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私はあの日、うつむくキャッチャーの横にいる廣岡大志を見た

森友哉が、泣きじゃくっていた。
2020年8月27日木曜日。深夜に帰宅した私は、録画したニュースで、西武が山川穂高のサヨナラタイムリーで勝利したことと、ベンチで立ち上がれなかった森友哉のことを知った。
森は、バッティングの調子が悪いらしい。2年連続優勝したチームも低迷していた。この日も、森が途中出場してから逆転を許してしまった。

「どこのキャッチャーも、同じなんだな」

チームの不振を一手に引き受け、その責任をひとり抱えていた森の涙に、私はつい3時間前に居た神宮の光景を思い出していた。

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神宮は、負け試合だった。先発の高梨裕稔は、5回5失点で降板。6回以降の失点は免れたものの、打線が追いつかず、2対5で敗戦した。
汗だくの高梨は、YS帽を激しく振り下ろし、悔しさを隠さない。ベンチに腰掛け、呆然とグラウンドを見つめる。斎藤隆コーチが話しかける。頭も視線も、前を向いたままだ。

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同一カード3戦目。2連敗中のヤクルトで、ローテーションの一角の担う29歳の中堅が、ふがいないピッチングをしてしまった。時は戻らない。悔しさを抱えたまま、ベンチにいる高梨の横には、スタメンマスクの西田明央がいた。

同級生の西浦直亨のタイムリーヒット、青木宣親のソロホームラン。反撃もここまでだった。試合終了。讀賣に三タテを食らい、優勝へと勢いづけてしまった。
疲弊した神宮で私が目撃したのは、ベンチでうつむく、キャッチャーの姿だった。

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西田明央は、手すりに寄りかかり、うつむいたままだ。

その横には、廣岡大志。

何を話しているのだろう。何も話していないようにも見える。でも、あきおの横にいる大志は、時折うなずいていた。

大志とあきおは、仲が良いのだと思う。有料アプリの座談会では、「こいつは何をやっても許されるからムカつく」と笑い、昨年のファン感謝DAYでは、お悩み相談で「廣岡大志が言う事聞かない」とフリップに書いていた。

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キャッチャーの苦悩に、神宮で出くわしてしまったあの夏の日、西武ドームでも顔を上げられないキャッチャーがいた。
森友哉のことを、プライベートでも仲の良い山川穂高は、「森は捕手として一番苦しんでいる。こうして助け合っていければいい」と労った。

そして、神宮。うつむく西田明央の横には、寄り添う廣岡大志がいた。

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胸のざわつきが止まらない。あきおの横に、大志がいないなんて。

神宮の景色から、大志がいなくなるなんて。

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