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Dark Tranquility 『Fiction』(2007)

スウェーデンのベテランメロディックデスメタルバンド、Dark Tranquillityの8作目のアルバム『Fiction』。

FICTION



北欧発のメロデスバンドと言えばIn FlamesArchEnemyCOBに続いて名前が挙がるであろう業界を代表するバンドのはずなのに、前三者に比べ、イマイチ地味な印象があるダートラ。
哀愁メロディと幻想的な音作りに関してはこの道の第一人者なので、もう少し人気が出て欲しい。

世界一美しい慟哭系グロウルの持ち主と評されるBengt Mikael Stanneが喉を痛めデス声が出せなくなってしまったため、クリーンボイスを多用した耽美系の方向に行ってしまった時期もあったが、今作ではデス声完全復活で唸りまくっている。
なんかMikael Stanneの声って、確かにしゃがれたデスなんだけど、ヘヴィでパワフルなバンドサウンドに上手く溶けこむというか、聞いていて自然なんだよね。
前任のAnders Frieden (現In Flames)の声も好きだが、より深みがあるというか、デスボイスのお手本みたいな奥深さで、叙情的なメロディに上手くマッチしていると思う。

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Mikael Stanne − vocals
Niklas Sundin − lead guitar
Martin Henriksson − rhythm guitar
Martin Brändström − keyboards, electronics
Michael Nicklasson − bass
Anders Jivarp − drums
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Nothing To No One
重々しい金属的なベースが開幕を告げる疾走オープニングチューン。
ポロポロとこぼれ落ちるような物悲しいピアノを効果的に差し込み、悲哀感を高めている。
ギターユニゾンで最後を締めるカッコいい終わり方。


■The Lesser Faith
静かに激情を語り出すミドルテンポチューン。
賛否あった激しく突き進む中に突如、耽美で荘厳な雰囲気を混ぜ込む手法も上手く馴染んできており、新たな魅力になりつつある。
Martin Brändströmのピアノがとても良い仕事してる。

■Terminus (Where Death Is Most Alive)
小刻みなギターリフが印象的な疾走チューン。
Keyは後ろに下がり、哀愁ギターとバスドラがドコドコリードします。
こういう原点に戻った曲も大好き。

■Blind At Heart
今回のアルバム一、ブルータルでスピーディな曲。
久しぶりのブラストビートなんかも飛び出しちゃって、アグレッションは最高潮。
ギターのNiklasの哀メロも相変わらず曲に華を添えてくれる。


■Icipher
分厚いギターサウンドを切り刻みながら、雄々しく進むミドルテンポチューン。
ピアノも戻り、ストリングスライクなサウンドも後ろから支えることで、幻想的な攻撃性が再び表現されている。
スタンネの声も心なしかおどろおどろしくなってる。

■Inside The Particle Storm
やや地味ながらもしっとりと、どっしりと聴かせる遅めの曲。

■Empty Me
爆速ブラストビートにのせて唸る、がなる、吠えるスタンネ。
そこから一度ブレイクダウンして落としてから、ピアノの美しい調べとジャリジャリした音質のギターが絡み合う豪快幻想空間が生まれる。

■Misery's Crown
哀愁ギターギュンギュンの初期ダートラを追想させるような曲。
ツインギターのエモいソロにも思わず落涙を禁じ得ない。

■Focus Shift
ズダダダ系疾走メロデス。
ギターワークと煽るようなスネアぶっ叩きのドラムが緊張感高めてくれます。
そしてギターソロがかっちょええーー!
こういう短くてきっちり主張するフレーズ大好きなんですけどー
はい、弾きますよ!どうですか?良かった?OKじゃあまたね。
みたいな職人感がクールすぎる。

■The Mundane And The Magic
ダートラの盛り合わせフルコース。
流麗号泣系のギターソロ、スタンネの変幻自在のグロウルとクリーンVo、テンポチェンジ、圧のある幻想空間、そして突如差し込まれる女性Voのコーラス。
贅沢な逸品です。


総合満足度 88点(フィクションな幻想空間に浸れるレベル)

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