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タイピング無慈悲タイプ

今私の目の前で起こっていることだ。
タンタンタン、ターン!(エンター)
そんなもんじゃない
ドスドスドス、ドン!(エンター)

ちなみに前者はイヤホンをして音楽のボリュームを上げれば大体かき消される。
比較的高音域で構成されている。
今回出会ったタイピングは、イヤホンくらいではかき消されない。
重低音を身にまとったその音はスターバックスのコミュニティテーブル上全員に対し少しの振動を伴いながら伝わっていく。

振動の元に目をやる。
少し昔のラップトップだ。結構分厚い。
女性だ。
タイピング音をかき消すほど迫力のある表情をしている。
眉間にシワを寄せ、とても鋭い眼光だ。

一体どんな作業をしているのか気になったが、様子をチラチラしようものなら眼孔から放たれるビームにより即死に追いやられるだろう。

皆が言うことだが、大きなタイピング音は人間を不快にする。
多分にもれず私もそんな気持ちになったが、だんだんその音がプラスチックの悲鳴に聞こえてきた。
キーボードに使われるそれは相当ハードな運命にある。
aiueoの母音系は特にハードだ。何万回もプッシュされる。
場合によっては印刷のみならず本体も爪で削られることもあるだろう。

ただでさえハードなキーボードさんが、そんな目にあっていることを思うと、居ても立ってもいられなくなる。

私のお慈悲の心もつきそうになったその時、その刹那。
女性は突然タイピングをやめた。

そしてその刹那。
パカーン!!!とものすごい音でラップトップを閉じたのだ。
お決まりすぎる。紅白の最後がサライで決まっているような安定感のあるパターンである。

果たして女性は何をやっていたのか。
その謎が今も私の頭の中でグールグルである。

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