60歳になったことで、節目に集まろうかという楽しい会がいくつか催された。5月3日、大学の同級生たちにうちの姉も加わり、絵画の先生のアトリエにおじゃましようと言う計画が持ち上がった。
　前々から先生のアトリエに行ってみたいと思っていた。
　住所が英語でストロベリーフィールズなのが、なんとも微笑ましい。
　先生、もしかして、名前で住む場所決めた？と思ったぐらい。

　先生は、私たちが大学に入学すると同時に赴任した。自分たちより10歳年上の先輩みたいな存在。描いている絵はテンペラ画で、先生の製作する銅版画や彫刻にも中世のヨーロッパのような雰囲気が漂う。
　それで、先生のヘアスタイルは内巻きのちょっと長めのマッシュルームカットだったので、私は勝手に、フランシスコ・ザビエルカットだと心の中で、命名した。中世の教会の牧師カットだと思っていたのである。
　数年前、NHKの朝ドラの「ひよっこ」を観た時に、主人公の叔父さんがビートルズにかぶれていて、先生と同じ、ヘアスタイルだった。

　なに？あれは、ザビエルではなく、ビートルズカットだったのか！

　たしかに10歳年上の先生は、ビートルズの波をもろにかぶった世代である。だから、先生の住所のストロベリーフィールズは、ビートルズの歌にもあるフレーズで、そんな住所に建っているアトリエに憧れていたのだ。

　こげ茶の木が重なって作られているシンプルな外装。
　出迎えてくれた先生と挨拶をかわし、
　飲み会の会場である奥のアトリエに進む。

　天井まで4メートルのがらん、としたアトリエが現れ、大きなテーブルにお皿が並べてあった。最後の晩餐で、12人、並べそうな木の大きな食台。

　かっこいい！かっこ良すぎる（　＾ω＾）・・・。

　しかも周りは先生の作品だらけで、ここを訪れただけで、一つの見ごたえのある個展を観たような気持ちだ。

　先生の作品が美しいが、美しい作品が置かれた空間がまた美しい。

　広さは20畳以上あるのかな？
　先生曰「天井の高さは4メートル、窓の高さは3メートルと決めていた」
　と言う。

　それか、その空間の大きさか。

　先生は、我々に会った途端、いろんな話をマシンガントークで話し始め、学生時代に戻って、我々は講義を聞き始めた。
　しかし、もう20代の学生ではない。
「先生、喉が渇きました！」と発言して、みんなで乾杯することにしたw。

　そして、先生のお話はとても面白かった。

　やはり、我々の先を生きる人。
　最近、考えたことをぶつけると、即座に答えが返ってくる。

　今は自分が昔作った銅版画の版をひたすら刷っているのだと教えてくれた。「体力、勝負なんだよ」先生が見せてくれた21歳の時の版画は、まるで老成していて、今の作品とほとんど変わらない。
「この時の、どうやって絵を作っていっていいのかわからない試行錯誤していた感じ、すかんとした素直さがあるね。純粋だよ。
　今の頭の中であれこれ考えた絵と違う。刷りも下手だけど、それがかえって味があってよかったりしてね」

　自分自身も、60歳になってみて、やりたいのは、18歳の時、描いてた漫画かよ！と思ったが、先生も、21歳から、いや、それ以前から、ずっと、先生だったんだなあ。自分の稚拙な作品と、先生の老成した作品と比べるのは、たいそうおこがましいが、小さな共通点を見つけたことがまた嬉しかった。
　しかも、私も今、美容院の先生に任せたら、なぜかマッシュルームカットになっていて、同級生から、「どんどん、先生に似てくるな！」と言われているところである笑。共通点2つ目。

「60歳になって、シゴトでやり残したことはないか考えたら、なぜか、漫画を描くことでした。今日は私の漫画を持ってきました！先生、是非、読んでください！」
「おおそうか、やりたいことは、漫画だったか！君の原点だね、きっと」

　後日、美味しそうな料理や私が嬉しさのあまり先生に抱きついたりしている写真（←超、迷惑かけた予感（　＾ω＾）・・・）、あねと2人で踊っている動画が同級生から送られてきた。似顔絵描きをやっている幼馴染からである。（酔っぱらっている人間の写真を撮らないで欲しい笑）

07:07 0  昨日はありがとう😊
　　　　あやのんとあねさまのダンスが魅惑的すぎです。
　　　　超芸能姉妹ですね！
　　　　また、いつか、先生宅へ行きましょう！

　とあった。あれを魅惑的と言うやつもどうかと思うが、画家のアトリエで踊っている2人の姉妹を見て、ダンナが言った。
「津軽のちゃかし（←お調子者）の血が、しっかり流れているな」

　私の中に、ときめきの片付け祭りの後の、理想の部屋のイメージが、おぼろげながら確定した。
　画家のアトリエのような美しい空間を目指して。

　ときめきの片付け祭り、行こう(⋈◍＞◡＜◍)。✧♡