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吉本ばなな『TUGUMI』前編

 今回ご紹介するのは、吉本ばななの『TUGUMI』です。

 これはねー、マジでいい小説ですよ。ほんと。

 吉本ばなな先生の書く小説は、どれも読みやすく、ストーリーも理解しやすい。それでいて深い。そして深いのに、自然体でまったく無理をしていない。一本筋でスーっと読めちゃうんですよねー。

 さっそく、まずは『TUGUMI』のあらすじを。

 東京の街に住む女子大生の主人公『白河まりあ』は、以前住んでいた美しい港町に夏休みの期間、帰省することに。そこで久しぶりに会った、いとこの『つぐみ』の変わらない様子に懐かしさを覚える。しかしとある事件をきっかけに『つぐみ』と『まりあ』の関係の深さがさらに明らかになっていく。

 この小説の読みどころはズバリ『つぐみ』と『まりあ』の関係性ですね。 

こ の物語の最重要キャラクターは、やはり題名にもなっている『つぐみ』でしょう。

 この『つぐみ』。どんなキャラクターなのかというと。

 まっすぐ伸びた美しい黒髪で、一重の大きな瞳には長いまつげがはえているという、非常に整った顔立ちの地元1の美少女。そしておまけに身体が弱く、ちょっとしたことですぐに寝込んでしまうという、まさに「儚くも美しい」を体で体現したようなキャラクターなのです。

 なのですが。

 その容姿とは裏腹に、性格はものすごく悪い。

 病弱なのをいいことに家族に悪態を散らしながら部屋の本棚をひっくり返すわ、せっかく作ったご飯はちゃぶ台返しするわ、近所の犬はいじめるわ、なのに彼女の家族は菩薩のように優しいひとたちだからそれに涙を飲んで耐えていると「おまえらあたしが今夜ぽっくり逝ってみろ。後味わるいぞ~!」とニヤついて吐き捨てるくらい口も悪い。

「ケーキを買ってきたからみんなで食べましょ」と母親が言っても「団欒なんてヘドが出るほど嫌い」とか言っちゃって、ひとりケーキをもって部屋に引っ込んでしまう。そんな子です。

 主人公の『まりあ』は、まさにどこにでもいるようなふつうの女子大生で、しかし幼いころから『つぐみ』の素行の悪さを体験しているので彼女がどんなに突拍子もないことをしでかしても大して驚きません。『つぐみ』になにか言われても、あーそうなのね、とスルースキルが仏の域に達している。

 物語は、おおむねこの二人のやりとりで進んでいきます。

 とにかくこの二人の対比が非常に面白い。

 『つぐみ』の家族(主に彼女の母と姉)は、『つぐみ』の悪行にいつもいつも耐えており、しかも彼女が病弱で医者から「いつ死んでもおかしくない」と言われているものだから、どんなわがままを言われても一種の悟りを開いてしまったかのように「あきらめている」状態なんですよね。

 けれど、主人公の『まりあ』だけは、いこと同士ということもあり、ほどよい距離感で『つぐみ』と接することができる。

 わがままで、人でなしなところがある『つぐみ』ですが、彼女は彼女で「自分がいつ死ぬかわからない」もどかしさを持っている。そのエネルギーが数々の悪行を起こしているということが読んでいて非常に伝わってくるんですよね。


 さて、主人公『まりあ』が東京の大学へ進み、一時は離れ離れになった2人ですが、夏休みの期間、『まりあ』が一時帰省します。

 この物語はやや中盤まで話が過去に遡ったりして時系列が前後しますが、大元の話は『まりあ』が夏休みに帰省したところで展開されます。

 『つぐみ』と『まりあ』にとって、いつもと変わらないはずの夏が、『とある事件』をきっかけに、忘れられない夏になっていくのでした。

 ということで前編はここまで!

 もう少しつっこんで知りたい!という方は、ぜひぜひ後編も読んでいただきたいです!

 夏休みの間に2人の間におきた『とある事件』とはいったいなんでしょうか!?



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