We Are The Champions を聴きながら

オリックス・バファローズの優勝の瞬間を、初めて見た。
厳密には、「自ら手繰り寄せた優勝の瞬間」、という表現になるのか。

昨年、一昨年と、マジックがつかないまま、2位の千葉ロッテ(2021年)、ソフトバンク(2022年)の敗戦をもって優勝が決まった、オリックス。
2021年は全日程終了後、2022年は最終戦の9分の1の確率(オリックスが勝ちソフトバンクが負けた場合のみ)という、いわば綱渡りの状況からかろうじて優勝を勝ち取った。

そんな過去2年間とは対照的に、2023年はシーズン途中から首位をキープし、初めてマジックを点灯させた。
そのマジックを順調に減らし、オリックスファンで埋まる本拠地・京セラドーム大阪で、2位との直接対決を制し、優勝を決めた。

3年目の集大成。

2年連続最下位から、確実にステップを踏み、盤石のオリックスは、ただひたすら強く、たくましかった。

私は、8回のドミンゴ・サンタナのホームランを見ていない。
2019年、2020年と2年連続最下位からの下剋上と言われてから、2年連続優勝、CS突破と同じ道を歩み、日本シリーズで死力を尽くして戦い抜いたオリックスを、ヤクルトファンは「ズッ友」と慕っていた。
友のせっかくの優勝の瞬間だ。しっかり見届けたい。
そう思った私は、CS放送のチャンネルをフジテレビoneからJ sports 3に変えた。

山﨑颯一郎の足は、いつにも増して長く見えた。

歓喜の輪は、グラウンドだけではなかった。スタンド一周の、優勝を待ち侘びたオリックスファンも加わった円の中心で、指揮官・中嶋聡の胴上げが始まった。
中嶋監督は胴上げ嫌いだったはずだ。
しかし、3年目で慣れたのだろう。自ら選手の輪に歩み寄り、何か一言発した後、すんなりと胴上げされる体制に入った。
選手会長のラオウこと杉本裕太郎の胴上げは、やはり重そうだ。

この様子を見ている私をもし鏡に写したなら、きっと微笑んでいただろう。
しかし、優勝セレモニーのために選手たちが一列に並ぶ中、場内に流れるQueenの『We Are The Champions』が耳に入った瞬間、急に現実に引き戻された。

ヤクルトは、優勝できなかったんだ……。

中嶋監督が優勝トロフィーを受け取る。ラオウがチャンピオンフラッグを受け取る。
去年神宮で見たこの光景を、今年はもう見ることができない。

そうだ。優勝って、こうだった。
優勝できないって、こういうことなんだ……。

今日のヤクルトの、サヨナラの瞬間は見た。
ツイッター(現X)のタイムラインがざわついていて、急いでフジテレビoneに戻った場面がちょうど、サヨナラタイムリーを打つホセ・オスナの打席だった。
最下位争いだろうが、選手は目の前の試合を真剣に戦っている。
そんなヤクルトをよそに、リモコンのボタンひとつで記念すべき3連覇の瞬間を見にいくような私の不誠実さは、確実に選手の足を引っ張っているとしか思えなかった。

しかし、ほんの1年前、ここ神宮にも『We Are The Champions』が流れ、誇らしく顔を上げたヤクルトの選手たちがチャンピオンフラッグを手に場内を一周していたのだ。

ヤクルトに何が起こったのだろう。ポストシーズンのスケジュールがぽっかり空いた今シーズンなら、いくらでも野球の考察をできるだろう。
でももうこれからは、他者に贈られる『We Are The Champions』を傍から聞くことしかできなくなってしまった。

高津監督。不義理なファンで申し訳ありませんでした。
去年の日本シリーズで日本一を逃したときの涙は、悔し涙だと言っていましたね。
私は今日、オリックスの優勝を見て、悔しいとはまったく思いませんでした。
オリックスの強さは、まるで別世界を見ているようでしたから。
悔しいなんてとんでもない。
遠くなってしまった友だちの背中を見つめながら沸き上がった感情は、
「うらやましい」。
それだけでした。
勝負の世界に身を置いたことのない私とあなたの認識には、これほどの差があるんです。
お力になれず、すみません。でも、

『We Are The Champions』が流れる野球場が、私はうらやましかったよ。監督。

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