初版発行：2012年12月10日
著者：菊地成孔
出版社：河出書房新社＊文庫
ジャンル：エッセイ

　「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽についての考察と老眼の方には見えないほど小さな文字で表紙に書かれている通りの本。
　ご本人がおっしゃるように本業音楽家の彼がファッショ雑誌に連載の依頼を受け、言い訳のような、上手に折り合ったとでもいう着地点から語られている切り口は今まで深く考えたことも無かった為、新鮮で面白かった。

　相変わらずの菊地成孔文体は読む人を択ぶ可能性はあるが、このテーマに関して言うならば寧ろ新しい読者層を増やす可能性はある。
　知らない漢字を辞書で調べることに似て、つい未知の音楽を確認したくて傍らにスマートフォンを置いての読書となる。

　映画「マックイーン　モードの反逆児」を観た時に、彼の場合これはファッションショーという名の映画、或いは、表現芸術作品に見えた。
　殆どの映画作品に音楽が付くように、ファッションショーと音楽の関係をそれ以上に考えることがなかったことは確か。

　この本に「アレキサンダー・マックイーンに捧げる」の文字を見た時は、期待もしていなかった贈り物をいただいたようで本当にこの本を書店から連れてきてよかったと実感した。
　アレキサンダー・マックイーン氏の圧倒的な天才風景をこの本でも再現することになる。