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「COLD WAR あの歌、2つの心」

原題:Zimna wojna 
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
製作国:ポーランド・イギリス・フランス
製作年・上映時間:2018年 88min
キャスト:ヨアンナ・クーリク、トマシュ・コット、アガタ・クレシャ、ボリス・シィツ、ジャンヌ・バリバール、セドリック・カーン

 直接には冷戦には触れてはいないが、冷戦によって翻弄された二人の恋愛が描かれる。単なる恋愛作品と表現すると語弊が生じる。映画の枠を借りて音楽で物語っている、ある時代のふたりの話。
 ヴィクトルは、仲間らと各地の民族歌謡を収集していた。地方を回っている時に応募者の一人親友と現れたズーラと出会う。

 全編モノクロ作品。色が無かったと云いたくなるような自由の羽を毟り取られた1949年、第二次世界大戦後の共産主義政権下のポーランド。
 民謡を集めていた彼らの手で民族音楽舞踊団が結成されることになる。ズーラも団員となり頭角を現していく。
 同時に本来自由な筈の歌が次第に政治に絡め取られ、典型的なプロパガンダと変容していく。

 此処では民謡「ふたつの心」は通奏低音のようにこの作品で根底に流れ続ける。同時に変奏曲のように時には東の色で奏でられ、後半は西の色にアレンジもされていく。

 時代が変わり民謡「ふたつの心」がジャズアレンジされようと、実は通奏低音の例を挙げたように民謡に託されている芯の部分は変わりようがない。

 西側に亡命したヴィクトルとパリ公演出演のズーラは再会。
 あの「ふたりの心」がジャズアレンジされあろうことか詩の部分が全く別物に変えられレコード化される展開になる。
 互いにパートナーが存在している状態でも再会に喜べたが、この訳詞はズーラには許容を超え堪えられない。

 ポーランド、ベルリン、ユーゴスラビア、パリを舞台に、政治を背景に別れと再会を繰り返して辿り着く風景。

 今回のレヴューには文字と写真の限界がある。
 ズーラが歌う「ふたつの心」が伝えられない。決してミュージカル作品ではないが、歌を通して人の心が伝えられている。
★★★★

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