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春はどこに (봄이 어딨니)

봄, 봄, 봄, 여름 코는 어딨니
여름, 여름, 가을 입은 어딨니
가을, 가을, 겨울 눈이 보이면
봄이 온대

春、春、春。夏の鼻はどこにある?
夏、夏。秋の口はどこにある?
秋、秋。冬の目が見えたら、
春が来るんだって。

Lucid Fall (feat. 홍갑) – Spring, Summer, Autumn, Winter

でもその年は、冬の目が見えても、春は来なかった。
春はすべて夏の先に繰り越されて、どこかへ消えてしまった。
別れと出会いの季節が春なのだとしたら、人びとは別れと出会いとも別れなければならなかった。
つながりをなくそうとすることが、いかにつながってしまっているのかを証した。
増えていくものよりもなくなっていくものが注目されるなかで、花はいつもよりも早く咲いて誰にも見られることなく散っていった。
それでもいつもどおりに風の強い日があって、雨が打つごとに暖かくなっていく。
目に見える風景は間違い探しのように刻一刻と変化して、探せるうちはまだそのことに正気を預けている。
「すでに」と「まだ」と「もう」と「いつか」のどれが今日は多かっただろう。
朝目覚めると外の光に何事もなかったように錯覚するけれどーー異国の旅先で眠りから覚めて一瞬ここがどこかわからなくなるようにーー次第に、音声が、文字が、すでに起こっていることが起こってしまっていることを告げる。
変えているのは目に見えないものなのだから、その年の春を見つけるには注意深く音を聞かなければならなかった。

「相手の姿を見るためには、目の前にいなければならない。でも声は、後ろからあなたに呼びかけることもあるし、あまりに遠くからで、その声がどこから来ているのかわからない時もある」(関口涼子「声は現れる」)

目の前を逃げていく春を呼びもどすために、目を閉じて、呼びかける。
春の耳へと向けて。

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