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『景観の邪魔』の話。あるいは、人は住んでいる土地を愛さずに生活が出来るのかどうかについて。

こんな家嫌いだこんな街嫌いだ深夜に泥酔した大学生のわめき声もコンビニで頻繁に会うエロ本コーナーの番人のようになっている汚いおっさんもなんべん追い返しても来るNHKもなにもかもなにもかも嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ今すぐ出る今すぐ出るこんなところ。
自分の部屋の前で深夜1時だったか2時だったか30分以上、オーバードーズでもしたんじゃないのかという変則的な暴れ方で扉をどんどんどんどん叩いて延々と甲高い声を叫び続ける男が、警官4人に両手両足ガッチリ掴まれてパトカーに無理矢理押し込まれるのがあと5分遅れていたら、さっき電話をかけて起きていることを確認した(叩き起こしたとも言える)歩いて10分の友人の家に脇目も振らずに駆け込んでいただろう。幸いにもその手にかけた網戸を乱暴に閉じて怪我を覚悟で塀を乗り越えるハメには陥らず、その網戸を静かに閉めて床に就いたのが深夜4時ごろ、目がギンギンでぜんぜん眠れず、寝不足のままに朝、不動産屋に衝動的に直行した。
家の扉には男が暴れた跡なのかもともとあったのに気づかなかっただけなのか、小さな傷がついていた。
そして江古田から引っ越したのが大学を卒業してすぐのこと。
今の家は気に入っている、それでもやっぱり数年住んでいるといいことばかりは起きない、やっぱり悪いことも起きる。
まだ笑い飛ばせる範囲ってだけだ。

富山県出身だとバレることがほぼない。そもそもうまく方言を喋れないからだ。富山弁はのんびりとした伸ばし棒が求められるような発音で、僕の喋り方と根本的に馴染まず、地元にいた頃から標準語を交えて話していて、あとから来た転校生のほうが富山弁に馴染むのが早かったから、僕のほうが転校生みたいだなんてからかわれた。言い得て妙だと思ってヘラヘラ笑っていたが怒るべきタイミングだったのだろうか。

土着性がないのがコンプレックスだった。土地を愛する心が全くないわけじゃないと思うのだけれど、誰にも証明出来なかった。土地への愛着を語ることはとても難しい。

『景観の邪魔』にはそんな複雑な気持ちがギュウギュウに詰め込まれています。リーディング公演、ご来場お待ちしてます。12月9日(日)午後6時開演です。オノマリコさんの『Q体』と同時上演です。

なんだこの宣伝。

http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2018/10/playwriter's-ws1.html

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