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追われる背中・山田哲人

武岡龍世(たけおかりゅうせい)は、2019年ドラフト6位で東京ヤクルトスワローズに入団した4年目、22歳の内野手だ。背番号60。
中学1年生で世界大会準優勝を経験し、坂本勇人(讀賣)に憧れて、徳島県から青森・八戸学院光星高校に進学。*1
甲子園出場を果たし、高校JAPANのユニフォームも着た、エリートだ。*2
プロ野球選手になってからも、1年目からファームの試合にスタメン出場していた。武岡はセカンド。

そしてショートは、長岡秀樹だった。

武岡と同い年、同期入団の長岡は、2019年ドラフト5位入団。千葉・八千代松陰高校では3年夏千葉県大会決勝で習志野高校に8対1で敗れ、甲子園経験はない。
武岡と違い、日本代表チームにも召集されたことのない長岡が、3年目の昨季、一軍ショートに定着しスワローズ2連覇に大きく貢献した。
入団後、同じ道を歩んできた2人の舞台は、神宮と戸田に分かれてしまった。

この“同級生二遊間”の実現に立ちはだかる壁が、セカンド・山田哲人だ。

今、山田哲人はコンディション不良から一軍登録されたのちも、休養日を挟みながら出場している。
まだ、万全なコンディションとは言えないのだろう。
しかし、山田哲人は復帰直後の試合からヒットを放ち、頼れるキャプテンの帰還をファンにしっかり植え付けた。*3
チームは連敗に苦しんでいた。勝てない日々からの開放が待ち遠しい。
しかし、そんな状況でも長いシーズンを見据えたら、完治するまで待てない。
山田哲人抜きで戦い続けることは、やはりできないのだ。

それは、戦力としてということだけではない。
山田哲人がキャプテンとしてチームをまとめ役を担って、3年目のシーズンに入った。
しっかり選手と対話しながらキャプテンシーを育んできた山田哲人は、自身の立場をよく理解している。
キャプテンは、野球でも牽引しなければならない。
だからこそ、昨季思うような成績を残せなかった後悔を抱え、優勝の瞬間にひとり泣いていたのだ。

そんなキャプテンも、ベンチから野球を見る時間が増えている。
スタメン出場であっても、後半下がることも多い。
下がった後には、武岡龍世が入る。
武岡にとってみれば、この少ないチャンスにしっかりアピールしたい。
実際、マルチ安打に好守備と、目立つプレーも増えてきた。

うかうかしていられない、山田哲人。
だが、勝利のハイタッチでベンチメンバーの先頭で出迎えるキャプテン・山田哲人を見ると、思うのだ。

武岡龍世が追うその背中は、大きくて遠いということを。

武岡龍世を迎える山田哲人

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*2


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