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近藤一樹が羽ばたく方へ

前年の優勝が嘘のように、最下位に低迷していたヤクルトの2016年7月。支配下登録期限のトレードで、近藤一樹はヤクルトにやってきた。私は、前オフにやってきた坂口智隆と同様、近藤という選手を知らなかった。
坂口の時のように、急いで近藤のことを調べる。坂口のひとつ上。でも、坂口よりかなり若く見える。若いというより、幼い顔だ。

▲ 2020.2.9 sun. 春季キャンプ in 浦添

2001年ドラフト入団。あの、北川博敏の優勝決定ホームランの年か。日大三高・夏の甲子園の優勝投手。日大三高の優勝といえば、ファイターズのおにぎり君・横尾俊健と、数十分間ヤクルトに入る予定だった阪神・高山俊を思い浮かべる。その10年前に初優勝をもたらしたピッチャーが、近藤だった。
交換でオリックスに行った八木亮祐はまだ25歳。近藤は33歳。キャリアのある近藤も、肘の手術後、調子が上がらず育成契約になった時期もあったようだ。15年目、支配下再登録後のトレード。近藤にとって、屈辱のトレードになってはいないか。近藤がどう思うか、近藤にどう思ってもらうか。ヤクルトに来てよかったと、その一言を聞くために、頑張って応燕しなければ。そんな使命感に、私はとらわれていた。

しかし、そんな気負いなど瞬時に吹き飛び、私はあっという間に、近藤一樹というピッチャーに心奪われた。近藤の、投球フォームだ。
ボールを投げた瞬間、四方八方に散らばる長い手足。それはまるで、飛び立つ瞬間に羽を広げ、羽ばたく鳥だった。

▲2019.6.9 sun. オリックス戦 in 神宮


▲2019.6.6 thr. ファイターズ戦 in 札幌ドーム


▲2019.7.8 mon. ベイスターズ戦 in 神宮


鳥の名がついた球団にやってきたことにも意味を持たせてしまうような、そんな劇的で、尊さあふれる場面に居合わせた。それから私は3年半、いつもどおり神宮で、いつもどおりヤクルトのコンちゃんを見つめている。

近藤一樹は、坂口智隆、讀賣の岩隈久志とともに『最後の近鉄戦士』と言われている。近鉄という球団の歴史に幕を閉じるのは、この3人のうちの誰かだ。その希少さはもとより、私はどうしても気になっていることがある。

コンちゃんとぐっちは、優勝経験がない。

私は、このふたりに、どうしてもあの優勝の歓喜を味わわせたい。そしてともに分かち合いたい。どうしても優勝したい!このふたりのために、どうしても!

さぁ。とうとう新たなシーズンが始まる。待ちくたびれた。絶対優勝、しましょうね。

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