見出し画像

雑記|読書感想文「もものかんづめ」(2001年/さくらももこ)

こんなに面白く日常を切り取れたらなあ。
きっと、さくらももこさんの日常だけがこんなに面白いんじゃなくて、誰しも似たような面白いことは起きているはず。でも、どこを切り取るか、どういう表現や比喩を用いるかで、こんなにも面白くなるなんて…

「もものかんづめ」でも、アニメ「ちびまる子ちゃん」でも、印象的なのは家族のこと。特に「メルヘン翁」と題されたお話では、家族の少しだけシビアな部分が表れていると感じました。
老衰で突然亡くなったお祖父さん、そしてその後の葬儀の経過を軽やかに辿っていくのですが、そこにはなんと笑いが溢れています。亡くなった人の死に顔やら棺やらをこんな風に描写できるなんて!
私のこの感想に批判の意味は全くなく、むしろ”尊敬”に近いのですが、当時は批判の声も少数ながらあったそうで。その点について、後書きのような「その後の話」という章で、筆者はこのように書いています。

"身内だから”とか”血がつながっているから”という事だけで愛情まで自動的に成立するかというと、全くそんなことはない。かえって血のつながりというものが、煩わしい事である方が多いとすら思う。

「もものかんづめ」(集英社文庫)P227

決して「家族=好き」の方程式が成り立つわけではないんだ、と。
アニメの「ちびまる子ちゃん」では、お祖父さんがまる子を溺愛していますが、実際は真逆だったというのは有名な話です。筆者はお祖父さんのことが「好きではなかった」(P 228)と明言しています。

ここからは私の意見ですが、せっかく血の繋がりを持てたのであれば、その繋がりを大事にできたら一番良いんだろうな、とは思います。
幸せなことに、私自身は家族関係で問題を抱えてはいません。しかし世の中には子に暴力を振るう親がいたり、親を殺してしまう子がいたりするわけです。
親ガチャ」なんて言葉があるくらい、自分で自分の生まれてくる環境を選ぶことはできないのは事実。でも、どうにか「血の繋がり」を成功/失敗と二分するのではなく、自分の「持ち物」程度に捉えてうまく付き合っていけたら
もちろん理想論だとは思うけど。

と、ちょっと真面目な話になりましたが、私はこの本を読んでまず何よりも笑いましたし、楽しい1冊ではあります!
大爆笑するというよりは、じわじわ笑いが訪れる感じ。電車で読むと口元がニヤニヤしそう。あー楽しかった。

ではまた。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?