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「ラビング」

原題:LOVING
監督:ジェフ・ニコルズ
製作国:イギリス、アメリカ
制作年・上映時間:2016年 122min
キャスト:ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ

 日本で浮かぶ昔の国際結婚が気になり小泉八雲氏について確認した。この映画では国際結婚ではなく同じ国民同士ではあるが紹介写真で解るよう異人種間結婚として当時は許されない結婚だった。日本では国際結婚ではなく見方を変えて在日の方との結婚でもこれほど厳しい状況だっただろうか。
 「自由の国」「移民受け入れの国」のイメージがあるアメリカだ。(勿論現在は政治情勢が変わり色が変わり始めている。)先の小泉八雲氏は1891年明治24年に結婚し、この映画では1958年に事が起こる。1964年公民権法が成立してもこの夫妻は1958年から凡そ10年間「anti-miscegenation laws 」この法と闘う。

 赤ちゃんを宿した事を素直に喜び、幼い頃からの仲だった二人は自然に結婚を択ぶ。だが、上記の異人種間結婚を禁じる法律が障害となる。当時16州でこの法は存在していた。彼らは婚姻が許されているワシントンDCまで赴き結婚するが生活しているバージニア州へ戻ると間もなく逮捕される。深夜2時、どうして?と云いたくなる時間に彼らは自由を奪われる。
 裁判所は刑務所に入るか25年間バージニア州を離れるかの選択を出し、身籠って刑務所に入ることなど考えられないとなると故郷を離れるしかない。

 この写真は象徴的だ。一方的に抱きしめているのではなくて、互いがpartnerを抱き、また、抱きしめられている。映画はこのtoneで描かれていく。初々しかった彼女は少しずつ聡明さを纏った女性へと変わっていくが、それをもって二人の関係に上下を作りはせず、関係性を壊さないよう最大限の気遣いをしながら二人の結婚自由を取り戻す戦いに入っていく。

 上記は実際のお二人。戦いと書いたが声高に叫ぶ自由獲得ではなく映画は本当に静かに進んでいく。
 お二人は難しいことではなく「愛する人と一緒にいる」(*戦っていた法では同居も禁じられていた)その自然なことを叶えるために一市民として動かれた。レンガ職人として寡黙に地道に働き「家族を守る」リチャード・ラビング氏の姿が印象的だ。二人は夫々の形で相手を否定せずに家族を守っていたのだ。普通に暮らすことがこれほどにも困難だったことが遠い昔ではなく50年ほど前だったことに驚く。

 夫妻を演じたジョエル・エドガートン、ルース・ネッガは好演だった。姿形を似せるのではなく、演じる相手の生き方をなぞり再現していく。結果としてこれ程にも両者は近づく。
★★★☆


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