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「ナポレオン」

原題:Napoleon
監督:リドリー・スコット
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:2023年 158min
キャスト:ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー、タハール・ラヒム、ルパート・エヴェレット

 「1789年。自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――。フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく。彼を駆り立てたものは、一体何だったのか?」H.Pより引用

戴冠式

 ナポレオンという名は知識量を問わなければ洋の東西で知れ渡っている。
 けれども、自身が生まれた国或いは現在自身の生活圏が対象者と同じでない場合は限りなく知らないに近い人物となる。例えば、フランスの方にとっての徳川家康であるように。
 私も彼については世界史で触れた程度の知識しか持ち合わせていない。
 ナポレオンを鑑賞した週は北野監督「首」も観ていた。どちらも歴史上の人物。そして、両作品ともその人物のどの面を描くのかが鍵だった。
 元々、リドリー・スコット監督作品に興味があり最近ではゲティ家の身代金ハウス・オブ・グッチと観ている。
 80半ばの監督がナポレオンをどう描きたかったのかが私の興味だったこともあってこれまでのナポレオン像から離れていても全く問題なかった。寧ろ、監督としては定説ではないナポレオン像を描きたかったからの筈だ。

帰還

 ナポレオンがその生涯を閉じたセントヘレナ島のことは知っていたが、その前に流刑されたエルバ島脱出劇は詳細を知らなかったお陰であまりに出来過ぎたドラマのようで面白く観る。
 試験用暗記の1行世界である諸々が、例えばロシア遠征、ワーテルロー戦などが作品の中で展開するのは飽きなかった。エジプト戦から描かれる彼の戦歴は彼の人生の一部を表すものであれば代表となる戦いだけの描写よりも一連が描かれる方が私は好きだ。

CG頼りにしない絵

 予告にも使われていた戦いのシーンは見応えがあった。色彩はもとより音楽の使い方はクラシック音楽がそもそも彼の引き出しにある分とても豊か。

 イタリア共和国大統領からフランス皇帝までを成したナポレオン。
 ナポレオン法典という周辺国に多大な影響を与えた偉大な部分にはこの作品は触れられていない。
 「(ナポレオンは)突然に頭角を現してすべてを支配しようと戦いましたが、その一方で、恋多き妻ジョゼフィーヌと愛の闘争をずっと続けていました。彼は妻の愛を得るために世界を征服しようとしましたが、妻の心をとらえることはできませんでした。それで、今度は彼女を打ちのめすために世界を征服し、その過程で自分自身を破壊してしまったのです」(*デッドラインより引用)の発言にも見られるように単にナポレオンの表立った戦いだけに監督の目は向いていない。
 
 ナポレオンの最後の言葉を調べてみると数パターン記録され一つに集約されていない。誰が記録した言葉が正確なのかも判別も難しい。
 ナポレオン最後の言葉の一つに「「フランス・・陸軍・・ジョゼフィーヌ」が伝説のようにある。しかし、彼の最後の言葉を記した幾つかの記録の中に実はジョセフィーヌの名は殆ど無い。
 只、1847年に出版されたモントロンが本の中で次のように述べている。
 「5月5日。(中略)ある時、私はつながりのない次のような言葉を識別した。フランス、軍、軍の先頭、ジョゼフィーヌ France, armée, tête d'armée, Joséphine」
"Récits de la captivité de l'empereur Napoléon à Sainte-Hélène, Tome Second" p548
 もし、監督もこの記述をご覧になっていたのであれば本作品でのジョセフィーヌの描かれ方もアリかしらと想像が膨らんだ。

 パートナーと映画を観終わって、二人して家に帰ったなら復習したいことが沢山ね、と同じことを考えていた。
 私は時系列の復習と、ナポレオン2世について興味深々で帰路についた。

★★★☆


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