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営業しない営業マン

かれこれ13年になるN社の販社との関係は終わった。
記憶にあるかぎり少なくともここ4回、車の点検・修理のたびに受付やメカニックに「買い替えを検討している」と言い続けてきたのだが、一向に担当の営業マンが喰いついてこないので、ずっとどうしたんだ?と思っていた。前にきつく叱責したことがあったので、担当営業マンが私に対して苦手意識を持っていることは察していたが、それにしても13年もお付き合いのある担当者だ。それなりに義理は感じているからこそチャンスをあげようと「買い替えを検討している」というキーワードを投げ続けてきたのだ。
朝、定期点検に出すとき、タイヤの交換を強く勧められたので、「近々買い替えるつもりなので、交換してでも乗るかどうか考えたいので、交換はペンディングで」と言って車を預けてきた。車の受け渡しを担当した営業課長に「次の車は決まっているのですか」と聞かれたので「だいたい目星はつけているが、まだ決定したわけではありません。時期も次の車検に出すかどうかも含めて検討中です」と言ったら、「決算時期なのでかなりのお勉強ができます。車検も含めて見積もりを出すのでお時間をください」とのことだった。そのつもりで車を引き取りに行ったら、13年間担当してくれた営業さんが出てきた。手にはペラペラの紙を持っているだけだったので、おや?とは思った。話を聞いてみようと構えたが、車検の見積もりだけ出してきた。
びっくりして、今朝の営業課長との話の内容を告げても担当営業マンは「ああ、そうなんですか」という反応のみで、ますますびっくり。
思わずこの販社、この人はどういう商売しているんだろうかと疑問がわいてきて、聞いてしまった。
「私、いままで何度も”買い替えを検討している”ってキーワードを投げてきたんだけど、あなたの耳には入っていなかった?」
「はい、きいていません」
「この会社にはメカニックからそういう顧客情報が営業に伝わるシステムはないの?」
「はあ・・・」
「あなたは出て来てちょこっと挨拶するだけでお話する機会がないから、メカニックさんに伝えておいたんだけど。顧客と直接、接するメカニックから顧客の希望や要望を吸い上げるシステムが機能していないで、どうやってあなた方は営業するの?もし、そうなら、この会社のシステムに問題があるから、そこはきちんと改善を提案した方がいいですよ」
「はあ・・・」
「以前にクレームを言ったことはあるのはおぼえているよね?」
「はい、覚えております」
「それでもその後も、メンテナンスパックを継続して、点検をお願いし続けていたのは、私、N社が好きだからだよ。N社のマニュアルのお仕事をいただいてN社の各部署を取材して回って、N社の企業理念や夢や情熱や開発コンセプトや人や・・・そういうのに触れて、N社の車に乗りたいって思ったんだよ」
「はあ・・・」
「今朝、営業課長さんとお話して最後にもう一回、チャンスをあげようと思ったんだよ」
「はあ・・・」
ここまで言っても、営業マンは「はあ」しか言わなかった。
私はこの手の話をするときはギャーギャー言ったり、怒鳴ったりは決してしない。他の人に聴こえないように声は潜めて、静かな口調で、ゆっくり目を見て、懇々と諭すように話す。
でも、ヤツは「はあ」しか言わないのだ。
呆れたを通り越して悲しかった。これですべて終わった。
「10年も過ぎた車で、先日、ブレーキに不具合が出たとなったら、普通は営業かけるよね。それでもなにもなかったってことは、嫌なクレーマーだと思って私のことが嫌だったのかな?」
「・・・」
「私に売る車はないってことなのかな?」
「・・・」
「これで終わりだね。いままでお世話になりました」


おいおい、どんなに嫌でも「いえいえ、そんなことはございません」くらい言えよ!と思いながら、撤収。
不当なクレームをつけたつもりはない。
クレームの内容は以下に添付した内容だった。
それでも嫌だと思ったら、仕事をサボタージュするのがいまどきの営業マンなのかと唖然とした。

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愛車の水色マーチくんを6か月点検に出した。そこで、レディース特典・来店特典で、室内清掃とフロントガラスの曇り止めをお願いし、夕方出来上がった車を取りに行って駐車場に戻しただけ。翌日、出かけて戻ったときにギアボックス後部にぼっこり穴があいていることに気づいて、整備をお願いしたN社の純正ディーラーに確認の電話を入れたわけです。写真も添えて。
そこで返ってきたのは、
「検査でその部分うちでは触っていません。もともとその部分がどういう状態なのかわかりませんので確認します」
という返事。車に詳しくないからどう説明したらいいかわからないから写真を添えたのだ。その当該箇所の純正状態がわからないとはどういうことだ!N社を代表する主力のロングセラー車種だぞ!!!その車の目につくところがどういう仕様になっているか、営業マンもメカもわからないって???
・・・怒ったというか、呆れた。クールダウンして夜になって、10年来のお付き合いの営業マンさんに以下のメールを送った。先刻「なんの申し開きも出来ません」というビビりまくったメールが届いた。
またもやクレーマーとなってしまった"(-""-)"

〇〇様
いま、貴店にご連絡を入れましたが、ありました!
助手席下奥を覗き込んだら床に落ちていました。
見慣れぬものが落ちていたのではめてみたら、
この部分のカバーでした。
ご手配をお願いした件については取り下げます。
お騒がせして申し訳ありませんでした。
ご承知のように車をあまり使いませんし、車内では飲食しませんので、実のところ私、車の中を掃除したことは購入した直後の一、二度しかありません。点検の際に掃除していただくだけで十分でした。それでいつからああいう状態になっていたか十分な認識がありません。もしかしたら昨日今日からではなく、かなり前からなっていたのかもしれませんが、先刻帰宅した主人に確認したところ「こんな穴が開いていればわかる。おかしいな」と申しておりました。
いつからそのカバーが取れていたかは定かでないのですが、
いずれにせよ元通りの状態になりましたので、ご報告まで。

ただ、ろくに車を見てもいないヤツは車の運転なんてするな、恐ろしい!とお叱りを受けることは承知で、自分のことは棚に上げてあえて申し上げます。
これまでそのような状態になっていたことをどなたも指摘していただかなかったという点は、少々残念に感じました。
点検項目でなないにせよ、清掃等で車をのぞいたときに、助手席下になにか物が落ちていれば、「こんなところに何か落ちているけど、拾っておくか?」とか「あれ、この車、なんか違うぞ?どうしたんだろう?」とか思われなかったのかなあ、「ここのカバー、なくなっていますがどうしたんですか?」と気づいてはいただけないものかなあとは感じました。
そして、もっと悲しかったのは、〇〇さんも、メカの方も
「マーチのこの部分がどういう形状になっているかわからない」と仰っていたことです。
他社の車の整備をお願いしたのならともかく、貴社のロングセラー車種です。その車の、とても目につくところの形状が、どういう状態のなっているのが純正な状態なのか認識がないという点には、正直言って「えっ?自分の会社の車に対する認識ってそういうものなの?」と思いました。
当方は、車が本来「あるべき姿」ではない状態であることに気づいて、これで大丈夫ですか、とお問合せをしたわけです。それに対して「整備ではそこは触っていないからうちの責任ではない」というお答えをいただきましたが、ここで回答としてあるべきだったのは、
「こういうカバーがついているはずだが、お預かりした状態でついていない状態だった」
といったお答えではなかったでしょうか。
お願いした仕事はきっちりしてくださっていると思いますので文句を言う筋合いはないのですが、私が貴社の車を選んだのは、往時の熱い愛車精神を身をもって体験していたからです。
以前、貴社のマニュアルの制作に携わったことがあります。当時、銀座にあった本社や追浜工場などにも何度か赴き、工場、海外担当、デザイン部門、営業、文化部門・・・さまざまな方々の取材をする中で、社員みなさんの「N社が大好き!」という熱い思いを実感したからです。買うなら、そんな社風のなかで生み出された車を、と思ったのです。
ちなみそのマニュアルでは、顧客にとって、社員誰もの言動が「N社」そのものなのだ、と熱く訴求する内容でした。
今回、「私はN社の車が大好きなんです、だからベストな状態を提供したい」といったキラキラした姿勢ではなく、「うちには何もミスはありません」という、責任回避の姿を見たような気がしてしまいました。
そこがなんだか残念だった、とだけ申し上げておきます。
お世話になりました。

#営業 #営業マン #クレーマー