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乳がんになった私 #63「3人旅-前編-」

10月9日、旅行当日はあいにくの雨だった。

母と内田と初めての3人旅。乳がんになったからこそ実現したこの旅行。

早朝、内田の運転で長野県へ出発した。

旅のプランは全て母任せ。まずは母が行きたいと熱望していた善光寺へと向かった。

音楽、バンドはもちろん好きでやっていることなのだが、当たり前に、休まなければ疲れる。“楽しい”=“楽(ラク)” ではない。物凄く頭を悩ませるし、真剣だからこそ内田と意見がぶつかったりもする。自分たちの会社を設立して音楽をしている私たちは、全てが自分たち次第。休みは決まっていない。毎日仕事をしようと思えば出来るし、休もうと思えば休める。そう言った意味では、乳がんになり治療をしながらも音楽を続ける上では融通が効く。体調が辛ければ誰の許可も無く休めるし、内田が毎回と言って良いほど病院に付き添いに来てくれるのは、自分たちでスケジュールの調整が出来ることも大きい。(何より内田の優しさだが)

ただ、私は休むということが物凄く苦手だ。

前もって旅行の計画をするなんて、もう何年もしていない。もしそのタイミングで何かバンドの予定が入ったら…とか、制作を進めなきゃ…と考えると無理。いつもバンドを優先してしまう。(急に思い立って休みにして出かけることはあるんだけど)

なので今回、母が旅行を提案してくれたおかげで、私たちは前もってその日程を旅行に行くと決め、キッパリと休むことに成功した。


お昼前に目的地に到着した。

母がリサーチしていた蕎麦屋で昼食、そして善光寺で参拝、境内を余す所なく見尽くし、土産も買い、食べ歩きをし、その頃には雨も止んでいた。


宿泊先は諏訪湖のほとりのホテル。

夕方にホテルへ到着し、食事の前に温泉へ入ることにした。

髪のない頭を隠さずに大浴場へ入るのは勇気が出ず、私は持参したサウナハットを被って入ることにした。

そして、なんとここにはサウナがあった!

乳がんになる以前は、しょっちゅうサウナに行っていた。そう、私はサウナーだった。疲れが溜まっては、サウナに行ってととのう。寝ても覚めてもぐるぐると考えすぎる私の頭を “無” に出来るのはサウナだけ!と思っているほど、私のメンタルにはサウナが必要だったし、サウナに行くとバキバキに固まっていた身体もラクになるし、ついでに肌もすべすべになるし、さらにはサウナ後のごはんは最高に美味しい!良いことだらけ!

乳がんが発覚してからは、抗がん剤で髪が抜けたのもあるし、サウナは心臓に負担がかかるのでどうなんだろう…と思い、行けずにいた。ちなみに治療がスタートする前に主治医にサウナに入って良いかを尋ねたりもした。返答は、ダメってことはないけどあまり身体に負担がかかることは控えた方が良いかもね、という感じだった。

ダメってわけではない。無理をしなければ良いんだよな。

私は “ととのい” を求め、約8ヶ月ぶりにサウナに入ることにした。

(#64へ続く)
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