乳がんになった私 #44「国立競技場でのライブ復帰」
8月4日、午後3時半頃に東京国立競技場へ到着した。
イベント出演の前日リハーサルだ。
明日開催される名古屋グランパスのホーム戦に向け、前日から大勢のスタッフの方たちが現地で準備をしていた。
敷地内にイベント用のステージが組まれていた。
楽器を搬入し、セッティング。
暑い…!!!
とんでもない猛暑日だった。
ステージには屋根が付いていたのだが、西日が思いっきり当たる時間帯のリハーサルだった。ステージ上のシンセサイザーの金属部分が信じられない熱さになっていた。楽器が熱で故障しないか心配だった。
心配と言えば、もちろん自分の身体もだ。
真夏の野外ステージ、抗がん剤治療中の身体、自分で言うのもなんだが心配にならないはずがない。
近年の日本の夏は、健康な人でも熱中症に気をつけなくてはならない暑さだ。この日のために私はあらゆる熱中症対策グッズを準備していた。衣服がひんやりするスプレー、首にかける保冷剤 (ネッククーラー?) 、首にかける扇風機、冷感サラサラシート、塩飴など…。
私も、内田も、スタッフの皆さんも全員汗だくでリハーサルを行った。サウンドチェックから、本番の流れで曲の確認。
楽器も身体も問題なくリハーサルは終了。
自分の身体が心配と言ったが、この日、私はすこぶる体調が良かった。治療の副作用も全く出ていなかった。
宿泊先のホテルに移動し、シャワーを浴び、夕食は美味しいイタリアンを堪能した。(ホテル近くでたまたま入った店)
暑さでへとへとではあったので、22時には眠りについたのだが、夜中1時頃にパッチリ目が覚めてしまった。明日のためにしっかりと睡眠をとっておきたかったので、睡眠導入剤を飲んで再び眠った。
8月5日、試合当日。
私たちはお昼過ぎに現場入りした。
国立競技場には、すでにものすごくたくさんのグランパスファミリー (サポーター) が集まっていた。
そして、昨日と同様に物凄い暑さだった。
もうすぐライブの時間。楽屋から移動し、ステージ袖で待機。
私は緊張していた。
体調は良かった。もう身体の心配はしていなかった。
乳がんを公表してから、初めて人前に立つ。ステージに立つ。その事実が私を緊張させた。
ライブ中、どんな気持ちになるだろう。やはりライブは始まってみないと分からない。
時間が来て、ステージに上がった。
応援歌を担当させてもらっているということは、音楽でチームにパワーを与えるという役割だ。
いつも、その想いで曲を作り、歌っている。
この日も音楽でパワーを届けるために魂を込めて歌い、演奏し、叫んだ。
だが、いざステージに立ってみると、逆に、また皆さんから物凄いパワーをもらってしまった。こんなにも、こんなにもたくさんのパワーを…。
無事にライブは終わった。
やれた、やれたぞ!
乳がんの治療中でも、ライブがやれたんだ!!!
この日、曲数は2曲と短いステージだった。きっと長時間のライブはさすがに体力的に厳しいと思う。だけど、2曲でもステージに立てて、歌えて、とにかく嬉しかった。(2曲だがライブアレンジで長めにはなってたけどね)
ステージに立つ機会をくださったグランパスのスタッフの皆さんに感謝。思ったよりも早めのライブ復帰を果たすことが出来ました。
音響スタッフ、ステージスタッフの皆さん、そしてQaijffのスタッフ陣に感謝。皆さんのサポートがなければライブは成り立ちません。
そしてそして、試合前にライブに集まってくれた皆さん、本当に本当にありがとう!!!
名古屋グランパス、28年ぶりの国立競技場でのホーム戦、結果は勝利!最高だ。
あぁ、やっぱり、治療中も音楽を続ける決断をして良かった。
(#45へ続く)
---------------------------------
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?