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何もできない有休の日

明日は有休。だからちょっとだけ遅くまで起きても大丈夫。そう思って目を閉じた。

5時間後、目が覚めた。違和感とともに。


突然の痛み

健康な生活は睡眠から。だからいつも7時間は寝るようにしている。

目が開く。寝転がって時計を見る。時間は6時50分。まだ早い。よし、休日らしく二度寝をしゃれ込みますか。

寝返りを打つ。きゅいんと、腰に違和感があった。

ぱっちり目が開く。寝ている間に腰を痛めたか。じゃあ仰向きから横向きにしてみよう。

しくしくと腰が何かを訴えている。しかも、どんな態勢にしてもずっと同じようにしくしくしてる。

状況がちょっとはつかめてきた。どうやら、痛いのは腰じゃない。おなかだ。


耐久の2時間

寝ていると、明らかにしくしくがじくじくになってきた。こいつ、レベルアップしてやがる。

幸い、こんなときに備えてかかりつけ医は決めてある。こういうときはプロの意見が一番だ。

診察カードを手に取り、財布に入れようとして手が止まった。

「営業時間 9時~」

まだ朝早いの忘れてた。時間は7時。ちょっとだけ救急車を考えたが、まだ我慢はできる。脂汗は出ないぐらいの痛みだ。こうして2時間の耐久レースが始まった。

寝る前に考えていた優雅なお休みプランが波にのまれた砂山のように崩れていく。

朝食がわりに無理やりウイダーinゼリーを流しこんだ。相変わらずしくしくだ。


椅子に座ってPCをつける。こういうとき、すがるべきは「面白い作品」だ。ということで、ドラマ「ゆるキャン△」の2期を見ることにした。

のんびりキャンプをする光景を見ていると、腹がずんずん主張してくる。彼女たちは健康でいいな。進む時間が遅い。まるで内側から太鼓の音が聞こえてくるみたいな不快感が続く。

1話分が終わった。1時間たったかと思ったけど、すぎたのは無情にも23分。

日常モノの作品は腹痛の前で無力だった。

そのあとNHKプラスで剣道世界選手権のドキュメンタリーを見た。ちょっとだけ時間が早くなった。


医者へ

ようやく9時が近づいてきた。おなかをおさえながら医者へ向かう。幸いなのは、熱や吐き気といったほかの症状がまったくないことだ。だから歩くのは問題なくできる。

診てもらう。医者の人が首をかしげながら言った。

「大腸の調子が悪いみたいですね」

大腸だけが調子くずすことってあるんだ。とりあえず原因がわかってちょっと元気が出た。といいたいところだけど調子は相変わらずしくしくしている。

近くの薬局で漢方薬をもらい、家に帰ってから飲んだ。


耐久レース再び

さあ、第二戦の始まりだ。PCをつけるとNHKプラスがそのまま画面に居すわっていた。よし、次はインドネシアで出稼ぎをしている兄妹のドキュメンタリーを見よう。

ドキュメンタリーでは、両親の体調が悪く、10歳の兄とその妹が出稼ぎをして家計を支えていた。そう考えると、腹痛ごときで寝転がっている自分がとても恵まれた環境でいるように見えてくる。

とは思ったものの、やっぱりつらいものはつらい。

とか考えていると、画面に調子が悪い母親が映った。寝転がっている姿を見てちょっと親近感。ただ、そのあと「手術跡が化膿して痛いけどお金がなくてどうしようもない」って話をしていて痛みのレベルが違った。やっぱり自分は恵まれているよ。

ちょっと勇気が出た。立ち上がる。ぐええ。明らかに調子が悪くなっている。もう座れない。ベッドで横になる。うつ伏せになったらちょっと楽になった。


よし、作戦変更だ。

こういうときは「刺激的」な作品を流せばエキサイティングに時間が流れてくれるのでは。前から見たかった「シン・ウルトラマン」を見るか。

ベッドに横たわり、3メートル先の机のディスプレイを眺める。ほほう、これはなかなか。ウルトラマンって全然知らなったけどこんな複雑は話だったのか。

明らかに今日見たものの中で一番流れる時間が早い。でもおなかの違和感も一番大きくなってきた。

おなかの中でも何かがウルトラマンのように闘っているのだろうか。だとしたら、増援(薬)が届いているころだろうか。負けるな、がんばれ。


1時間後。映画の中では人類の滅亡が防がれ、丸くおさまった。よかった。そちらの世界ではうまくいったか。

身体を起こす。さっきとは別の違和感があった。「しくしく」が「しく」ぐらいになっているではないか。

どうやら、大腸でも決着がついたようだ。


休みが終わっていく

体調が元に戻ってきた。とりあえずもう一度薬を飲んで消化にいい冷凍うどんを食べる。

優雅な休日は消えてしまった。が、それよりも日常に戻れた達成感が残っている。こういうときに、健康ってのはいかにもろい基盤の上に成り立っているのかを痛感する。

とりあえず、明日からヨーグルトでも食べようか。

目指せ「無病息災」。私の好きな言葉です。


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