見出し画像

NHKスペシャル「ガザ 封鎖された町で」

NHKスペシャル「ガザ 封鎖された町で」

これは、初回放送日が2003年9月27日の番組である。
今(2024年1月31日現在)、NHKプラスで配信されている。配信は 2024年2月2日 午前0:40 まで。

先日、アミラ・ハス「パレスチナから報告します」を読んだが、2003年というのはそれとほぼ同時期である。

番組で語られていた内容は、アミラ・ハスが書いたものと同じだった。だが、知らなかったこともある。


番組は、イスラエルの検問を抜けてガザにはいるところから始まる。暫定であるとは言え「自治政府」であるはずなのに、自治政府以外が検問するということがすでに異様に思える。

検問を抜けるとだだっ広い舗装された道が伸びている。緩衝地帯であるらしい。これをひたすら歩くのかと思えばそうではなく、向こう側から黄色い車が一台近づいてくる。緩衝地帯に入ることが許されたパレスチナ人が運転するタクシーである。そのタクシーに乗り込んでガザに入ってゆく。映像にタクシーの運転手との会話はない。禁止されているのか、タクシー運転手が寡黙なのか。それはわからなかった。

ガザに入る。

至るところに見える破壊された跡。イスラエル軍は過激派幹部の本拠地であるとして、ガザを繰り返し攻撃している。そこここにイスラエル軍が駐屯している。イスラエル入植者の家々も見える。イスラエルの住居は屋根が赤い。その綺麗な赤い色の屋根があちらこちらに散在する。このイスラエルの入植は国際法違反なのだそうだ。たが、入植するイスラエル人たちは神から与えられたものだと言って譲らない。

海岸付近に入植地があれば、反対側のイスラエル領まで道路をひく。その道路はパレスチナ人の居住区を分断する。そして、イスラエル人の専用だ。パレスチナ人はむやみに立ち入ることはできない。

入植者は、時にはパレスチナ人のオリーブ畑を潰し、パレスチナ人の住居に押し入る。イスラエル兵がそれを制止することはない。

イスラエル兵に石を投げれば、たとえ子どもでも撃たれ殺される。

ハマスは戦闘で亡くなった兵士の家族を優遇する。自爆テロで夫を亡くした女性はハマスの暴力的な行為は批判的だった。しかし、5人の子どもを育てるためにはハマスに頼らざるを得ない。ハマスは、子どもの教育場所、教材、生活用品、生活費を支給してくれる。暫定自治政府は何もしてはくれない。そうしてまた兵士が育てられていく。だが、彼女に抗う術はない。

ある父親は息子に言う。「暴力では解決しない。武器を置いて国際世論に訴えるべきではないか」と。だが、息子は首肯しない。「そんなことをしても同じことの繰り返しだ」。父親は、もう息子を説得する言葉を持たない。

当時、イスラエルに逮捕され拘束されているパレスチナ人は8000人。面会もままならない。26歳で弟が逮捕されたのは17年前。最後に面会できたのは7年前。体調を悪くしていると人伝に聞いた。だができることがない。


パレスチナだけが、パレスチナ人だけがこれだけ抑圧された環境に耐えなければならないという謂れはない。
ないはずである。

この番組、映像は20年も前のものである。だが、何一つ変わっていないように見える。今は更に状況は悪化している。当事者だけではない。国際社会は何一つ変えられなかった。

私たちは変えることができなかったのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?