山田哲人がいないとダメなんだ

令和4年8月7日    日曜日
東京ヤクルトスワローズ    4-9    讀賣巨人軍
明治神宮野球場

7回、吉川尚輝のタイムリー3ベースで讀賣は逆転に成功した。
打ったのはかつての同僚、田口麗斗だ。
2点リードの東京ヤクルトはこの回、3人目の梅野雄吾が1点差と迫られ、1アウト10球でマウンドを降りた。
その後を引き継いだのが田口だった。打ったのは、6球目のスライダー。セカンド・山田哲人の横を抜け右中間へ。2塁3塁のランナーが帰る、綺麗な走者一掃だった。

このプレーを、ニッポン放送・ショウアップナイターで解説を務めていた真中満は、こう述べている。

山田も逆シングルでいくか迷ったんですよね。反応が良ければ、捕れていてダブルプレーの打球でしたよね。山田には厳しいようですけど、さばいて欲しい打球でしたね。*1

山田の後逸を見届けたときの絶望感は、「またか」という不安と放棄の感情からつくられている。
この3連戦、すでに2敗していた。最終日の今日負ければ、3タテだ。
連敗は、チームに暗い影を落とす。その影は、何故かどんどん広がっていき、チームを連敗の沼に引きずり落とす。
2019年に経験しているから、分かっている。だから、ここで勝っておかなければならなかったのだ。

コロナ感染による一軍選手の大量離脱から、徐々にメンバーが戻ってきている状況において、コロナ前のチームまで復活し切れていない感はあった。
皆、何となく調子が悪い。その積み重ねでは、打線が成立するはずもなかった。
そこにきて守備の乱れが重なれば、相手にとってこれほど都合のいいことはない。

真中満の「取ってほしかった」は、本調子ではない山田哲人の現状を暴露していた。

◇◇◇

その日のフジテレビone・プロ野球ニュースで、金村義明は、今のヤクルトをこう評した。

コロナで厳しい状況があったが、4番村上が1日で帰ってきた。サンタナとオスナも当たっている。あとは3番山田哲人。なかなか調子が上がってこない。打率も.250を切った。下半身のキレを感じない。吉川の打球も、グローブが逆になって反応も遅い。山田がグングン引っ張らないと厳しい。

打で牽引しきれていないことはもちろん、やはりあの守備が不完全なものであったことを指摘している。

私はてっきり、「山田哲人でも取れない打球」が、運悪く長打コースにはまってしまったということなのだと思っていた。

山田哲人は守備も上手い。今年こそ、GG常連の広島・菊池涼介を抑えて「ゴールデンクラブ賞をとる!」という目標も立てた。

今日の負けが、山田哲人の手中にあったことを異口同音に聞いた私は、やはりヤクルトは山田哲人がキーマンだということを再確認すると同時に、ひとつの引っかかりも感じていた。

ヤクルトの戦い方は、「全員野球」だったはずだ。
「ひとりコケたら皆コケる」チームづくりはしていない。
今は誰しもが調子の上がらない状態だから仕方のないこととしても、「山田コケたら皆コケる」ヤクルトでは、ヤクルトのチームカラーに反するじゃないか。

山田哲人への期待は、無限大だ。山田が掲げた今年の目標は「率」。
日本一にチームを「導」いた昨年から、「率」を残してチームを「率」いるという決意で臨む今年に、ファンの連覇への期待が山田の背中にのしかかった。

率いるキャプテンがコケたら、皆コケてしまうのか。
それでは、山田哲人の野球ができない。
ましてや、コロナの魔の手は突然襲いかかってくる。
山田哲人のコントロールできないところで、山田はどんどん苦しい思いをしているのではないか。

「早く、神宮で躍動する左袖のキャプテンマークを見たい」。
それは、ファンの総意と言っていい。
だが、その真意はファンひとりひとり違う。

解説陣のように、「山田の調子が戻ればまたヤクルトは強くなる」と、戦力の復活を言う人もいる。
グラウンドで元気のない山田を見て、「またあの笑顔を見たい」と思う人もいる。
バットを振り下ろして悔しさをあらわにする山田に驚く人もいる。

すべてのファンが、山田哲人が先頭に立ち率いるヤクルトを想定し、山田哲人の復調を祈り、勝利の喜びを分かち合う準備をしている。

やはりヤクルトは、

山田哲人がいないとダメなんだ。

*1

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