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In Flames 『Sounds of a Playground Fading』 (2011)


Sounds Of A Playground Fading

”イエーテボリ・スタイル”の確立者で、今だに世界中のメロデスバンドに多大な影響を与え続ける北欧の雄In Flames。
前作から約3年ぶり通算10作目となる新作『Sounds Of A Playground Fading

バンドの創始者であり、In flamesをIn flamesたらしめる核となっていたJesper Strömbladがバンドを脱退し、代わりにEngelのギタリストNiclas Engelin(レコーディングには不参加?)を再び迎え入れ、レーベルをCentury Mediaに移してリリースした今作は、直後から賛否が入り乱れる状況となっていた。

個人的には、イェスパーのギターテクもさることながら、彼が書いていた日本人が大好きな泣き感たっぷりのXaDeathMetal(クサデスメタル)を他の人が書き続けられるのか、心配はその一点のみにあったが、、、

結論から言うと、「前作とは違うが、これもアリ!」だ笑

確かに泣きまくるギターオリエンテッドなクサメロディは減少したが、代わりに奥行きのある空間系の音像とAndersのより聴きやすくなったVoがこのバンドがまた違うレベルに上がったことを認識させてくれる。
もはや、、、メロデスにカテゴライズはできないポジションに行ってしまったのかもしれない。

Anders Fridén – vocals
Björn Gelotte – guitars
Peter Iwers – bass
Daniel Svensson – drums, percussion


▪️Sounds Of A Playground Fading
「空間系メロデス」の最新型ともいえるミドルテンポで奥行きのある音像が特徴。冒頭を飾るにはふさわしいかは分からないが、これはこれでアリ寄りのアリ。
Bjornのピロピロギターも前作より表に出てきて個人的にはこれでご飯5杯は余裕です。


▪️Deliver Us
やや遅めのミドルテンポで進行するこれまた空間系の曲。
「Fly into the distant〜♪」のコーラスが耳に残る。

▪️All For Me
曲構成自体はシンプルながらも、所々にはいるドラムのフィルや微妙なリズム変化、裏で鳴っている無機質なギターサウンド、しれっと転調する中間部のメロディ、奥深い。
In Flamesレベルを試される曲。

▪️The Puzzle
このままミドルテンポの曲でずっと行くのかと思わせといて突然始まる疾走系ナンバー。しかしなんだろう、、いい意味で疾走感よりはあまり感じず、メロディの良さが際立ってしまう。
後半はクリーンなギターが壮大なアウトロを紡ぎ出している。
こう言う展開も以前のIFにはなかったのでとても新鮮。

▪️ Fear Is The Weakness
この荒涼感ただよう美しいリフの雰囲気はIn Flamesにしか出せない!と強く思わせてくれる曲。
Jesperに変わってメインコンポーザーとなったBjornが大活躍ぶりがいよいよ表に出てくる。
バッキングのリズムもフックがたっぷりで、
ハイスピード上昇フレーズも上手くなったし、間違いなくBjornの才能が開花した瞬間を確認できる一曲です。

▪️ Where The Dead Ships Dwell
このアルバムから2枚目にシングルカットされた曲。
ミドルテンポながら聞き応えのあるメロディと、Andersのもはやクリーンボイスと言っていい声で頑張って歌う様がなんとも涙ぐましい。

▪️ The Attic
Bjornのギター爪引きにあわせてAndersが語りっぽく歌うしっとり系荒涼メタル、いや、もうこれ普通のしずかなバラードだな。
これまでのIFになかった展開だが、これがなんとも良い!個人的にはこういうの大好きです。

▪️ Darker Times
静寂を打ち破るリズミカルなドラムビートと激しめのミドルテンポのギターリフ、Andersもコーラスではちゃんと「歌って」いる。
あと、ギターソロがうねりまくりでかっこいい。
これがイェスパーなきあと、彼らが出した一つの結論なのかもしれない。

▪️ Ropes
耳に残るギターリフとVoのメロディが素晴らしく良い。
「If you just let me, I will find a way to ease your mind and for you to stay」
のコーラスは、やや低めのつぶやきボイスとクリーンに伸びやかに(?)歌う声が絡み合ってなんともいえない芳醇な味わいを醸し出します。
リズムもミドルテンポで雄々しく叩いていたかと思いきや、ブレイクダウンしたり、疾走したり、安定感抜群です。
このアルバム1、2を争う完成度の高い良質メロディックメタル

▪️ Enter Tragedy
イントロのドラム、2つ前のDarker Timesと一緒じゃん!と思ったアナタ。大丈夫です、みんな同じこと思って困惑してます。
もちろん同じなのは冒頭の数秒だけで、そのあとのメロディ展開は全然別モノ。
そのあとリズミカルなリフに急展開したあとは疾走します。昔のIFを思い出させるような展開。
「Enter Tragedy〜!!♪Slash my soul〜!!」はライブで盛り上がる箇所の一つ。

▪️Jester's Door
Andersの語り系のナンバーです。

▪️ A New Dawn
あれ?イェスパー?
イェスパー帰ってたの?おかえり!?
を思わせるメロディックなリフは実はBjornが弾いてたのでした。すごいじゃんビヨーン!
コーラスの厚みと多層的なシンフォニックサウンド、中間部の美メロ爪引きギター、モダンなリズムとバッキングギター。間違いなくイエスパーなしでも戦える新たな境地を見出したよ彼ら!
Andersの歌い方も、喉ガラガラ系の吐き捨てVoの箇所と、慟哭系の2種類を使い分けてきて何レベルアップしてるの嬉しいです

▪️Liberation
前曲で感涙にむせび泣いていたら最後にさらに泣かせようとしてくるこの人たち。もはやデスでもないし、もしかしたらメタルでもないかもしれない。
ただ、良い。
ただ、良いメロディの洪水と慟哭や祈りに似た叫びが円盤から流れてきて、この耳から離れないのよ。
聴き終わった後に出ていることを感じたのは、アドレナリンではない。
ノルアドレナリン(心を落ち着かせる方の成分)だった。

総合満足度    90点(遊び場でも頭を振りたいレベル)

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