっくり説明のため、関心のある方はジストニアの治療を行っている医療機関などのHPを見ることを心からお勧めします。


②地獄の病院探し(前編)

2021年1月4日(月)。ジストニアの治療は脳神経内科(=神経内科)で受けることは複数の医療系サイトに書いてあり把握済みでした。
当初は、かかりつけの心療内科で、どこか良い病院を紹介してもらおうと考えていました。私がいくつか調べた範囲内ではありますが、大きな病院の神経内科は基本的に紹介状が必要です。しかし、私に紹介状を書いてくれる担当医は、木曜日しかクリニックにいらっしゃいません。これが中々大変でした…。
首の痛みに耐えられず、一刻も早くお医者さんに相談したかった私は、担当医に会う前に、近所にある神経内科のクリニックに駆け込んでみることにしました。

1. Aクリニック(脳神経外科・内科・神経内科ほか)
初っ端から申し訳ないのですが、このクリニックの先生は依然として「人生で出会った嫌いな医者ランキング」第一位の座に君臨し続けています…。
なるべく悪口を簡潔にまとめられるよう善処します。

まず脳のCTを撮りました。この頃は仰向けで横になっていると身体が痙攣するほど状態が悪かったのですが、そうした体動はCT撮影の妨げになります。やむを得ず医師と看護師に頭と身体を強い力で押さえつけられ、辛いやら痛いやらで泣きそうになりながらCTを撮ってもらいました。

その後、診察室に入り、CTの結果を見ながら医師と話しました。開口一番、「君が動いたせいで、あまりよく撮れなかった」と言い放たれ、好感度が地面ぐらいまで落ちました。いやそうかもしれないけど、意思とは関係なく勝手に動いちゃうって最初から言ってるじゃーん。

一応自分の状態についても改めて説明しました。ジストニアと思われる症状が酷くて困っている。本当は心療内科の担当医に相談しようと思っていたが、その診察日まで耐えられそうにないぐらい首が痛いので、急遽ここへ駆け込んだ。一時的でも良いから、今の状態が楽になる方法は無いだろうか…などと話した記憶があります。
それに対してこの医師は、「まずはメンタルを落ち着かせて、心療内科の薬をやめるのが先じゃないの?」「なんで心療内科に通うことになったの?」「なんで君は博士課程をやめちゃうの?勿体ないね。」などと、”なんでなんで攻撃”を始めました。私は普段、咄嗟に人に言い返すのが苦手な人間なのですが、流石にこの無神経な物言いにはブチ切れてしまい、「それ、今あなたに話す必要ってありますか?診察にどう関係あるんですか?」と震える声で言い返しました。「関係は無いね。」と言われました。コミュニケーションのセンス皆無か?この医師への好感度がマントル辺りまで落ちた瞬間でした。
その後この医師の言葉は全て適当に聞き流し、診察室を後にしました。

こんな感じでしたが、CTを撮ったので1万円とられました。クッッッソ。
無論、よい神経内科のクリニックもあります。軽度のジストニアらしき症状に悩んでいた私の知人は、町の小さなクリニックで素晴らしい神経内科医と出会ったそうです。
あえて反省点を挙げるとすれば、このクリニックでの診察内容(=得意としていること)や口コミなどを十分に確認しなかったことです。この医師は、神経内科も診れると謳っていたものの、脳神経外科が専門でした。あと、口コミは☆2.7でした。
またジストニアという疾患は、神経内科の看板が出されていたとしても、どこでも診てもらえる訳ではありませんでした。いきなり初めてのクリニックに飛び込まずに、事前に電話で問い合わせておけば嫌な思いをせずに済んだかもしれないなと、今となっては思います。ただ、この時はとても余裕が無く、そこまで思い至りませんでした。

2. Yクリニック(心療内科)
1月7日(木)。待ちに待った心療内科の担当医の診察日がやってきました。
渋谷にあるクリニックに赴き、「服薬を止めたが症状は改善されず、むしろ酷く悪化している」と訴えました。先生は動揺した様子でしたが、ちゃんと神経内科で診てもらった方が良いので紹介状を書くと言ってくれました。先生が動揺していたのは、これまで私が受けていた処方内容でジストニアを発症するケースが、かなり稀だったからの様です。

神経内科に行くのが初めてなのと、この辺りに引っ越して来てから数か月しか経っていなかったので、どこの病院が良いのかまるで分かりませんでした。この心療内科の担当医は、ジストニアについてもすぐ話が通じ、さらに痙性斜頸(※)についても教えてくれたので、きっと良い神経内科を知っているだろうと勝手に期待していました。しかし結論から言うと、「紹介状は書くけど、ジストニアの診察ができる病院は自分で探してほしい」と言われてしまいました。
「とりあえずT大病院にしておく?」「通いやすいように家から近いところにする?」と聞かれ、私もどこにすれば良いのか分からないため混乱しつつ、とりあえず自宅から近くて比較的大きく、神経内科があるS病院宛に紹介状をお願いしました。
※痙性斜頸:首や肩の周囲の筋肉が意思とは関係なく収縮し、それによって頭、首、肩などが不自然な姿勢を示してしまう病気を指します

自宅に戻ってから、S病院に電話することにしました。最初は、これでやっと神経内科の診察に辿り着ける…!と期待の気持ちが大きかったのですが、そうすんなりと事は運びませんでした。Yクリニックから帰っている間に、この病院の神経内科についてHPで見てみたのですが、医師は一人しかおらず、週あたりの診察頻度も多くはありませんでした。若干嫌な予感がしつつ電話をしてみると、やはり神経内科は当面の間予約がいっぱいで、一番早くて1月末ごろになると伝えられました。肉体的にも精神的にも辛く、周囲にも迷惑をかけている中、そんなには待てないと思いました。一旦仮で予約を取り、別の病院を探すことにしました。

困り果てた私は、やはりT大病院宛に書いてもらうべきだった…と後悔していました。紹介状って宛名が別の病院だとダメ?封筒の宛名、勝手に書き直しちゃダメ?「これはS病院宛になっていますが、心の目でT大病院宛と読んでください」で押し切れない?いやダメだよねーーーーー。
そうとなると、また新しく紹介状を書いてもらわなければなりません。紹介状を書いてくれる担当医が次にクリニックに来るのは一週間後。時刻は16時過ぎ。クリニックが閉まるまであと2時間弱。私は再度スマホを手に取り、今度は先程までいたYクリニックに電話をかけました。

電話では、紹介状を頂いた後のことについて説明し、どうしても今日中に紹介状の宛名を変えて欲しいとお願いしました。受付の方が先生と相談してくださり、クリニックが閉まるまでに来られるなら、紹介状の宛名をT大病院に直していただけることになりました。電話を切るなり、首が右に曲がったまま、大急ぎで渋谷へ向かいました。先生も診断書の差し替えを準備しておいてくださり、それを受け取って帰宅しました。家に着いた頃にはもう夜で、診察予約の電話は翌日かけることにし、この日は疲れ果てて泥の様に眠りました。

3. T大病院(神経内科)
T大病院に行くのはこれで2回目でした。ちなみに1回目は親知らずの抜歯でした。
紹介状を受け取った翌日に電話をかけると、1週間以内に診察の予約を取ることができました。流石大学病院は規模が大きい!
T大病院は自宅から少し離れていたため、診察当日は電車ではなくタクシーで往復しました。親知らず抜歯でも通った病院だったので、少なからず安心感がありました。

受付を済ませ、ここでジストニアになって初めて、神経内科を専門とする医師の診察を受けることができました。
先生は穏やかな方で、紹介状を見つつ、私の話もよく聞いてくれました。治療方法についても相談しました。まず①内服治療ですが、私の状態では服薬での改善は期待できないとのことでした。そこで、②ボトックス注射を打つのが良いのではないかというのが先生の見解でした。私も納得して説明を聞いていました。

しかし大変残念なことに、T大病院ではボトックス注射での治療ができないと宣言されました。頑張ってここまで来たのに…と落ち込みましたが、その代わりボトックス注射での治療が可能な病院への紹介状を書いていただくことになりました。
この時少し驚いたのが、紹介先の病院をどこにするかは、先生がその場でググって「ここ良さそうじゃない?」と言った病院にしたことです。心療内科⇔神経内科だと専門が違うから、どの病院が良いのか分からないものなのかなと思っていましたが、同じ神経内科同士でも、必ずしもジストニア治療(ボトックス注射)に関するパイプがある訳ではないと、この時知りました。

先生は、都内にあるTクリニックを選びました。私も一緒にHPを見ましたが、評判がよさそうで、プロフィールによると院長がジストニア治療における権威的存在で、それなら安心だなぁと思いました。先生は、道中で迷わないようにTクリニックのMAPを印刷して渡してくれるなど、とにかく親切でした。お礼を言いつつ、診断書とMAPを携え、病院を後にしました。久々に医師ときちんとコミュニケーションをとることができ、この時は少し心が軽くなっていました。

しかし、診察の予約のためにTクリニックに電話をかけてみると、「予約を取れるのは、早くて7月○日ですね」と伝えられました。つまり半年以上先でした。とても人気のクリニックだったようです…。流石に7月まで待つのは現実的ではないので、予約はお断りしました。
この時点で病院の手札がゼロになり、状況は振り出しに戻ってしまいました。この時の絶望感は、かなり鮮明に覚えています。呆然と見つめていた壁が家のどの辺りだったかも覚えています。
もう伝手が無くとも、ジストニアの治療をちゃんとしてくれる病院を自力で探すしか道はありませんでした。

これは実際のお医者さんにも聞いてみたいのですが、紹介状のシステムってもうちょっとどうにかならないんですかね。
例えば、Yクリニックの先生がT大病院でジストニアの治療ができるか確認してから紹介状を書いてくれていたら?T大病院の先生がTクリニックに患者を受け入れられるかどうか確認してから紹介状を書いてくれていたら?
お医者さんも大変お忙しいので、患者一人一人のために詳細な確認をするのは難しいのかもしれませんし、きっとそのようにできない事情があるのだとは思います。
それでも、珍しい病気に対する知識も無く、身体が上手く動かず、激しい痛みもある患者が、このように度々心を折られるのは、我ながらちょっと酷だったんじゃないかなと思ってしまいます。正直言うと死にたかったです。
突然富豪になって、専属の秘書が付いて、代わりに全部調整してくれて、自分はずっとベッドで安静にしたままで済まないかなーという非現実的な妄想もしました。
できれば、この記録の最後の方で、私の経験ベースではありますが、ジストニアに苦しむ人がなるべく楽に治療先へ辿り着けるような方法がまとめられたらいいなと思います。

無理みが凄い前編になってしまいました。もしここまでちゃんと読んでくださった方がいたら、結構疲れたのではないでしょうか…。
でも大丈夫です。ネタバレですが(闘病記録にネタバレも何もありませんが)、最終的には私も良い先生に巡り合うことができます。
後編では、ジストニアを治療してくれる病院を一から探し、その結果辿り着いたところまでをまとめます。

つづく


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