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なぜ独立して、本を書いたのか?

アートディレクターの八木彩です。
2023年11月に広告会社の電通から独立し、ARENCE(アレンス)という会社を作りました。また、2024年1月10日に、
『デザインを、経営のそばに。』(かんき出版)
という、ブランディングデザインの本を出版します。

私自身は、まだまだ知名度が低いので、本をできるだけ多くの人に手に取っていただくために、noteに記事を書くことにしました。本の内容よりも個人的な内容なので、本の導入として読んでいただけたらと思います。


電通では何をしていたのか?

私は、アートディレクターとして2009年に電通に入社しました。今年は2024年なので、約15年ほど働いたことになります。入社した当時は、広告会社のアートディレクターとして、広告の企画制作を担当していました。

若手の頃は、声をかけていただいた仕事に全力で取り組む日々でしたが、徐々に、自分の得意・不得意がわかるようになっていきます。
具体的には、販促やバズ系の施策のような、瞬発力が求められる仕事よりも、ブランディングや商品開発のような、じっくり向き合う仕事の方が「どうやら相性がいいぞ」と感じるようになっていきました。

そこで、2020年ごろからは、ブランディングデザインを専門にすることを社内で宣言して、広告会社のアートディレクターとしてはちょっと特殊な働き方をするようになっていきました。

具体的には、クライアントに常駐して、クライアント内のデザイナーと連携し、ブランド全体を見る役割を担うようになりました。この体制が始まってからは、経営者との距離がとても近くなり、「デザインは、日本の企業にもっと役立つのでは?」と考えるようになっていきます。このような気づきが、独立や出版へ繋がっていきました。

当時私が関わっていた仕事の一つを、電通報に記事化してもらっているので、よろしければこちらもご覧ください。
『ブランドのコアにクリエイティブを。アートディレクターが単身で内部に入ったFUJIMIリブランディング』(電通報)

https://dentsu-ho.com/articles/8491

なぜ独立したのか?

「電通を辞めます!」といろんな人に報告した時に、「どうして?」と必ず聞かれました。私が知る限り電通という会社は、たくさんの学びが得られるとてもよい環境でした。でも環境の良し悪しに関係なく、独立するかどうかは、入社当時からうっすら考えていたことでもありました。では、「なぜこのタイミングを選んだのか?」というと、理由は大きく3つにまとめることができます。

①やりたいことが明確になった
ブランディングデザインを専門にするようになり、自分のやりたいことがとても明確になりました。今後は、「ビジョンを持った経営者の思いを可視化して、ビジネスを成功に導くこと」をやっていきたい、と考えています。

この目標を叶えるためには、「広告会社」の傘下にいるよりも、小さくても「ブランディングデザインの会社」という自分の旗を立てた方が近道ではないか、と考えました。

②同じ思想を持ったクライアントと出会いたい
電通という大きな会社にいる以上は、個人で情報発信をしていくことに限界がありました。特に、私自身がどういう理想を持ち、何を重視しているか、というような、「思想」については、様々なクライアントと向き合う手前、発信することが難しい状況でした。

ですが、経験を積むにつれて、思想に共感できるクライアントと出会い、自分自身も愛をもって付き合える仕事をしたい、という思いが強くなっていきました。

そのためには、自身の思想を整理し、発信する必要がある。さらに、自分の会社を持ち、自分の言葉に自分で責任を負った方がよいのではないか、と考えるようになりました。

③一生デザインの仕事を続けたい
デザインの仕事は、誤解を恐れずにいうと、若い人の方が有利な仕事だと思います。よいデザインを作るためには、体力も必要ですし、時代を捉える感性も必要です。今と同じ集中力と体力で仕事を一生続けることは、私もきっと難しいでしょう。もちろん、年齢を重ねることで得られる知識や、経験があることは間違いないのですが。

このように考えた時に、一生デザインの仕事を続けるためには、思想を共有できるクリエイティブチームをつくることが必要なのではないか、と考えるようになりました。いずれは、私が目指すブランディングを叶えられるチームを自社に持ちたいとも考えています。

チームを持ち、育てていくためには、自分の会社をつくり、採用にも自分で取り組んだ方がよいのかも、と思うようになりました。

これら3つが、電通を辞めて、独立した理由です。私は1985年生まれなので、今、38歳。もうすぐ40代という新たな節目が見えてきたタイミングで、うまくいくかはわからないけど、「えいっ」と、起業にチャレンジしてみたのです。


なぜ本を書いたのか?

このように、自分の考えを発信をするのであれば、noteでも十分な時代です。なぜわざわざ、時間をかけて長い文章を書き、本という形を取ったのでしょうか。理由は大きく2つあります。

①ブランディングデザインへの理解を共有したい
本を書く前の私は、様々なブランディングの仕事に携わってきたものの、自分のブランディングデザインのプロセスを可視化することができていませんでした。本の形にまとめることで、自身の暗黙知を可視化したいという狙いがありました。

また、ブランディングデザインは、様々なプロセスが必要なのですが、プロジェクトを始める前に、クライアントやチームメンバーが、プロジェクトの流れをイメージすることができない、ということが多々ありました。また、ブランディングデザインに関わる言葉や概念も、人によってバラツキがあり、認識を揃えることが難しいことがよくありました。

本にまとめることで、ブランディングデザインの考え方とプロセスを全員で共有できれば、これまでよりもスムーズにプロジェクトに取り組むことができるだろうと考えました。

②同じ思想を持ったクライアントと出会いたい
デザインの世界は、閉鎖的な業界です。ですが、今の日本の企業にはデザインの力が必要だということも事実です。デザインとビジネスの間にはまだまだ壁があると日々感じています。

デザインについての悩みを抱えておられる経営者の方や、ビジネスパーソンの方に出会うために、私自身が閉鎖的なデザイン業界の外へアプローチし、デザインを言語化して伝える必要があると考えました。

そのためには、デザインやクリエイティブ業界内での情報発信ではなく、ビジネス書の棚に並び、経営戦略の選択肢の一つとして、デザインを認識してもらう必要があると考えました。

この度、かんき出版さんから本を出させていただくことになったのも、広告やデザイン系に強い出版社ではなく、ビジネス書に強い出版社から本を出したい、という狙いがありました。


一冊の本で、何が変わるのかは私も全く予想できませんが、この本を通じて、小さな変化の種を蒔くことができたらいいなと思っています。

もしよろしければ、ぜひ本を読んでいただけたら嬉しく思います。
ご意見・ご感想もお待ちしております。

『デザインを、経営のそばに。』(かんき出版)


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