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おっぱい・

 常連さん ー3回顔をあわせればもう常連顔をするのでそうゆうことになっているー が唐突に
「ももちゃんひざまくらしてよ」と、狭いベッドの上に正座をさせて甘えた声をだす。ベッドとはいえどもベッドのようなものでもし彼氏とはりきって交尾をしたのなら壊してしまうそうなほどきしむ。きしむべっどのうえで〜、やさしさもちよりぃ〜、きつ〜くからだだきしめあえばぁ〜、
 ベッドがきしむたび『尾崎』が脳内で流れる。まさか『尾崎』のヘルス嬢にこの歌が脳内に浮かぶとしったら浮かばれないだろう。
「うん」
 おやすいごよう。あたしは正座の格好なので膝をぽんぽんと叩いて頭を乗せるように目線でうながす。
 わーい。お客さん ーたぶんこれで4回目だけれど名前もしらないー はまるで子どもじみた声をあげ大仰によろこんで頭をあずけた。
 で? 頭をよしよしとなぜたらいいのだろうか。頭をなぜようとお客さんの方に顔を落としたとたんぎょっとした。
 耳くそが思いっきり溜まっている。穴からはみだしている。薄暗くてもわかる物体にいてもたってもいられない情動に駆られた。不潔、あるいは、汚い、または臭いオヤジ、とか、そうゆうことじゃなくてあたしは穴からはみだした物体を掘りたくて仕方のない衝動を抑えるのを必死だった。
 あたしは耳かきに拘泥していて耳かきを採取するのを趣味とし無論掘るのも趣味としている。なので最近掘り過ぎて外耳炎になった。彼氏も一緒に外耳炎。お前なぁ、やめろっていってんだろ、は? 寝てるときに勝手に掘っただぁ〜。彼氏に散々叱咤されここ3日ほど口を聞いてない。
「どうした?」
 下からの声にはっと現実にかえる。あたしはいいえなんでもないです、と、首を横に振った。
「吸ってもいい? 赤ちゃんみたいに。吸いたいなぁ。ももちゃんのおっぱい」
 なんですと? 
「じゅ、じゅにゅうってやつですかね?」
 お客さんはすでに赤ちゃんの体勢が整っていた。なので
「そうでちゅ〜。おっぱいがほしいちゅう〜」
 あたしのたけのこよりも嫌いな赤ちゃん言葉を使いあたしの乳首をつまむ。
「あん」
 バカなやつ。と、頭のなかで思いつつもあたしのかなりバカなのでついうっとりとした声をだす。
 乳首はお客さんの口のなかにおさまる。ちゅうちゅうと、いや、じゅるじゅると音を立ててすいたてる。
 いちおう頭をなぜる。いいこね〜、もっと飲んで大きくなってね、などといいながらも大きくなったのは股間の息子だった。
「やだぁ、こっちの息子の方が大きくなったわ」
 あたしはクスクスと笑う。興奮するもん、すげー。お客さんは本当に赤ちゃんに戻ったように歯をたてないで吸う。
 癒されるなぁ、とつけたして。
 あたしは。ふと、考える。あたしは一体なにをしているのだろう。母乳も出ないのに乳を吸わせている。赤ちゃんでもない大きくなりすぎたにんげんのおとこに。
「でないわ」
 小さな声音でささやくもどでかく流れている有線にかき消されないものとなる。
 あっ、声にはださなかったけれど心で叫んだ。
 耳くその塊がポロンと落ちたのだ。まあるくて少しだけ茶色味がかったやつ。
 でかいなぁ。心のなかでひとりごち、おっぱいでかいなぁ、お客さんはもう片方のの手であたしのおっぱいをもみもみする。
 どうしてだかわけもわからずに胸の中から笑いがこみ上げてきて笑いを殺すのに疲弊した。
 お客さんはまだ飽きずに吸っている。そのうち眠りやしないかと待ってもいるが40分しかないのではやくあたしの仕事をさせてくれと思うもおとこっていつまで勃ってもおとこなのね。
 あたしはまたクスクスと笑う。

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