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金平糖

先日久々に、結婚式の司会の仕事の依頼があって、喜んで引き受けた。
もともとお付き合いがあるウエディングプランナーさんからのご指名で、コロナ禍を経て
約4年ぶりの再会&お仕事だった。

実はこの仕事の、ほんの2週間前に、
「あの人とまたお仕事がしたいなぁ」
と、家族に話した矢先のことで、
久々に連絡が来てた時には本当に驚いた。
願ってみるもんだなぁ。

それで、とても素敵なプランナーさんと、とても素敵な新郎新婦が、二人三脚で、
ありとあらゆるプロフェッショナルを巻きこみながら当日の結婚式を成功させた。

新郎新婦のお二人はもちろんだけど、
そこに関わるスタッフ一人一人が、新郎新婦のお二人に心を寄せていて、
仕事の域を完全に超えていた。
私はただの司会者という立場たったけれど、純粋に、その場にいる1人の人間として感動したし、誇らしかった。

そんな2人の引き出物が“金平糖”だった。

2人の思い出の金平糖なんです。
と、話してくれる新婦さんが可愛い。
2人がとても素敵なので、さぞかし素敵な金平糖だろうと思って想像を膨らませた。

そしたら、お2人、この金平糖を、引き出物にしただけではなく、
今回関わってくれたウエディングのスタッフみんなにプレゼントしてくれたのだ!

こういう気配りだよね。こういう気遣いが
できる女性に、私もなりたい。

一つ一つ個包装になった金平糖は、和紙でできた巾着のような袋に詰められていて、手のひらにちょこんと乗るくらいのサイズだ、
うっすらと金平糖の色が透けている。
ピンク、黄色、みどりはメロンなのかぁ!
と手にとって選んでいると、
まるで雨の雫のような青い金平糖を見つけた。
「それは、天然水サイダーですね」
と、教えてくれて、その爽やかな色と、金平糖のサイダー味ってどんなだろう?と気になって、天然水サイダー味の金平糖を選んだ。

京都の、“緑樹庵清水”というお店の金平糖なのだけど、みなさんご存知ですか?
私は初めて知ったのだけど、とてもとても有名なお店でした。

帰宅して、すぐにいただいて、驚いた。
この金平糖すごーーーく美味しい。
金平糖なんてただ砂糖を固めただけのものでしょ!?
と思うなかれ!
なんなのこれ!
カリッと歯で砕くと、一瞬で粉々になって舌の上で溶けていく…
“こんにちは!私は砂糖です!”
という主張がほとんどなくて、儚い。
そう、儚いの!

わぁぁぁと言ってる間に、食べ終わってしまった。
なんて夢のよう。

京都に行く時にはお店に立ち寄ってみよう!
と考えていたら、
思いがけず京都に行くことになったので
“緑樹庵清水の金平糖を買って帰る”
というのが、旅の目的の一つとなった。

有名なお店、ということしか理解していなかった私。
今回京都に行くことになり、改めて調べてみると、
日本で唯一の金平糖専門店だということがわかった。
金平糖。今では手軽に手に入るお菓子だけど、その歴史はとても古い。
1546年にポルトガルから伝わってきて、
あの、織田信長にも献上されたことがあるくらい、位の高い人しか口にすることはできなかった貴重なもので、製造方法は一切秘密。

その後江戸時代になってからようやく日本国内でも作られるようになったのだけど、
そんな、江戸時代から150年以上も年近く伝統を守り続けてるのが緑樹庵。
今もなお職人たちが全て手作業で金平糖を作っている。

かぁぁぁ!!!気の遠くなるくらい素晴らしい歴史エピソード!緑樹庵清水!ファンになりました!

ということで、京都に行った際に本店に行く気満々だったのだけど、なんと行けず。
ここまで読んで、なんじゃそりゃ!となりそうなものですが、
大丈夫。百貨店の地下にも出店していて、そこに行ってきました。

「あらぁ、遠いところから来てくださったんですねぇ」
とスタッフさんにお迎えしてもらいながら
オススメを聞く。
フルーツの味のものがちょこんちょこんと並べられていて、可愛い。
桃、ばなな、メロン、パイン。
ゴマ味なんていうのもあったけど、いくつか選んで、
「実は、北海道で結婚式の引き出物として使われた方がいて、それで知ったんですよ」
とスタッフさんに伝えると、
スタッフさんは、私の顔を見て、
ぱぁぁぁっと笑顔になり
「あらぁ、それはなんて素敵!私そんな結婚式出たことないわぁ!私だったら本当に嬉しい」
と、感動してくれた。

この話を、あの二人にも伝えたいな。と思うのと同時に、
自分のお店の金平糖を心から愛してリスペクトしてることが、スタッフさんから伝わってきて、いい気分になった。

本店に行けなかったんじゃなくて、
今日百貨店のお店でこの会話をするようになっていたのかも。

この会話を聞いていた母も、偉く感動して、
「この旅行で、あやかにとてもお世話になったから」
と、箱に詰まった金平糖のギフトボックスをプレゼントしてくれた。嬉しい!


あの時の新郎新婦の2人、緑樹庵のスタッフさん、母。
ここの金平糖がもたらしてくれる全ての瞬間が幸福な場面になってゆく。
すごい、金平糖なのだ。


さて、そんな金平糖。
周りの大切な人やお友達にお土産として渡すととても喜んでくれた。この幸福が広がるといいなと思ってる。
我が家の分は、母が買ってくれたギフトボックスにまだたくさん詰まっている。

いつ食べようかな。 

そんなことを考えるだけで、
キラキラと輝く金平糖のように胸が躍るのだ。

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