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始まらなかった恋 ①/6 「出会い」

平成初期

世の中はバブルが弾け、女子大生ブームから女子高生が持て囃されるようになり、巷ではミニスカートにルーズソックスのコギャルが流行り、裏ではブルセラや援交という今の「パパ活」の先駆けとなるようなものが社会現象となった。
ただ、その時代の女子高生が皆が皆そんな感じだったかと言うと決してそうではない。格好こそは派手だったかもしれないけど、大半の女子高生は真面目な子ばかりで、遊んでる子なんてクラスに数える程しかいなかった。

このお話は、その時代に女子高生だった真面目と不真面目を行ったり来たりしていた1人の女の子について書いています。
その女の子とは、まだオバスンとは言われていなかった私の事なんですけどw

世の中的にもまだまだ色んな規制が緩い時代だったので、どうかその辺の背景を踏まえて読んでいただけると幸いです。


尚、続きものとなっておりますのでコメント欄には「予想」や「ネタバレ」等を控えて頂きたいと思いますので、どうか宜しくお願いします。

さぁ、寸止め大好き諸君!
いつものようにタイムスリップしていきますよ♪


1994年の夏

都内の女子校に通う高校3年生の私は、毎日毎日受験勉強に勤しんでいた。しかしながら、そんな毎日勉強ばかりじゃつまらないので、夏休みの間だけ元カリスマ美容師の母に頼んで、ショートヘアの髪を金髪に染めてもらった。我ながら似合っていた。

そんな金髪で勉強していた夏休みのある日、友人のS美から合コンに誘われた。メンバーはS美、Y子、B子、C子と全員附属の短大への進学が決まっていた子達ばかりだったので、私はその誘いを断った。

しかしながらそこは幹事のS美に

「たまには息抜きした方がいいんじゃない?予備校の後でもいいから来なよ」

と強引に誘われたので、私は遅れて参加することにした。S美は当時ポケベルを持っていたので、なんとか連絡をつけて会場に行ったら、皆は2次会のカラオケに移動している所だった。(今思うと、当時携帯の無い時代にどうやって連絡を付けて行ったのかわからないけど、恐らく公衆電話からお店に直接電話をしてS美に取り次いでもらったとしか思えない。そんな面倒くさい時代だった)

S美から「あまり盛り上がっていない」という話を聞きながら、2次会のカラオケに向かった。そこでいつもの女子メンバーに迎えられて、「さー、今日もいっちょ盛り上げるか」と一息ついた所、隣の部屋が物凄く騒がしい事に気付く。人数が多い為2部屋に分かれていたらしく、挨拶もそこそこに私は隣の部屋に入っていった。

その部屋には比較的大人しめな男子達の中で一人、懸命に場を盛り上げている男子がいた。モノマネをしたり、合いの手を入れたり、時々笑いを取りながらカラオケをしている様子を見て、私は不思議と親近感がわいた。
「こんばんはー、遅れてすみませーん」と挨拶をするとその盛り上げ男子が私の顔をじーっと見てきた。そして、

「どこかで会ったことない?」

私が「え?」という顔をすると、

「俺、K高の久我だけど会ったことあるよね?ってか、ぜってーこの顔会ったことあるわ!名前何?」

「え?アヤだけど」

するとその場にいた男子の1人が、

「おいおい久我が早速ナンパしてるよwww」

と一気にはやし立てた。

「ちげーよ、ぜってー会ったことあるんだって」

そう言われたけど、全く顔も名前も身に覚えは無かった。

「それにしてもK高って超頭いいじゃん。こんな所で遊んでていいの?大学は附属行くの?受験しないの?」

「そう、偏差値70の進学校。俺実は頭いいんだよ。受験はするけど、まぁ今日は堅いこと言わずに、、、ってそっちだって遊んでんじゃん。アヤかぁー、名前はちょっと覚えてないけど絶対に会ったことあるんだよなー」

「だからそれってナンパ?」

「いやいやそういうんじゃなくて、ホントに会ったことない?俺、久我って言うんだけど」

「久我くん、、、ごめん知らない」

近くで私達の会話を聞いていた友人のB子が、

「久我くん残念だね~、ナンパ失敗しちゃったね~」
 
と言って茶化した。久我くんは、

「だからそういうんじゃないっつーの」

(私はいつもなら久我くんと同じように盛り上げ役に回るのに、その日は遅れていったので、なんとなく控え目キャラに徹していた)

その後、みんなで公園に行こうということになり移動した。もともとこの合コンは、C子がお目当ての男子がいるという事で開催され、私は言ってみれば人数合わせで、C子の好きな人を見るのと、2人をくっつける役目という事で呼ばれたようなものだった。

久我くんも、どうやら同じ趣旨で呼ばれたっぽかった。
C子とその男子が、いつまでもモジモジとしているのを見るのも飽きてきたのか、久我くんが

「俺、花火買ってくるわ」

と言って一人で買いに行ってしまったので、

「私も一緒に行く」

と、控え目な私は久我くんの後をついて行った。

意外にも2人になると久我君は大人しかった。カラオケではあんなに場を盛り上げていたのに、なぜかフッと寂しそうな顔も見せた。

「久我くんは付属の大学行かないの?」

「・・・あの高校から附属行くのなんて落ちこぼれしかいない。皆頭いいから他大目指すのが普通だよ。まぁ、俺の場合は附属の大学に行きたい学部が無いってのも理由だけど」

「へー、、、何学部目指してるの?」

「秘密」

「教えてよ」

「まだ言わない。そっちはなんで附属の短大行かないの?人気あるんじゃないの?」

「私は、、、環境を変えたいのと、ギャル短大は私には合わないから」

「へー、、、とか言って本当はバカなんじゃないのwww?」

「うるさいなー、私はこれでも頭は足りてるの。推薦を蹴って他大を受けるんだから!」

「へー、、、お互い頑張ろうな」

「うん、頑張ろう!」

なんとなく心地いい時間が流れた気がしたので、この後私は久我くんから連絡先を聞かれる事を期待していたが、、、そんなことは一切無く、花火をした後はあっさりその場で別れた。

まぁ、お互い勉強しなきゃなんないしと思い、それからは遊ぶことなく日々勉強に没頭しているうちに、夏休みが終わる頃にはすっかり久我くんの事は忘れてしまっていた。


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