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乳がんになった私 #74「手術直前の誕生日」

11月19日、私の36歳の誕生日。

35歳で乳がんが発覚し、初めて迎える誕生日。

どこかへ出かけたい気持ちもあったが、月末に手術を控えているため極力外出を控えていた。今、体調を崩すわけにはいかない。もしもコロナに感染したら手術は延期になる。



大人にもなれば、誕生日だろうがなんだろうが関係なく朝から晩まで仕事だったり、誕生日らしい(?)ことをするもしないも人それぞれだ。毎年盛大にパーティーをする人もいるかもしれないし、特に何もせずいつも通りの1日を過ごす人もいるだろう。


今回の私の誕生日で、一際張り切っている人物がいた。

母だ。


誕生日当日、母は大荷物で私たちの家にやってきた。

花束、ホールケーキ、食べきれないほどの量の美味しそうな料理。

天気が良かったので、庭でパーティー(?)をすることにした。

私「本当にありがとう!それにしても気合がすごいね!」

母「そりゃあ、今年の誕生日は特別だよお…!!!」


35歳で乳がんだと分かった娘が、無事に歳を重ねることが出来たことは、母にとってきっと特別な想いがあるのだと思う。私の乳がんが発覚してから…特に発覚当初や治療を始めたての頃は、もしも私が死んでしまったら…!と、考えては度々泣いていたそうだ。


私「内田はさ、記念日とかイベントごととか全くこだわらないんだわ。私もそこまで重きを置くタイプではないんだけど。」

内田「だって、毎日が大切というか、1日1日に優劣なんてないし。思い立った時に、どこかへ出かけたり、プレゼントをしたり、気持ちを伝えたりすれば良くない?日にちというものにとらわれる必要がないというか。」

母「言ってることは分かるよ。でもさあ、こうやってイベントに合わせて何かするとさ、しっかり記憶に残るじゃん。記憶ってどんどん忘れていっちゃうけど、この日、こうやって集まってお祝いしたなあって、あとから思い出せるからさ。」

内田「なるほど。」

私「そっかあ、確かにね!」


母の言う通り、きっとこの日のことは忘れない。家の庭で母と内田と誕生日パーティーをした、乳がんの手術直前の誕生日。


歳を重ねるほど、誕生日は自分のお祝いごとというよりも、とにかく親に感謝の気持ちが生まれる。この世界に誕生させてくれてありがとう、という気持ち。でも、もっともっと歳を取ったら…また違う想いが生まれるのだろうか。自分の人生はあと何年なのかと考えたり、これまでの人生を振り返ったりとか…。(私も乳がんが発覚して、自分の人生がいつ終わるのかを考えたりもした)

生きているからこそ、味わえるあらゆる感情がある。

乳がんになったことは、きっと身近な人たちを悲しませてしまう出来事ではあったけれど、これも私の人生の中の大切な経験。大切な心の動き。


36歳になって臨む手術。

とにかく今は体調を崩さず無事にその日を迎えたい。

手術まであと11日。

(#75へ続く)
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