雨宮崎

羞恥心は人を成長させるとはよく言ったもので、松本人志が「あの人になりたい」ではなく、「…

雨宮崎

羞恥心は人を成長させるとはよく言ったもので、松本人志が「あの人になりたい」ではなく、「あの人にはなりたくない」と思え、という発言には、地雷を踏まないように、なおかつ思いきった道を進めるヒントが隠されているような気がします。 こんにちは。綾坂茂吉です。

マガジン

  • 気に入った音楽で小説を書く

    個人的に気に入った曲に、ちょっとしたショートストーリーを書いてみる、というのを始めてみました。日本の曲や外国の曲もあり、あくまでイメージ主体で自由に書いていこうかと思っています。

  • 超短編

    とある短編応募サイトに、作った短編を応募しようと思ったら、『定期購読者のみ応募』とあったので、だったらこちらに載せようと思いマガジンを作った次第です。  テーマは自由。読めばどれも面白いと思いますよ。

  • 綾鷹茂吉の、ゆる~く『小説書評』

    小説書評というよりは、好きな作品の『ファンブック』というような立ち位置ですね。本紹介をゆるーくやっていくという形です。 読みやすさをメインに、わたしの視点でわかりやすく解説していき、作品の「おいしい」ところをピックアップしてご紹介していこうと目論んでおります

最近の記事

【超短編】時速約1万キロ以上の速さで飛翔する『ヒュウガトリ』の速度について考えたときの、僕らのその哀れな秒速について。

つまりこうしている間に、僕らは1秒も遅れてしまっている。

    • 超短編『ヴィンテージカーにエアコンを』

       僕らの未来に曇りが見えた時。別れの兆しが見えたとき。  そんなとき、ヴィンテージカーに乗れば最高さ。  けどミラーは割れ、ハンドルは外れかけ、タイヤは死んでいる。 『ドライブに行こう。海に連れて行ってあげるよ』  キミが落ち込んでいたら。あるいはキミがひどく不安な午後を迎えていたら。  そんなとき、ヴィンテージカーに乗れば最高さ。  でも1kmごとにエンストするし、エアコンなんてもちろんない。 『早くこっちにおいでよ』  パトカーのサイレンの音。ガラス越しには

      • ランドリー

        これは例えばの話だけど、たまたま入ったコインロッカーで喧嘩してるカップルがいて、女の方が「もうあなたにはうんざり!別れる」「わたし、この人と付き合う!」と突然、指差されたのが僕だったとしよう。  そうして僕らの交際はスタートした。僕は彼女の愛が乾かないように必死になった。誕生日はサプライズをし、記念日には必ず贈り物をし、しゃべりすぎず、黙りすぎず、愛しすぎず、冷めすぎず。  けどそうやってうまく立ち回ったとしても、やはり愛は徐々に乾いていってしまう。  ドラム式の乾燥機に、愛

        • 【短編ライト文芸】『人生の針』

          「あなたが改善するべきところはまず3つあります」 恋愛というものは大抵、どんな場合においても遠距離みたいなものである、といったのは誰だったかな。  片思いでも、両思いでも、心の距離はいつまでも縮まらない。本当にその通りだ。  そんなことない、わたしたちは通じ合っている、と思っている人。では試しに相手がいまどうしたいか当ててごらんなさい。あるいは、なにをしたくないか当ててごらんなさい。なにひとつ通じ合っていないことがわかるから。 「もう一度いいます。あなたが改善するべき

        【超短編】時速約1万キロ以上の速さで飛翔する『ヒュウガトリ』の速度について考えたときの、僕らのその哀れな秒速について。

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          7本
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          3本
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          5本

        記事

          【ライト文芸短編】『夏夜のマジック』

           きみを待っている間、ぼくはひとり観覧車に乗って時間をつぶそうと思ったんだ。  その日は、切なく誰かを待つには最適な夏の夜だったよ。  チケットを買い、係員の指示のもとに、不安定なその乗り物に乗り込む。  観覧車のなかは思ったほど暑くなくて、金属のきしむ音がぼくの孤独を増長させた。  そして少しずつ地上から離れていく。  『心と時間』を地上に置いたまま、ぼくは地上から離れていく。  その日の空は星は見えなかったんだけど、地上には星がいくつか見えたから、そっと見下ろ

          【ライト文芸短編】『夏夜のマジック』

          猫を棄てて、父を放ろう。

           『村上春樹』と名がつく書籍はけっこうたくさん読んでいる方だと思う。  本人の著書もそうだし、批判本や解説本、ファンブックについても然り。  村上春樹氏の解説本でよく聞くのは、氏には『父が不在』なのだという。これは何も作中に『父』と名がつくものが出てこないというわけではなく、物語の象徴としての『父』、システムであったりとか、悪の元凶であったりとか。物語を包み込む大きな存在、抗えない構造、などといった認識をわたしは持っている。  とはいえ、なにも氏が『父』を語らないわけで

          猫を棄てて、父を放ろう。

          アオミ

          ”冷えたネックレスをつけて彼の暑さが和らいでいる間は、彼は機嫌がよくなり、その1日はわたしを殴ることはしなかった。” ”そうやって冷蔵庫がキレイになると、彼は機嫌よくなり、その一日はわたしを殴らなかった。”            ~本文一部抜粋~ 悲しい夢を見た気がする。   でも、どこか心が広くなって、軽くなったような気がする。    ぼんやりした頭で布団から這い出たわたしは、台所へ行き、冷蔵庫の中の冷やしておいた飲みかけのカフェオレをのどに流し込んだ。  ひんやり

          【短編】女は変わる

           左の手首に一本、まっすぐ引かれた傷がある。   いったい、いつこんな傷ができたのだろうか。  わたしは生まれてこの方、手術をしたこともないし、傷を縫ったこともない。  カッターらしきもので、手首の関節の部分から、肘までまっすぐ引かれている。  この傷はいったい、なんだろう。  そういえば、とわたしは思った。 『そういえば最近、わたしは甘いものを食べていない』  手首の傷を眺めていたら、そんなことが頭に浮かんだ。  最近、甘いものを食べていない。  以前のわたしは、食事を

          【短編】女は変わる

          【短編】リスミー

           いつしかわたしは、ある種の切なさがなければだれかを愛することができなくなってしまった。  そんな風にはなりたくなかったのだけれども。  そんな風に自覚するのは嫌だったんだけれども。  彼と一緒にいてうんざりすることのひとつは、間食が多いことだ。  例えば彼は朝ご飯を食べない。起きて数時間は頭にスイッチが入っていないせいか、何も食べる気にならないらしい。そして昼食前になったらなにかしら彼には甘いものが必要となる。ドーナツやらパンやら。そして、昼食は昼食として別に食べるのだが

          【短編】リスミー

          オーヘンリー『アラカルトの春』

           オーヘンリーは短編小説の名手で、その昔、ちょっとした家にはオーヘンリの短編は置いておけ、みたいな風潮が流れていたこともあるくらい有名な作家さんです。  日本で言う『星新一』みたいな立ち位置ですが、歴史はオーヘンリの方がはるかに古いですね。  オーヘンリーを好きな人には申し訳ないのですが、短編の全体的には『ふ~ん』って思えるような作品が多いですw先が読めてしまうというか、ありきたりというか。  まぁそれはしょうがないですね。19世紀の作家さんですから。当時は新しくて刺激

          オーヘンリー『アラカルトの春』

          マスカットと白いお皿

           マスカットと白いお皿はとてもよく合うと思う。   ところでわたしの甘い『昨日』について話そう。  昨日の朝。とてもよく晴れていて少し窓が開いていた。寒すぎず、強すぎない風が心地よく流れてきた。  キレイな2DKのマンション。清潔でモダンで、機能的。都会の真ん中にあるから車は必要ない。オートロックだし、注文した荷物を仮置きできる収納ボックスもある。家賃が高いマンションではお馴染みの受付嬢がいる。  部屋の中はとてもシンプルな家具で構成されている。白くて大きなカーペット

          マスカットと白いお皿

          ところによって、

           そういえば明日は雨だという。  車のカーラジオが教えてくれる天気予報が、無意識にハンドルを握っている俺にそう教えてくれる。高度な反射能力で何も考えずに運転している俺にそのラジオは語りかけてくる。  明日は雨でしばらく続くでしょうと。  それからなんとなく、自分が車を運転していて、今は仕事が終わって家に帰っている途中なのだと自覚が持てるようになってきた。ここ最近はその高度な反射能力で日々をなんとなく過ごしているだけな気がして、久しぶりに俗世に帰ってきたような感覚になった

          ところによって、

          吉本ばなな『TUGUMI』後編

           後編へ進んでいただいた方、本当にありがとうございます!  書いたものが誰かに読まれるというのは、非常にうれしいものですね。  では引き続き小説のご紹介をしていきたいと思います。  まずはあらすじのおさらい。前回とは違った書き方をしていますが、読み飛ばしても大丈夫ですよ!  どこにでもいるふつうの女子大生『白河まりあ』は、子供のころに住んでいた港町に夏休みのあいだ帰省します。そこでいとこである『つぐみ』と再会。彼女の変わらない姿に東京での生活と対比させながら、徐々にい

          吉本ばなな『TUGUMI』後編

          吉本ばなな『TUGUMI』前編

           今回ご紹介するのは、吉本ばななの『TUGUMI』です。  これはねー、マジでいい小説ですよ。ほんと。  吉本ばなな先生の書く小説は、どれも読みやすく、ストーリーも理解しやすい。それでいて深い。そして深いのに、自然体でまったく無理をしていない。一本筋でスーっと読めちゃうんですよねー。  さっそく、まずは『TUGUMI』のあらすじを。  東京の街に住む女子大生の主人公『白河まりあ』は、以前住んでいた美しい港町に夏休みの期間、帰省することに。そこで久しぶりに会った、いとこ

          吉本ばなな『TUGUMI』前編

          村上春樹『ノルウェイの森』後編

          前編を読んで後半にきていただいた方、本当にありがとうございます。 さっそく解説に入らせていただきます! まずはざっくり前回のおさらい。読み飛ばしても全然大丈夫ですよ! 高校生のころに、親友「キズキ」を自殺でなくした主人公「ワタナベトオル」は、その虚無感から地元を離れて東京の大学へ進学。そこでかつての親友の恋人「直子」と再会します。次第に仲良くなっていき、ちょっとした恋人同士のような関係になったふたりは、直子の誕生日に彼女の部屋でふたりだけのささやかなパーティを開きます。

          村上春樹『ノルウェイの森』後編

          村上春樹『ノルウェイの森』前編

          今回、ご紹介するのは村上春樹の『ノルウェイの森』です。 小説書評といっても、「この小説はこう読め!」とか「こういう解釈をするべき!」といったそんなに気難しいものではなく、どちらかといえば個人的な『ファンブック入門編(好きになるための布教本)」みたいな立ち位置であるといえるでしょう。 なのでわりとざっくりとした説明の仕方をしちゃいます。 そして小説の内容の「おいしい」ところを紹介していきたいとおもっております。 それではまず簡単なあらすじを。 東京の大学に進学した大学

          村上春樹『ノルウェイの森』前編