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【詩】読む

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早朝の私鉄駅
小銭入れのジッパーを無意識に開け閉めしながら
券売機の前で運賃表を見上げ
息子を通わせたい小学校がある駅までの
運賃を探していた

水之月の雑踏は蒸し暑さを粘らせる
早く涼しい電車の中に逃げ込みたかった

説明会の時間までギリギリだ
焦る私の腕を息子が揺する
「ねえママ、これなあに?」
息子は点字運賃表を右手で撫でていた

探していた数字を見つけた私は
硬貨を券売機に押し込み
切符とおつりを鷲掴みにして改札へ急ぐ

横を見ると息子がいない
周囲を見回すと人混みの向こうで
小さな息子がさっきの点字運賃表を両手で触っていた
私は大声で息子の名前を呼んだが届かなかった

息子の所に戻ると
彼は私を見上げ
吸い込まれそうな目で問いかけてきた
「ぼくは目が見えるけど
手で読めないよ
ぼくはもし目が見えなくなったら
何もできないよ
それでも小学生になっていいの?」

私は先を焦りながら
たくさんの人にぶつかってしまった

(2003年作)

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