近藤一樹の去就が決まった。2021年、四国アイランドリーグ・香川オリーブガイナーズの、コーチ兼任選手として新たな道を歩む。

昨年、大引啓次の引退が報じられたのも、年の瀬押し迫った12月30日だった。
コンちゃんがどうなるのか。コンちゃんはどうするのか。「近藤一樹の去就に胸をざわつかせる」という課題が年跨ぎの課題ではなくなった“大晦日の朗報”に、一旦は安堵した。

しかしそれは同時に、ヤクルトとの決別を意味する。数日前の、北海道日本ハムファイターズ・村田透の「自由契約からの再契約」というニュースを、私はついコンちゃんに重ねてしまっていた。

そんなミラクルがあったなら。

夢物語で終わってしまった“コンちゃんのヤクルト復帰”は、安堵と引き換えの寂しさを、この年の瀬にもたらした。

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コンちゃんは、トレードでヤクルトにやって来た。コンちゃんの、長い手足が四方八方に広がる投球フォームは、まるで鳥が羽ばたくよう。
本物の燕が舞い降りた。神宮に似つかわしいコンちゃんのピッチングに、いつもワクワクしていた。

そして、コンちゃんのルーティーン。ブルペンから走ってマウンドに向かう。白線を踏まないよう、横向きで跨ぐ。マウンドの後ろに立ち、ホームの真っ正面でピョンピョン跳ねる。プレートの端から足長で距離を図り、てくてく歩く。7歩のところでマークを決めスパイクで掘る。掘ったところから90度にマークし、また、掘る。そうして投球練習が始まる、そんなコンちゃんを見てきた。

コンちゃんのルーティーンは、投げ終わったあとも続く。コンちゃんは、ダグアウトに引き上げる途中で立ち止まり、グラウンドに振り返って、野手を待っていた。
それは、野手への「感謝」だった。

いつも自分の後ろにいて、守ってくれる人がいて、安心して投げられる。ありがとうの気持ちを持って野手を待つコンちゃんの誠意に、私は神宮でいつも触れていた。

それが、神宮の風景だった。

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2020年、東京ヤクルトスワローズは2年連続最下位の苦汁をなめた。辛いシーズンの中、タイトルホルダーが2人生まれた。
最高出塁率賞の村上宗隆は、“全試合4番出場”という球団初の偉業を成し遂げた。まだ二十歳。令和の怪童は、気負いを勢いに変えられる頼もしい選手だ。4番を任せ続けて結果を出せる選手であることは間違いないが、フル回転のシーズンで、疲労に疲労が重なっていることだろう。いくら若くても、どうか、体を大切にしてやってほしい。

そしてもう一人、最優秀中継ぎ投手賞を受賞したのが、清水昇だ。
2018年ドラフト1位。國學院大學からきた即戦力右腕のルーキーイヤーは、11試合登板で、0勝3敗、防御率7.27。

プロの舞台を1年経験して、分かったことがたくさんあっただろう。角界の言葉「負けて覚える相撲かな」そのままに、苦しみから学んだことを、2年目の2020年にしっかり自分のものとしてマウンドに立った、しみのぼくん。熱心で立派な若者の姿がそこにあった。

そしてその学びは、野球の戦い方だけではなかった。
たとえば、スリーアウトチェンジで引き上げるとき、ダグアウト前でくるりとグラウンドに向きを変え、引き上げてくる野手陣を迎える。

そう、コンちゃんと同じルーティーンだ。

いつからだろう。昨年、この姿を見ただろうか。気づいたら、コンちゃんの「感謝のルーティーン」が、しみのぼくんのルーティーンとなっていた。
私はあらためて、この清水昇という野球選手を尊敬した。
野球選手として大切なスピリットを、先輩の背中を見て学ぶことができる。この若者は、たくましくて、誠実だ。いつまでも応燕したいしみのぼくんもまた、神宮の風景になっていた。

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コンちゃんがいなくなるということはどういうことか。さみしいに違いない。慣れるには時間もかかるだろう。しかし私は、コンちゃんがそこにいたことを、きっといつでも感じるのだろう。

近藤一樹という燕戦士が残していった、清水昇の新習慣。

私はそれをまた、神宮で見届けることになる。来年もまた、神宮で躍動する野球選手を見続ける。その、“ヤクルトファンの醍醐味”を味わえることに、感謝する。
コンちゃんがいたから、ヤクルトの歴史が続くんだ。

近藤一樹　こんどうかずき
昭和58(1983)年7月8日生まれ（37歳）
投手　右投右打　183cm／80kg　日大三高出身
選手歴
大阪近鉄バファローズ(2002～2004)／オリックス・バファローズ(2005～2016)－東京ヤクルトスワローズ(2016〜2020)－香川オリーブガイナーズ(2021～)
指導歴
香川オリーブガイナーズ(2021～)

近藤一樹の野球人生に、幸多からんことを。もうすぐ、年が明けます。

オリーブガイナーズのユニフォームは、オリーブ色。寒色の配色は、ヤクルトのビジターユニフォームと同じだね。