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映画感想#50 「サンドラの週末」(2014年)

原題:Deux jours, une nuit
英題:Two Days, One Night
監督・脚本 ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演 マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジョーネ、オリビエ・グルメ、モルガン・マリンヌ 他
2014年 ベルギー・フランス・イタリア合作 95分



同僚の復職 or ボーナス、どちらを選びますか?

うつ病で休職中のサンドラが告げられた、突然の解雇。復職するには、ボーナスがなくなることを、過半数の同僚に説得しなければなりません。
つまり、サンドラとボーナスが天秤にかけられてしまったのです。

こんなこと、あり得るのでしょうか?うつ病で休職しているのに、サンドラが自ら説得する必要があるなんて。そしてボーナスが払えないのは会社の都合なのに、従業員がそれを説明するのもおかしい。
…と、この会社への疑問がどんどん湧いてきますが、まあそれはさておき。

主演のマリオン・コティヤールは、うつ病の不安定なサンドラをリアルに演じていました。どこか上の空のような、不安で常に泣き出しそうな表情が、見ていて心配になるほどです。

見どころの一つは、夫マニュの献身的なサポート。彼は、同僚を説得するという辛いミッションに立ち向かう妻を励まし続けていました。彼がいなかったらサンドラは泣いてばかり。もしかしたら、最悪死んでいたかもしれない。
辛い時に、精神的に頼れる人がいることの大切さを強く感じました。

ダルデンヌ兄弟が描くのは、ダイナミックな何かではなく、日常社会の中にある人間の姿です。結末として、サンドラの説得は成功したわけではありませんでした。でも、意味のなかった2日間だったということではない。
サンドラを応援してくれる同僚たちの温かさ。ボーナスを選ぶ同僚のやるせなさ。全部わかる。ボーナスを選ぶのは、生活に余裕がないためであり、サンドラが嫌いだからというわけではないはずです。そこを描いているのが面白かった。
同僚たちの事情やサンドラに対する反応、その全てを受け取ることができたからこそ、潔く新しい道に踏み出すことができたのだと思います。
サンドラが、この先良い人生を歩めますように。

☆鑑賞日 2015年6月21日


余談①〜ボーナス諦めろなんて言えない〜

自分だったらこんなことできない…!絶対にできない。説得する前に辞職すると思います。だってそんな無責任な会社にいても良いことないし、逆の立場だったら絶対にボーナスは欲しいと思うだろうし。
だからサンドラとマニュは本当によく頑張った!
そんなことを社員にさせる会社はもうやめましょう!(笑)

余談②〜ダルデンヌ兄弟の社会派作品の魅力〜

ベルギー出身のダルデンヌ兄弟は、本作のように労働者階級や移民を扱うことが多い、社会派の映画監督です。人々の間に根付く偏見や格差問題、家族関係などを題材にし、このような問題を映画作品を通して、世に訴えかけている方々だと思います。
華やかさというよりは、真面目さ。しかし耐え難い現実をただ描くのではなく、見終わるとちょっと希望も感じるような。辛い現実はあるけど、誰かの力を借りて、助け合って乗り越えていく人々の物語は、見る人に希望を与えてくれます。

▼ 同じくダルデンヌ兄弟「少年と自転車」はこちら。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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