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ねばねばスイカと干物

鮎ってスイカの匂いがするらしいよ。
魚なのに、スイカ。
鎌倉出身の私にとって鮎はあまり馴染みがなく、初めて食べた鮎は〇〇温泉物語系列の旅館で食べ放題に出てくるシシャモサイズの鮎だった。
どんな味だったか覚えていない。

2年が経ち、海陽町。
海部川で初めて鮎を獲った。もちろん漁業権を持つ人と。
その日は心地よい風が吹き、きらきら光る川には鮎が沢山跳ねていた。

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川上から川下にかけて網を張り、川下からバシャバシャ走って鮎を追い込む。
網から鮎を外そうとすると、体の表面には驚きの粘り気。
人間は、初めて触るものの匂いは取りあえず嗅いでみるものだ。
スイカだ。
本当にスイカの匂いがした。
ねばねばスイカ。
全く美味しそうには聞こえないが、焼いて食べると身はホクホク、皮はパリパリ、肝は程よい苦味。ビールで優勝。

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天然の鮎はこんなにも美味しいのかと感動した2ヶ月後、新しい感動に直面した。

鮎の干物だ。

徳島県海陽町久尾で蔭田さんという優しそうなお爺さんが鮎の干物を作っている。

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川魚の干物にはあまり馴染みがないが、蔭田さんの魔法にかかった干物は噛めば噛むほど旨味が溢れ出てくる。
河原で七輪で焼いた。
皮が炙られ、香ばしい匂いが食欲をそそる。

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焼き立ての鮎の干物を丸かじりすると、香ばしさと旨さのWパンチ。
人間は、美味しいものを食べると無言になり、にやける生き物な気がする。
ああ旨い。本当に旨い。にやける。

天然の鮎の旨さを感じた夏が終わり、人の手で全く別の魅力を引き出された鮎と出会った。出会いの秋だ。

天然の鮎は中々スーパーには売っていないかもしれない。
その美味しさは、時間と共に変化するものだし、採れたての味を楽しむことは場所的にも制約があるように思う。素材に制約があるからこそ、食べた時に感動するものだ。
鮎の干物は、久尾の蔭田商店と地元のスーパー、海陽町ふるさと納税の返礼品でしかゲットすることはできなかった。

しかし、この秋から初めてAWAHOLICで販売されることになった。

是非一度、鮎の干物を食べてみて欲しい。
ご家庭でも、河原でも、山でも、食べる場所は問わない。
鮎の奥深さを知る上で、蔭田さんが作る鮎の干物は絶対に味わっておくべきだ。
スイカの匂いはしないが、鮎の魅力の一部分を実感する機会になることを約束する。