短編小説 立ち食いのそば
こちらの投稿に導かれて、生まれて初めて小説を書いてみました。
短編小説 立ち食いのそば
私、そば、駅のホームの立ち食いそば屋で出される、安いそば。
あなた、ちょっとあなた。いままさに私を食べようとしているあなた。あなたですよ。おおい。
せっかくのご縁だから、お話ししてみたかったのだけれど。
そうか、あなたには私の声が聞こえないのね。
虚ろな目で、時計を気にしながら…んまぁ急ぐわねえ…新幹線なんて数分おきにあるんだからどれに乗っても同じでしょうに…ちゃんと味わって食べてる?
うちは冷凍麺だから歯応えがあるって、界隈では評判が高いのよ。
急ぎながらでも食べる幸せに意識を向けることはできるというのに、全く…最近、味わうことに意識を向けないで、最低限の栄養さえ摂取できればいいと思っているような食べ方をする人の多いこと!
日々のささやかな食事だって、楽しもうと思えばなんぼでも楽しめるんですからね!
ふう。いけないいけない。いくら聞こえてないからって、持論を押し付けるのはよくないわね。
よれたスーツ、目の下の隈、何かを考える余裕もないのかもしれないもの。
そういうときこそ、束の間の食事でホッとひと息ついてほしいわね。
もう行くの?
あらっ。麺は残ってないしスープも半分に減ってる。
ふふっ、おいしかったのね。よかった。
少しは元気出た?
頑張るのよ。それじゃあね。
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