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I think about me⑩

いよいよ卒業間近の3月に入った。
ほとんどの人が進路が決まり、皆残りの中学生活を緩んだ気持ちで過ごしていた。

そんな締まりのない生徒たちに学年主任の先生は、卒業までは最高学年として、、なんとかかんとかぼやいていた。
気持ちを引き締める為に、と学年委員会をしていたその人と私は呼ばれ仕事を依頼された。

放課後、残って模造紙に文字を書いたり色を塗ったり私の大好きな作業。幼稚園教諭の仕事を考えたのもここが原点な気がする。
その人と私ともう1人の3人で誰も通らない廊下での作業。ドラマの話とかで盛り上がってた気がする。

その頃「白線流し」という高校生たちの青春ドラマがやっていた。そのドラマの主題歌はスピッツの「空も飛べるはず」だった。
その歌をずっと口ずさんで作業していたその人。今でも曲を耳にすると胸がキリキリする。

もう1人のメンバーは先に帰り、2人で残って作業した。夕方の3月の廊下は少し寒かった。床に座っていたから寒がってた私にその人は自分の学ランを脱いで「着たら?」と渡してくれた。女子の紺ブレザーより、密かに学ランに憧れていた私は喜んで借りて着た。

私の息子の制服も学ラン。学ランを着て歩いてる子を見ても胸がキリキリする。
その人に借りた学ランと、学校に行けなくてまだ3回位しか着ていない息子の学ランを思い出すからだ。

おととい、車から学ランを着た1年生の子達を見た。入学式の帰り道だったようだ。
桜並木の下を歩いて親も子も笑顔に溢れていた。おととし息子と私もあんな風だった。

15年前、桜満開の日に生まれた息子。
桜を見ても胸がキリキリする。
1番好きな花だった桜。
今年私は嫌いになっていた。

〈繰り返す季節の中で
 くつが擦り減ってく

 もっと肩の力抜いて
 過去はどこかにしまっておけ
 ここからそう遠くないだろう
 観たこともない景色

 止まらない胸の痛み超えて
 もっと君に近づきたいよ
 一周りしては戻り
 青い空をずっと手探り〉

 引用
 宇多田ヒカルー【SAKURAドロップス】

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