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9/24、フィールドワーク実践〜メッシュワークゼミ#4〜

目黒にて、初めてのフィールドワーク。

実施前

実施前のメモをそのままコピペ。

【興味があるテーマ】
・人と人との距離が近い時のふるまい
(自分と他者の境界線をどこに引いているのか)
・シェアハウスに住んでいる人の人生哲学
(人生を通してどんな風にありたい人が、シェアハウスに住むのか)
・そのコミュニティにおける良い(とされる)振る舞いは何か。
(どのようにその振る舞いを学習していくのか)
・ある場で自分の存在意義を確立させている人はどんな人か

【それに活かされそうな、つながりそうなもの】
・人との距離が物理的に近くなる場所
・“わざわざ”行く場所(しかもそれが人を目的としている場所)

(memo)
常連さんのコミュニケーション
なぜその人はその場所の常連になっているのか。
どうやって常連らしさが生み出されているのか。
そこでの関わり合いにどのような特殊性が生まれているのか。

将来的にはシェアハウスの住人を対象にしたいので、今回もシェアハウスのような場所と、その住人を目黒というフィールドの中に見出したかった。

シェアハウスは、一人暮らしや実家暮らしが一般的な中でわざわざ人との距離が近い暮らし方を選ぶ人が集まっている場所。目黒のフィールドで考えると、他にたくさん選択肢がある中、人との距離が近くて、コミュニケーションをとる場に通っているお客さん=常連さんが似ていそう。


雀荘、町中華、小さい八百屋さん、スナック、と目黒からの道中で眺めてきた中で、「美容院」を選びたい!となりました。髪、切るか。。。

美容院は、サービスを受ける時間が長いし、鏡を通して美容師さんと話すことも多いので、人を理由にして選ぶサービスと言えそう。そしてたくさんある分、自分に合った場所を選んで通う人も多い。

そして美容院の中でも、技術力やレビュー評価が高くなかったり、人やコミュニケーションの魅力を自ら押し出している場所のほうが、人を理由にしているお客さんが多そう。という基準で2軒選び、調査をしてみました。

調査対象

人を理由にして美容院/床屋に行っていそうな常連さん。

(彼らに対する問い)
なぜその人はその場所の常連になっているのか。
どうやって常連らしさが生み出されているのか。
そこでの関わり合いにどのような特殊性が生まれているのか。


実施後

そもそも、常連さんには出会えなかった。。ので、調査対象について直接的に分かったことはゼロ。。

ただ、自らが美容師/理容師さんの客になることで、その2人から間接的に常連さんについての話を聞くことはできました。

「人が理由になりそうな場所」を作っている人について分かったこと

①理容マンドリン

仲良くなって写真を撮らせていただいたヒロ子さん

まずは「情報が載っていないいない」場所を選ぶ。=Google mapで検索して、一番情報のない場所へ。
ここは、星評価こそ数個あったものの、レビューは0、電話番号もなし。行って見ないとやっているかどうかすら分からない、ということで直接向かいました。

  1. お客さんを自分との相性で決めている

  2. サービスの料金や、来てもらう頻度を人によって変えている

  3. 暮らしと仕事が不可分に結びついており、近所付き合いの延長でお客さんが来たりする

1.お客さんを自分との相性で決めている
一つ目は、カルチャーショックを受けた。仕事の領域で出会うお客さんは来てもらう方が嬉しいもの、と思い込んでいたけれど、このお店のヒロ子さんはプライベートで私たちがするのと同じように、お客さんに対しても自分との相性を大事にしていた。もちろん嫌な人に対しても最低限の仕事は提供するけれど、仕事の提供を断ることもあるし、会話は最低限しかしない。
50年近く続けてきたであろうお店なので、謎に説得力があった。長く続けるコツなのかもしれない。

2.サービスの料金や、来てもらう頻度を人によって変えている
二つ目については、ヒロ子さんが冷たい人なのかというと、真逆の印象を受けたことにも言及したくて追加。お客さんとの相性が良かったり、仲良くなった人に対しては、料金以上のサービスを提供しているように感じた。
ヒロ子さんはお顔剃りを専門にしているようで、以前一人、毎日お顔剃りにきてくれるお客さんがいたという。お客さんもひろ子さんとは懇意にしており、「お金が入るでしょう」と言っていたそうだがひろ子さんは「疲れるから頼むから毎日はやめて」と言って断ったらしい。
また、たまたま私も相性が良かったらしく、気に入っていただけて美容の豆知識を教えてくれたり「眉毛も剃ってあげるわよ」と完全にサービス外のことも提供していただいたりした。

3.暮らしと仕事が不可分に結びついており、近所付き合いの延長でお客さんが来たりする
常連さんの年齢は様々で、小さい頃からここしか通ったことのなかったお客さんなどは目黒を離れても、帰省した時には遊びに来てくれるらしい。
上京してから、近所付き合いのない私からすっかり抜け落ちていた視点だった。そもそもこのお店は戦後から続いている。グーグルマップに情報を載せなくても、グーグルのない時代からお客さんはいたのだ。(ちなみにネットにはお店の電話番号は載っている。息子さんが載せてくれたらしい)
シェアハウスの入居希望者には内見をして、住んでいる人と話してもらうという流れを踏んでいる。無意識下にそのような前提があったので、「ネットに情報が載っていない」という場所選びをした背景には、「ネットに情報がなくても、魅力的な人がいて、口コミでお客さんが来るような場所なのでは」という仮説があった気がする。でも実際には、もっとシンプルな理由があった。

②VATH

ロゴはロンドンの地下鉄がモチーフになっている

こちらは「話を聞いてほしい方」に対して看板が出されていたので、そういう人向けにサービスを提供している美容師さんはどんな人か?と思い足を運びました。

  1. お客さんの意思を尊重する

  2. 相手が嫌なことをしない

1.お客さんの意思を尊重する
他の美容院から移ってこられるお客さんのなかには「毎回同じ髪型にしてもらっていたので、別の希望を言い出しづらかった」など、関係性が固定されてしまったからこそ叶わなくなったニーズを満たしに来ている人が一定数いるとのこと。そのためこのお店では問診票があり、お湯の温度や洗う強さまでを記入する方法を取っていた。また、希望の髪型が似合わないと思うことはありますか?という質問に対しては「似合わない髪型はほとんどないと思っている」とのこと。希望を受け入れる姿勢がすごく伝わった。

2.相手が嫌なことをしない
ポジティブな側面はもちろんだが、私にはどちらかというとネガティブな一面も感じられた。毎回問診票を書いてもらい、毎回「今回はどうしますか?」と聞くことは、私の常連像にある、「いつもの!」といった省略されたコミュニケーションでも伝わる関係性とは真逆だった。ここでは、よく見知っている関係性ならではの気軽さ、速さがない。丁寧であるということは、よそよそしさでもあるのだなと実感した。客としては希望を全て汲み取ってくれるから居心地がよかったが、その分、美容師さんの考えは表に出てこず、個人的には距離の遠さを感じた。(理容マンドリンではこれでもかとゴシゴシ洗われたから、余計に「慎重に扱われている」というギャップを感じたのだと思う)

一、二つ目ともに、理容マンドリンとは対照的だったのが興味深かった。

結局長くなってしまったまとめ

興味のある問いの一つ「どんな風にありたい人がシェアハウスに住むのか」の答えの手前にある、人との距離感やお客さんに対する考え方について考察できたことが大きな収穫だった。

理容マンドリンのような暮らしに近い場所・関係性の続く場所では、仕事とプライベートを切り分けようと思っても無理だから、自分の気持ちを優先している。我が儘に感じるが、そうすることで自分を守っているように感じた。
一見さんに対してドライなように感じるのも、人間関係を始める面倒臭さを知っているから保守的になっているだけだと感じた。そしていざ始まってしまったら、切ってしまうほどのドライさは持っておらず、むしろ思いやりを持ったお人好しな方なのだと思う。
総じて、サービスの提供者と受け手という関係性を超えて、人間関係に対する主権を握っている感じがする。人との関係性の築き方が仕事とプライベートでほとんど垣根がなかったため、VATHと比較して、ヒロ子さんの日常の暮らしが想像できた。
シェアハウスは住んでいる間は濃密で逃げられない関係性が続くけど、抜けてしまえば関わらないことは容易にできる。その意味で、実はシェアハウスでの関係性の方が、私が思っているよりドライかもしれない、と思った。

逆にVATHの美容師さんは仕事での人間関係は仕事での関係、と切り分けて考えていた。人間関係に対する主導権はなく、お客さんが来るも来ないもお客さんに委ねられている。再び来てくれるかは、そのお店の中で提供できるサービスの質にかかっている(美容師さんが頑張れるのはそこしかない)。だからこそサービスの質を高めようとしている。その結果「話を聞く」「心地よい場所を提供する」という、美容師の仕事の外側にありそうなものまで仕事に換算しているように感じられた。仕事とプライベートの領域がずれている、という意味ではマンドリンのヒロ子さんと似ているが、ヒロ子さんは「プライベート」が侵食していたのに対してVATHのお兄さんは「仕事」の領域が拡張しており、客として感じたのは距離の遠さだった。ここに通うお客さんは、お兄さんが提供している仕事を求めに来ているのであって、「人」を理由にしているのではない気がした。
ちなみにVATHの美容師さんはシェアハウスには住まなそうなタイプだった。

来る理由が「人」になる場というのは、場を作っている側が自分の気持ちも曝け出している場だと感じた。その結果、私たちが日常的に行っているのと同じように、仕事でも来る人を選ぶことにはなってしまう。しかし相性が合うと感じたお客さんは、その人に会うついでにサービスを受ける、という順番になるのかな、と思った。他により良いサービスが受けられる可能性を知っていても、そこで培われた人間関係を優先する。それが良いことなのか悪いことなのかは分からない。

ではその人間関係が始まるのはどんなタイミングなのか、というのが次なる問いとして生まれた。今回は半日のみのフィールドワークだったのでこれ以上の観察は行わないが、この問いを覚えておいてシェアハウスでのフィールドワークに臨みたい。

調査する自分自身のものの見方や考え方について気づいたこと

  • 常連になるには何か積極的な理由がないといけない、と思っていた

  • 人やコミュニケーションを押し出しているお店の店員さんは、人が好きで人との距離も近い方が好きな人だと思っていた

  • シェアハウスは1、2年で人の入れ替わりがあるので、自分が無意識下で捉えていた人付き合いに対する時間軸も同じくらいになっていた

  • なぜか、仕事にもプライベートの領域が出ている方が面白いと思っている

調査対象に対する思い込みに気がついた。一番下は自分の大事にしている価値観に気づく手がかりをもらえたようで、でもまだその理由が掴み切れていないので、良き問いになった。

初フィールドワークの感想

実は上記2つ以外にも、とある床屋の待合室で1時間ほど観察をしていたのだけど、観察だけでは分かることが少なく、自分がお客さんとなって聞きたいことを聞ける方が楽だと感じた。けれど面白がって聞いたことに関しても、いざまとめるとなると解釈を付与するのが想像以上にハードだった。そこで起きた出来事をフィールドノートに記述していく作業は筆が止まることがなく楽しかったけど、まとめる作業は雲泥の差があった。シェアハウスのフィールドワークはこの何倍もの時間をかけるので、怖くなった。。(笑)

他の皆さんのまとめ方が全然違っていて面白かった。自分はドキュメントにばーっと書き起こしていたけど、私の文量は他の人と比較しても多かったので、文章が自分のやり方に合っていたのかなと感じた。

このまとめnoteは考察という名の自分の主観が入りまくった主張になっている気がして、フィールドワークのまとめと言えるのか心配でならない(笑)



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