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旅の記録:通信空手百段

久しぶりの大阪。京都には1月に行ったけれど大阪でのライブはVERANPARADEのアルバムのリリースツアー振りだったので約1年ぶりのライブ。

☆朝、まるが僕の家まで車できてそこから2人で歩いて駅に向かい電車で向かおうと打ち合わせをしていたが約束の時間にまるが来ない。朝早く起きて準備をしていたらしいが永遠に荷造りが終わらないので先言っててくださいと言い始める。永遠に荷造り終わらないのわかる。置いて行くと本当に飛行機にも乗ってこない気がして恐ろしかったので家で待つ。宮崎は1時間に1本ペースでしか電車が走っていないため電車は諦めてまるの車で空港に向かう。無事、飛行機にも乗れた。まるとの付き合いは長い。そしてこれからもっと長くなるだろうと思う。付き合いが長いからなのかまるがそういう人だからなのかは判断がつかないけれどまるが楽しいとき、嬉しいとき、疲れてるときものすごく分かりやすい。色付きで見えるような感覚がある。それがムカッとくる時もあるしたまらん愛おしい時もある。もしかすると僕のこともまるには色付きで見えているのかもしれん。折り紙交換。でも、見えている気がしていることで見えるなくなることも多いかもしれんなと思う。間違えたり決めつけたりしないで一緒にいれたらいいな。

☆大阪に着いて2人であべのハルカス周辺をうろうろする。時間もあったし寒かったしお腹も空いたので2人でなにか食べようと歩いていたら1杯180円のボロボロのうどん屋を見つける。せっかくの大阪2人旅だしなにか大阪っぽくて美味しいものでもと思ってたけど「カツ丼セット600円!」などとやたらテンションがあがり吟味する間もなくうどん屋に入る。まるはわかめうどんとおにぎり、僕はカツ丼とミニうどんを食べた。

カツ丼完成間近


☆店を出て、ピックを買いたかったのでマップを開いて楽器屋に向かうがたどり着いたのは英会話教室と併設された音楽教室だったりして無駄にあべの付近をうろうろと往復した後に島村楽器で無事ピックを購入。ワンマンの会場、ノーユーノーミーのある昭和町に向かう。宮崎と比べると大阪は寒かった。

慣れない電車で既にお疲れのまる

☆16時40分、ノーユーノーミーに到着。4年ぶりのホシヲさんと再会。ホシヲさん変わらず元気そうでよかった。この日は僕のワンマンでオープニングアクトだったので2人順番に歌い、リハを済ませて開場準備。本棚2台にぎっしり漫画が入っていてほとんどが範馬刃牙シリーズで敷き詰められていて嬉しかった。電車の中で立ってる時は愚地独歩のサンチンを意識して立つようにしている。気持ちよろけなくなるから。すぐに本番の時間がくる。まるのライブがとんでもなくよかった。昨日作ったと言っていた新曲がとてもよかった。僕の出番。ギターの電池の不調ではじめの何曲かギターの音がエレキギターみたいに歪んでしまったりトラブルもあったけどゆっくりたくさん歌えてよかった。ノーユーノーミーは観てくれる人との距離が近くてとても顔がよく見える。馬鹿みたいなことでも大真面目に歌って、真剣に誰かに見てもらえること、本当にすごいことだなとあっという間の1時間半の後しみじみと思った。いつもライブの度に新鮮にそう思う。僕は持ち帰る。僕の歌や声をもしかしたら来てくれた人が持ち帰ってくれてるかもしれないように、歌いながら見えた人たちの表情を僕は持ち帰って毎日が良くなる。ずっと持っていたい。久しぶりの人もいたり、竹千代も会いに来てくれたし嬉しかったな。ホシヲさんが言っててすごく納得したけど竹千代は品性の人やと思う。

ホシヲさんと竹千代

☆終演後、ノーユーノーミーでしっぽりやっていたらホテルのチェックイン時間を逃し、急遽通天閣の近くにある「スパワールド」という超巨大温泉施設に泊まることにした。最上階にはプールもあるらしい。寝れるだけでありがたいんやけど疲労感たっぷりの我々にはちょっと巨大すぎた。どこに行くにもめっちゃ歩く。お風呂もめっちゃ広い。広すぎてどこのお風呂に入ればいいのかわからんかった。軽い気持ちでさくっと行くような場所じゃないんやろうな。いつかプール含めてゆっくり行きたい。

☆2日目、通天閣の麓にある新世界のこされ島でライブ。出演は僕、まる、THEズのやましょーさん、モケーレムベンベの井澤くん、くっつくパピーのもーりー。イベントの名前は「通信空手百段」というタイトルにした。通信空手って令和の現在やとぴんと来ない人も多いみたい。やすよしに通信空手って言ったら「ほんとにある言葉やっちゃ」と言っていた。強くなりたいが町の道場に通う度胸はない。なんとかひとりでこっそり強くなりたい奴が通信空手に申し込み、送られてきた教科書を見ながら家の姿見で空手の練習をする。空手版ベネッセといったところやろうか、そんなんで強くなる訳ない。我々のような人間はおそらくそんな気持ちでギターを買ったんじゃないか。鏡の前でギターを構えて、弾けもしないのに一丁前に何回も何回もストラップの長さを調整して1番かっこいいギターのポジションを探ったり歌詞なんて書いたことないのにノートの表紙にでっかく「歌詞ノート」ってマジックで書いてみたり。少なくとも僕はそういうところからそのまま地続きの世界で歌っているという自負がある。この日出演してくれた人たちはきっと似たような感じなんじゃないかなと思ってこの名前にした。正式な空手に百段なんて存在しない。でも通信空手なら百段だってあってもいい。強くはないかもしれないけど。

井澤くんがライブ中気持ちの良い落語のような語り口調で通信空手百段という言葉について話してくれた。直接こんな意味で〜なんて話してなかったのに僕が考えていたことをそれはもう完璧以上に言語化してくれてそれが本当に嬉しかった。やましょーはギターも弾かずに通天閣に向かって敬礼をした後、正拳突きをしていた。意味はまったく分からなかったけど息ができなくなるくらい笑った。空手に敬礼はないだろ。どうやらやましょーさんの空手にはあったみたい。もーりーの弾き語りはじめて観れたけどすごくよかった。バンドでは奥に隠れてる繊細な寂しそうな子犬のような温もりがダイレクトに伝わってきて嬉しかった。まるはやましょーさんの正拳突きのせいでやりにくそうだった。「僕は今日のライブで二段くらいにはなりたいです」なんて言ってたけど百段なんよな。まるの歌はいつも優しい。底抜けな愛ではない、悩んで行ったり来たりする中でようやく見つけた優しさの型を教えてくれる。僕も優しくなりたいなといつも思う。ワンマンライブも最近少しずつ出来るようになってきて沢山歌えるしすごく楽しくてやりがいあるけど、こういう1日の中で色んな人が歌を聴かせあったり観てもらえる日も最高なんだよな。

☆ライブが終わり打ち上げ、とにかく馬鹿みたいだった。井澤くんがずっと本当みたいな嘘の歴史の豆知識を大真面目な顔でいくつも話して聞かせてくれた。全部嘘なのにめちゃくちゃ為になったような気持ちになった。全部嘘なのに。西成あたりをふらふら歩いてみんなと別れて僕とまるはホテルに帰った。やましょーさんも何故か一緒にホテルに来て一緒に寝た。まるが速攻で寝て、気がついたらやましょーさんも寝て、僕は幸せな気分でなかなか寝付けなかった。外で一人で怒鳴っているおじさんの声が聞こえた。

☆10時15分、起きてすぐにチェックアウト。飛行機の時間まで少しあったので3人で梅田に行って鶏白湯ラーメンを食べた。「こだわりの一品」という感じの味だった。たまごかけごはんの味が少しした。

鶏白湯ラーメン

食べ終わってすぐに店を出てすぐ近くにあったカフェに入る。2人はドリンクバーだけ注文し、何故か胃袋に謎のエンジンがかかった僕はビーフステーキを食べた。

ビーフステーキ

☆食べすぎた。

☆改札の前まで当たり前のようにやましょーさんについて来てもらいやましょーさんと別れる。思えば僕はいつも当たり前のようにやましょーさんに改札まで着いてきてもらってるなと気付いた。別れ際、改めてお礼を言いたくなったけどひとまず伝えるのはやめて写真だけ撮って別れた。やましょーさんが友達で本当によかった。それに、やましょーさんも僕が友達でよかったよなと思う。次は宮崎に遊びに来て欲しい。

やましょーさんと僕

なんやかんやギリギリの時間に空港にイン。飛行機の席に座ったらすぐ眠たくなって離陸したことにも気が付かず着陸の際の衝撃で目が覚めた。

新しい曲を作るのは、自分が知らないような歌を聴いてみたいからでそれを誰かに聴いてほしいからだけど、最近は誰かの、できれば友達の新しい歌が聴きたいからだと思うようになった。というかそう思っていることに気がついた。なんの根拠もないけど、僕が新しい曲を作り続ける限りは僕が会うことができる人たちも新しい曲を聴かせてくれるような気がする。気がするだけだけど実際、今のところは間違っている感じはしない。作っていくことを大変だと言うつもりもないし、楽ちんと言うつもりもない。時間が有り余っているからやってますって言えるほど退屈は側にはなかなか居てくれない。なにかに追われることも最近は多くなってきたように思う。それでも、ちゃんと立ち止まったりふざけたり笑ったり落ち込んだり復活するための時間や余白は意地でも自分自身で生成していきたいと思う。暇つぶしの人生なんてもう言えない。逆だったんだと思う。まじめに暇作りしてちゃんと友達でいたいな。

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