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「ムーンライト」

原題: Moonlight
監督:バリー・ジェンキンス
製作国:アメリカ
制作年・上映時間:2016年 111min
キャスト:ナオミ・ハリス、マハーシャラ・アリ

 賞レースでノミネートされなかった場合どの程度観客の広がりがあるのかと観終わって考えてしまう。特に今回は受賞の際にハプニングがあり人々に記憶を残すことになる。
 現在アメリカに限らず世界で抱えている問題を全部詰め込みました、一文で表現するとこうなる。けれども、それはもう「LGBTQ」の略語が何の頭文字か浸透し始め「告発的」映画にはならない。勿論、社会がそれを許容するかどうかは別次元だ。ドラッグ、ネグレクト、差別の中にある更なる差別の断ち切ることが難しい連鎖、問題の出口は未だ見えない。

 前半で登場するフアンは彼に影響を与えた人物として青年になったシャロンが「体現」はしているのだが、フアンが彼に語る言葉が伏線かと待っていても後半活かされていない。フアン演じたマハーシャラ・アリや特に母親役のナオミ・ハリスの演技が印象に残る。主人公を三人に演じさせる一方で彼女は一人で美しい母親からドラッグに溺れ崩れて歳を重ねるところまで演じ切る。

 一番不自然だったことは台詞が無ければ青年と大人のシャロンが結びつかない程変化している点。確かに躰は鍛えることは可能だが高校生のシャロンは女の子より細い程だった為無理がある。目の力似た三人を主人公にしたそうだがせめて青年から大人へは同じ人物で描いて欲しかった。

 邦画がオールキャスト「日本人」で不思議はない。振り返ってキャステイング全て黒人の方々の映画となると日本では中々上映の機会がない。この映画の中の白人は高校の教室で背景として映るだけ。演じた俳優は全て黒人の方々だった。ある種の実際の社会を描くには近い選択だ。もう少し焦点を絞った映画にして欲しかった。
★★☆

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