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Vol.27 「ありがとう」を敢えて最大化する

皆さんは、普段からお世話になっている方に「ありがとう」を伝えていますか。助けてもらったり、嬉しかったりするときに言葉で「ありがとう」や文字や身振り手振りで「ありがとう」を伝えることもあるでしょう。思いの丈を込めて「ありがとう」を伝えれば、身が震えるような感動を相手に届けることもできますよね。今回は私が最も感動した「ありがとう」の伝え方を紹介します。ご参考になれば幸甚です。

2年前の金沢マラソンに参加していた時のこと。年配のランナーが私の30m先を走っていました。私はその年配ランナーの背中を目標に置き、徐々に距離を詰めて行くと、沿道からずっと「ありがとう」の大声援が続いているのに気が付きました。最初は金沢の人は人情味があって温かい人ばかりだと思っていましたが、よく観察してみると、その年配ランナーが走っているときだけ「ありがとう」の声が続くのです。

この方ってもしや有名人なのではと思ったのですが、名前を呼ばれることも無いし、黄色い声援があるわけでもない。あるのは「ありがとう」の大声援だけ。年配ランナーは沿道に手を振って応えておらず、息を切らして苦しそうに走っているだけ。

この方一体何者なんだろうと興味が湧き、お顔が見たいと思うようになりました。そして、その方の背中を捉え、前へ3歩出た後に振り向いてみたのです。

すると、そこにはゼッケンに「ありがとう」の文字が。

マラソン大会のゼッケンは通常ナンバーが打たれていますが、別料金を払えば希望するニックネームが平仮名か片仮名で印字されるサービスがあります。大抵は「なおちゃん」「あつし」など自分に向けられたニックネームが非常に多い。ですが、その年配のランナーは自分向けではなく、「ありがとう」という文字で他者に対して感謝の気持ちを表しているのです。

おそらくその年配ランナーは普段から周囲の人に感謝の気持ちを深く持ち続けているのでしょう。そうでなければわざわざニックネームに「ありがとう」と記すはずがありません。私は絶対真似出来ないと思いました。私も「なおちゃん」とか「ポチ」などウケを狙った文字にするでしょう。「ありがとう」の発想なんて微塵も無い。それはつまり自分だけしか意識が向いていない証左でもあります。

その年配ランナーの姿を記憶に刻んで、私は先へと進みました。あの時の衝撃と感動は今でも忘れられません。「ありがとう」の気持ちは大小関係無く大事ですが、時には「ありがとう」を思いの丈を絞って伝えてみてはどうでしょうか。きっとそこには何物に代え難い感動が待っているかもしれません。

日々是好日