秋月ムロ

Movie,Cinema,Place 1991- Tokyo

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最近の記事

映画と場所についての論考(仮題)④:『映画と経験 クラカウアー、ベンヤミン、アドルノ』

ミリアム・ブラトゥ・ハンセン著、法政大学出版局、2017  映画を観ることについての考察の準備として映画理論の書籍をいくつか洗う。といいつつも主題として挙げられる3人の著書についてはベンヤミンの『複製技術時代の芸術』のみ既読。最近日本語訳化されたクラカウアーの『映画の理論 物理的現実の救済』は近日中に読みたい。  ドイツの辿ってきた映画に纏わるモダニティの歴史について無勉強ながら読み進める。100年を超えた映画史においてドイツではファシズムの台頭、その渦中にいた3人の映画

    • 映画と場所についての論考(仮題)③:『視覚文化「超」講義』

      『視覚文化「超」講義』を読む。  映画を観る主体としての観客の視点、総じたメディア史について勉強。  映像作品に対するアート対エンターテイメントという対立について、それぞれ「レギュレーション(規則群)」として違いがある、としている。その作品に対してどのような文脈で語られるか。重要なことは「レギュレーション」に対する働きかけを考えることと挙げている。教養主義の歴史を紐解きながら書かれている。Lecture.2 ノスタルジア/消費にて、ディズニーランドの消費を経験としてパッケ

      • 映画と場所についての論考(仮題)②:「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形」

         「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形」を読む。筆者は稲田豊史。 「鑑賞」と「消費」 Netflixなどのサブスクサービスで映画やドラマ、アニメを1.25倍や1.5倍速で観る人たちがいるということ、そしてクロス・マーケティングの調査や筆者による青山学院大でのアンケート調査を元に、それは若者に多いことを示している。早送りで観る理由として主に時間効率を優先すること、それによる本数を稼ぎ出し、友人や知人などとの話題に出遅れない為という。筆者は

        • 映画館と場所についての論考(仮題)①:東日本大震災と「おおかみこどもの雨と雪」

           2011年3月11日、東日本をマグニチュード9.0の地震が襲った。東北の沿岸部は津波により建物は流され、多くの命が奪われた。私は当時、東京の実家にいた。主だった被害は棚の食器が1〜2枚割れた程度で、近しい人にも怪我人はいないのは幸運だった。直後の4月に私は大学に入学する。そして1年経った大学2年生の夏の休暇期間に、あの大震災の被害のあった町をこの目で見ておきたいという気持ちを抱き、大学の友人と共に石巻へ向かった。  とはいえ学生の身分、金はない。前日の深夜にバスに乗り込み

        映画と場所についての論考(仮題)④:『映画と経験 クラカウアー、ベンヤミン、アドルノ』

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        • 映画感想のまとめ
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        • 映画館と場所についての論考(仮題)
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          「君たちはどう生きるか」俺はこう生きた

          引退するって言ってなかったっけ…?  スタジオ・ジブリ最新作。監督は宮﨑駿。  事前の宣伝や広告をほとんど打たないという戦略。普段からテレビを観ない私は映画館に貼られているポスターを見るたびに思い出し、公開直前で告知を行っていないということを知った。公開前日あたりからSNSで話題に登るようになっていた印象。「君たちはどう生きるか」という題名と「宮崎駿が監督する」ということ、そして鳥のような生き物が描かれたポスターだけしか事前に我々に渡された情報はない。題名については吉野源三

          「君たちはどう生きるか」俺はこう生きた

          「BLUE GIANT」ジャズの良さを言語化できなかった自分

           好きなジャズプレイヤーはジョン・コルトレーン。マイ・フェイヴァリット・シングスが大好き。  原作は「岳」の石塚真一による同名作品。  ジャズをテーマにし、主人公である宮本大が地元の仙台から東京、ヨーロッパ、そしてアメリカへと旅をしていき、その中で出会う人々や街とジャズを通じて、世界一を目指す話だ。本作では東京編が主軸で仙台での描写は少しの回想に留まる。 なぜジャズが好きなのか 漫画を全巻持っているほど好き。元々ジャズをそこそこ聞いており、それをテーマにした漫画が面白いと

          「BLUE GIANT」ジャズの良さを言語化できなかった自分

          「ザ・フラッシュ」アメコミとアメコミ映画のまとめ

          フラッシュもバットマンもスーパーマンもな、200人おんねん(そこまで出てこなかった…)  フラッシュ初の単独作。  フラッシュことバリー・アレンは「ジャスティス・リーグ」のダークな雰囲気の中で一人だけ清涼剤のように明るく(文字通り全体的に暗いシーンが多いが、その能力による稲妻で明るい)、そして父親との関係などキャラクターの伏線が張られた状態であった為、楽しみにしていた人も多いのではないかと思う。かく言う、私も好きなキャラクターであった為、今作をとても楽しみにしていた。

          「ザ・フラッシュ」アメコミとアメコミ映画のまとめ

          「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」スパイダーマンというスタンダード

           スパイダーマンってな、200人おんねん(もっといる)  前作は個人的に生涯TOP3に入るほど大好きな作品。そもそもスパイダーマンが好き。もちろん今作も見逃せないため劇場へ。前作以上の最高の体験だった。 スパイダーマンのスタンダードについて 前作と同様に今作でも別次元のスパイダーマン(スパイダーパーソン)を描くことをテーマにしているが、前作で感じた”もっと別のスパイダーマンを見たい”という欲望を満たす映画になっている。その規模は1,000,000倍になり、圧倒的な数の別次

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          「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」それぞれの変化とその作品性について

           ありがとうガーディアンズ、ありがとうジェームズ・ガン。そして最後の最後でVOLUME 3をやっとつけた邦題担当の人、ありがとう。  シリーズとしては3作目。「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」「アベンジャーズ:エンドゲーム」や「ソー:ラブ&サンダー」、ディズニープラス配信の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル」も含めてかれこれ9年間もMCUで活躍してきた。一応シリーズとしては見納めらしい。今作に向けて復習がてらそれら作品を見直すと、登場人物がそ

          「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」それぞれの変化とその作品性について

          「アントマン&ワスプ:クアントマニア」ビッグかつスモールな目的

           あのキャシーがこんなに大きくなって…(親戚のおじさん目線)  アントマンは言わずもがなマーベル・コミックにおける最古参のヒーローであり、蟻のサイズまで小さくなったり、時には大きくなったり、自分のサイズを変化させることができる能力を持つ。それに倣ってと言うべきか、映画では"大きい"と"小さい"が要素として散りばめられており、本文でもこの点で映画を見ていきたいと思う。 次の”アベンジャーズ”に向けた"壮大な"スタート  いろいろな媒体で宣伝もされている通り、今作はマルチバ

          「アントマン&ワスプ:クアントマニア」ビッグかつスモールな目的

          「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」新しいスタート

           前作で死んだはずのシガニー・ウィーバーが何を演じるんだろうって思ってたら、まさかの子供で登場。CGってすごいなって思いました(小並感)  復習がてら前作の「アバター」を観直し。2009年の映画だから約13年も前に観たきりだった。当時は映画館で3Dで見て、3Dすごい!ってなった覚えがある。それからしばらく3Dで映画を観てたけど、眼鏡オン3D眼鏡は疲れることに気づいた為「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」を3Dで観て以来それっきり。本当はIMAXで観たかったけど、近所

          「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」新しいスタート

          「THE FIRST SLAM DUNK」再構築と脱構築

           公開前の声優変更とかストーリーを一切明かさないとかで炎上してたけど、なんで観る前にあーだこーだとネットで言うやつがいるんだろうって毎回思う。黙って公開を待て。観てから言え。  SLAM DUNKことスラダンはもちろん漫画は全巻読んでいる。アニメは小学生のころ夏休みにテレビで放送しているのをよく観ていた(ちょうど学校の夏休みプールの時間前に放送していたのを覚えてる)井上雄彦の漫画も好き。最近の「バガボンド」や「リアル」も同じく(早く続きを…)。好きかどうかと言われると好き。

          「THE FIRST SLAM DUNK」再構築と脱構築

          「ブラックアダム」ただの"アンチヒーロー"ではない

           「THE BATMAN -ザ・バットマン-」や「ジョーカー」といった路線が好きな人も分かるけど、僕はこういうマッチョイズムなDC映画も好き。どんどんやってほしい。  ザ・ロック様ことドウェイン・ジョンソンによる筋肉映画(いつもの)。ついにはアメコミ界に参入…と言いたいけど実はドウェイン・ジョンソンがブラックアダムを演じるというのは何年も前からニュースに上がっていた。いつからかは覚えてないけど、最低でも「シャザム!」(2019年公開)より数年前から話題はあったはず。詳しい人

          「ブラックアダム」ただの"アンチヒーロー"ではない

          「母性」 母を求めて三軒目

           僕は母でも娘でもないので本質的な部分を理解出来ていない気がする。そんな前提。  原作は未読。湊かなえ原作映画も全部を観れてるわけではないけど「告白」と「白ゆき姫殺人事件」はすごく好きな映画。だから観た、というわけでもないが予告で面白そうだったので鑑賞。想像していた内容とは別ベクトルの生々しさが怖かった。 理想を求めること  映画にはいくつかの”家”が登場する。映画冒頭の”祖母の家”、映画中盤、結婚したあと家族3人で過ごす”理想の家”、終盤の”田所の家”。 それぞれの”

          「母性」 母を求めて三軒目

          「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」悲しい物語

           暗い水の中から突然、足首パタパタ海パン男が現れたら凄く怖い。この世界の人たちって宇宙人とか神様とか超能力者みたいなのが身近にいるから慣れてるのかな。  最初から最後までずっと悲しい物語だった。  前作までブラックパンサーことティ・チャラを演じていたチャドウィック・ボーズマンは2020年に亡くなった。世界中が悲しみに暮れる中ブラックパンサーの続編制作のニュースに不安を抱いた。チャドウィックのいないブラックパンサーがブラックパンサーになるのかと。  コミックを知っている者であ

          「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」悲しい物語

          「キャメラを止めるな!」これは落語です

          いや本当に。  タイトルの通り「カメラを止めるな!」のフランスリメイク作と思いきや、“30分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”が日本でヒットしたのでフランスでリメイクしようというお話。構造的には続編であり、やってることはリメイクであり、映画の中でもリメイクっていう多重メタ構成。そもそもの原作もメタが重なってるので、ミルフィーユの如き。  原作と同じく、前半は何ともいえない出来のゾンビ映画。途中、謎のカメラワークがあったり、セリフを何度も繰り返し

          「キャメラを止めるな!」これは落語です