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息をするように嘘をつく彼女の正体「令嬢アンナの真実」Netflixドラマ感想

何の前情報もなしに、Netflixのリミテッド・シリーズ(オリジナルドラマ)「令嬢アンナの真実」全9話を視聴した。NYの上流階級を欺いた罪で拘束され、裁判を控える“ドイツの令嬢”アンナ・デルヴェルの物語だ。

各話の冒頭には、こんなテロップが挿入される。

「この物語は真実である。完全なでっちあげ部分を除いて」

最初は信じて、実話として見た。ストーリーが進むにつれ、「これは事実と見せかけたフィクションに違いない」と意識がかわり、最終話近くに一緒に視聴していた彼から「そう言えば、現実のアンナが…」という話を聞いておったまげた。

虚実ないまぜになった作品にしろ、現実にアンナその人はいるのだ。

アンナ・デルヴェル、26歳。彼女はドイツの令嬢を語り、富裕層の人々や銀行、ホテルを騙して“無銭豪遊”な生活を送る。彼女の派手な暮らしぶりに、まさかお金を持っていないなんて誰が信じるだろう。

罪の意識はなく、息をするように嘘をつく。何でもラベルを貼ればいいというものでもないが、一般的な精神では考えられない肝っ玉ぶりだ。

アンナにとって、日々の豪遊がゴールではない。アートな財団を立ち上げるのが夢で、ある意味では手段を選ばず“本物”になろうとしていた。銀行の融資が成立した暁には、詐欺師ではなく起業家として名を馳せていたかもしれない。

“ミレニアル世代の詐欺師”、“おしゃれ詐欺師”アンナ・デルヴェル。さらにネットで調べて驚いたのが、女優ジュリア・ガーナーが演じるドラマ版のアンナと、現実のアンナがそっくりということだ。服装や髪型を似せて、画像で切り取られた一瞬にしろ、思わずぞくりとしてしまう寄せかただ。

いかにして26歳の若き詐欺師は、本物の富裕層たちを騙したのか? 華美で、大胆で、歪なアンナの物語は、限りなく現実に近い非日常に連れていってくれる。

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