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生きることについて考えた夜


祭りが終わった後の独特の寂しさ。
そんな空気を纏いながら、友人と二人、夜道を歩いていた。

なぜか分からないけれど、
”生きるのは難しい”
自然とそんな話題になり、

「私、生きている理由がないんだよね」
と、彼女は言った。

「でも、死ぬ理由もないんだよね」
と、私は付け足した。

すると、
「分かる。死にたくないから生きてるって感じ」


「みんな同じように考えるんだね」
そういった彼女は悲しく笑っていた。


「でもさ、死ぬのなんか言ってみれば明日でもできるじゃん?もしかしたら明日死んじゃうかもしれないし」

「だから私は生きてみようと思うんだよね」

精一杯の力強さを込めてそう伝えた。

「そっか、そうだね。」
そう答えた彼女の表情を私は見ることができなかった。

どんな顔をしていたのだろうか。

伝わっただろうか。
少しでも伝わっていたらいいけれど。


しばらく歩いたあと、分かれ道がやってきて、次に会う約束を交わして私たちは別れた。


家に帰ってからも、数日経ったあとも思い出す。

あの生きることについて考えた夜のことを。



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