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白滝半田そうめん@パリ2区レストランFleur de Pavé フランスの食関連ニュース 2021.11.25

今週のひとこと

パソナAgri-Partnersが企画された徳島県の物産イベントに参加させていただきました。ミシュラン1つ星を獲得する気鋭のシェフ、シルヴァン・サンドラさんのレストラン「Fleur de Pavé」での着席のイベント。鳴門わかめ、味噌、なると金時、柚子胡椒、柚子、柚香、すだちなどの和食材をフレンチに融合させた料理には、日本に何度も訪問し、造詣を深めてきたシルヴァンならではの繊細な技量に感銘を受けました。たまたま隣に同席した方がミシュラン3つ星レストランKEIのシェフ・パティシエの高塚俊也さん。奥様が徳島の出身で、今回紹介された柚子胡椒の生産者と同じ町にご家族がいらっしゃるということ。過疎化が進む地元をなんとか元気に、活性化させていきたいと思う気持ちを真摯に語っていらっしゃいました。

さて、シェフ、シルヴァンの挑戦の創作の一皿と感じたのが半田そうめんを使用した鱈の付け合わせでした。半田そうめんの名は徳島県美馬郡つるぎ町の半田地区に伝わることから。はずかしながら、そうめんは「揖保乃糸」あるいは「三輪そうめん」などの細い麺にしかご縁がなかったので、だいぶ太めでコシが強いところが特徴という半田そうめんの個性に初めて出会い、驚きました。その個性を生かして、シルヴァンシェフはそうめんにラングスティーヌのビスクソースを吸わせ、まるでスパゲティのような仕上がりに。ビスクソースにもしっかり応え、しかもソースを十分に吸っていながら(写真でもわかるとおりに、しっかりと染みて色づいています)、のどコシの心地よさは変わらず、フレンチのレシピに負けない力強さに驚いた次第です。

提供は白滝製麺さん。レストランの客室でも製造工程の映像が流れていましたが、その手延べ工程の根気のいる仕事であることが理解できました。原料は小麦粉と水と塩だけ。練っては延ばしを何度も繰り返して出来上がる、手延べそうめん規格ぎりぎりの太さ1.7ミリの麺。吉野川の清らかな水、その吉野川という水運、山脈から吹き下ろす風などの地理がもたらした産物でした。

イタリアのパスタも、小麦粉と水を練りあわせて作った麺ですが、パスタの原料として欠かせないのはデュラムセモリナ。この粗挽きにしたデュラム小麦の粉作るパスタのコシの強さは有名です。もともと硬質のデュラム小麦はタンパク質に富み、グルテンの粘質が特徴的。かつ粗挽きにすることでその特徴を際立たせています。

対して、半田そうめん。日本の小麦でいかにコシを出すかは、塩の存在はもちろん「すこしずつ延ばしてはゆっくり寝かし」を忍耐強く繰り返すことで適切な熟成時間を得て、グルテン質をしっかりと形成させるゆえ。延ばしてもけっして切れてしまうことがない弾力のある麺に。

粗挽きにすることでパスタの個性が生まれたデュラムセモリナとともに、風土と共に生まれ育った食文化の奥深さと人間の智恵。

ところでシルヴァンのレシピの麺の付け合せには、わざわざ半田そうめんを選ぶなくともスパゲティで代用できるのではという声も聞こえてきそうですが、スパゲティだと残る独特なざらつきが全くなく、しなやかなコシのある食感のあるそうめんに軍配を上げたいと思います。


今週のトピックスは今週のひとことの後に掲載しています。ご笑覧ください。【A】コペンハーゲンの3つ星レストラン「Geranium」、肉を一掃。【B】ファーストフードバーガー店が初のECOTABLE認証店に。【C】ディズニー長編アニメ映画『Encanto』の吹き替えに、コロンビア出身の料理人が。【D】アラン・デュカス所有「プラザ・アテネ」ガストロノミーレストランのインテリアが競売に。【E】傷もの果物野菜をジュースに。

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