数学における学振DCの取得状況


はじめに

数学系の研究における直近5年(2019年度~2023年度採用者)の学術振興会特別研究員DC(学振DC)の取得状況についていろいろまとめてみました。

この記事のデータは学術振興会の特別研究員採用者一覧のページに基づいています。採用者のうち審査区分が「31 代数学、幾何学およびその関連分野」「32 解析学、応用数学およびその関連分野」に属するものについて調査しています。また、例えば2023年度採用とは2022年度に申請、審査されたものを指します。

手作業での集計のため、多少の誤差はご容赦ください(見つけたかたはX(旧Twitter ID:@i25343729)にご連絡いただけると幸いです)。

年度

  • DC1

    • 2019年度 24人

    • 2020年度 25人

    • 2021年度 22人

    • 2022年度 19人

    • 2023年度 21人

    • 累計 111人(平均22.2人)

  • DC2

    • 2019年度 34人

    • 2020年度 37人

    • 2021年度 29人

    • 2022年度 30人

    • 2023年度 28人

    • 累計 158人(平均31.6人)

  • DC1+DC2

    • 2019年度 58人

    • 2020年度 62人

    • 2021年度 51人

    • 2022年度 49人

    • 2023年度 49人

    • 累計 269人(平均53.8人)

分野

2019年度~2023年度採用分の合計人数および1年あたりの平均人数をまとめています。各分野の詳細については以下のリンクの審査区分表を参考にしてください。

  • DC1

    • 代数学関連 43人(8.6人/年)

    • 幾何学関連 16人(3.2人/年)

    • 基礎解析学関連 12人(2.4人/年)

    • 数理解析学関連 15人(3.0人/年)

    • 数学基礎関連 4人(0.8人/年)

    • 応用数学および統計数学関連 21人(4.2人/年)

  • DC2

    • 代数学関連 54人(10.8人/年)

    • 幾何学関連 33人(6.6人/年)

    • 基礎解析学関連 22人(4.4人/年)

    • 数理解析学関連 35人(7.0人/年)

    • 数学基礎関連 2人(0.4人/年)

    • 応用数学および統計数学関連 12人(2.4人/年)

  • DC1+DC2

    • 代数学関連 97人(19.4人/年)

    • 幾何学関連 49人(9.8人/年)

    • 基礎解析学関連 34人(6.8人/年)

    • 数理解析学関連 50人(10.0人/年)

    • 数学基礎関連 6人(1.2人/年)

    • 応用数学および統計数学関連 33人(6.6人/年)

受入大学

学振特別研究員の受入研究機関について、2019年度~2023年度採用分の合計人数および1年あたりの平均人数をまとめています。採用人数の多い順に並べています。

  • DC1

    • 東京 31人(6.2人/年)

    • 京都 19人(3.8人/年)

    • 名古屋 11人(2.2人/年)

    • 九州 8人(1.6人/年)

    • 東北 7人(1.4人/年)

    • 大阪 7人(1.4人/年)

    • 東京工業 5人(1.0人/年)

    • 早稲田 3人(0.6人/年)

    • 広島 3人(0.6人/年)

    • 北海道 2人(0.4人/年)

    • 横浜国立 2人(0.4人/年)

    • 他 1人(0.2人/年)(金沢、首都大学東京(現 東京都立)、埼玉、慶應義塾、中央、信州、筑波、総合研究大学院、明治、新潟、熊本、電気通信、神戸)

  • DC2

    • 東京 32人(6.4人/年)

    • 京都 30人(6.0人/年)

    • 東北 14人(2.8人/年)

    • 早稲田 12人(2.4人/年)

    • 名古屋 11人(2.2人/年)

    • 東京工業 9人(1.8人/年)

    • 大阪 9人(1.8人/年)

    • 北海道 5人(1.0人/年)

    • 東京都立 5人(1.0人/年)

    • 慶應義塾 4人(0.8人/年)

    • 東京理科 4人(0.8人/年)

    • 横浜国立 3人(0.6人/年)

    • 神戸 3人(0.6人/年)

    • 筑波 2人(0.4人/年)

    • 埼玉 2人(0.4人/年)

    • 関西学院 2人(0.4人/年)

    • 広島 2人(0.4人/年)

    • 他 1人(0.2人/年)(山形、芝浦工業、千葉、津田塾、静岡、中央、愛媛、九州、熊本)

  • DC1+DC2

    • 東京 63人(12.6人/年)

    • 京都 49人(9.8人/年)

    • 名古屋 22人(4.4人/年)

    • 東北 21人(4.2人/年)

    • 大阪 16人(3.2人/年)

    • 早稲田 15人(3.0人/年)

    • 東京工業 14人(2.8人/年)

    • 九州 9人(1.8人/年)

    • 北海道 7人(1.4人/年)

    • 東京都立 6人(1.2人/年)

    • 慶應義塾 5人(1.0人/年)

    • 横浜国立 5人(1.0人/年)

    • 広島 5人(1.0人/年)

    • 東京理科 4人(0.8人/年)

    • 神戸 4人(0.8人/年)

    • 筑波 3人(0.6人/年)

    • 埼玉 3人(0.6人/年)

    • 中央 2人(0.4人/年)

    • 関西学院 2人(0.4人/年)

    • 熊本 2人(0.4人/年)

    • 他 1人(0.2人/年)(信州、筑波、総合研究大学院、明治、新潟、電気通信、山形、芝浦工業、千葉、津田塾、静岡、愛媛)

まとめてみて思ったこと

真面目に検証していない1人の感想であることにご留意ください。

  • 4,5年前と比較して、ここ3年の採用者数が減少している。数学系の審査は数学系の先生のみで行われることから、数学内での採用率は学振全体の採用率と大差はないと思われる。つまり、学振全体に対して数学系の申請の割合が減少していると考えられる。数学科の博士課程の人数は(多分)増えてると思うから、他分野の申請が多分それ以上に増えてるのかなあ…。考えられる要因としては、最近できた博士課程支援制度(JST次世代や大学フェローシップ創設事業など)に学振への応募が義務づけられているケースが多く、従来では学振への申請率の高くなかった分野でも申請するようになったとかかなあ…。

  • 分野としては代数が多く見えるが、基礎解析学、数理解析学、応用数学および統計数学は解析ともいえると思うので解析が多いという見方もできる。幾何は少なめ。

  • (このデータとは関係ないが)大半が解析学である審査区分「32 解析学、応用数学およびその関連分野」に属する数学基礎分野の人は本当に大変だと思う。トピックが代数に寄っているなら代数学関連として出すのも1つの手段ではありそう。

  • 学振全体の採用者数ではDC1が700人、DC2が1100人であることを考えると、ここ5年の応用数学および統計数学関連の採用者数がDC1で21人, DC2で12人であることはかなり特殊。なんで?有識者がいましたらご教授ください。

  • DC1は東京大学が圧倒的。DC2では東京大学と京都大学が多い。以下のデータを見るに(以下のデータは2019年度のみのものであるが)、学振全体と比較すると数学系では、採用者における京都大学の割合(DC1…17.0%, DC2…19.0%)が高いように思える(東京大学はDC1…27.9%, DC2…20.3%でほぼ変わらなく高い)。

  • ちなみに2023年度採用分のDC1では、21人中11人が東京大学。強すぎる…。

  • 旧帝大に東京工業大学を合わせた8大学の採用者数が多い。DC1+DC2では旧帝大+東京工業大学が上位9大学に全て入っており、採用者の74.6%を占める。

  • 私立大学では早稲田大学が群を抜いて多い。DC1, DC2合わせてここ5年で15人。

  • 東京大学大学院数理科学研究科(東大数理)の博士課程の入学者を見るに「東京大学の数理科学研究科の博士課程学生のうち学振DC1 or DC2に採択される人の割合は50%強くらい」といえる。

  • 同様に「京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻(数学教室+RIMS)の博士課程の学生のうち学振DC1 or DC2に採択される人の割合は50%弱くらい」といえる。

  • (正確に数学科の博士課程の人数を把握するのは難しいが)数学科の博士課程全体で見たときに学振DCを取れた人というのは半分を優に下回ると思われる。

  • これは本当にただの感想である。学振の採択率が20%であり申請の機会が最大3回であることを考えると最終的に学振に採択される確率は50%程度だと思える。しかし、この計算をもって「学振を通さないと博士学生の上位50%にも入れない」「学振を通せなかった私は博士課程の下位50%なんだ…」と思うのは視野の狭まった推測であると自戒を込めて主張する。学振の申請書を3回書くという行為はハードルの高いことであり、それを乗り越えてもなお半分の人は不採択になる、学振DCというものはそういった性質のものなのであろう。

最後に

最後まで目を通してくださってありがとうございました。感想や要望などございましたらX(旧Twitter ID:@i25343729)にご連絡いただけると幸いです。

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