『洗髪が嫌いです。夫や息子に「フケがすごいよ」「くさっ」などと言われてようやく洗う始末です。今のところは月に3〜5回といったところでしょうか。濡らす・洗う・流す・乾かす、すべて面倒なのですが、洗髪を好きになれる心の持ちようを教えてください（41歳・女性）』

お悩み相談に、こんな質問がきたら「yes」読者の皆さんはどう答えますか？

何を隠そうこの相談者は私です。
私の髪は太くコシがあり、ちょっとやそっとの水量ならば頭皮まで届かないほど群生のマングローブ。鬱蒼と生い茂る髪を掻き分け、ようやく辿り着いた毛根に指を当てようとするも、京都・嵐山の竹林の小径くらいなら歩きやすそうですが、こちとらアマゾン奥地の密林地帯。恵みの雨も大地に触れた感覚がないまま予洗終了とし、シャンプーをイチ、ニー、サン、シー、５プッシュ！　手のひらからこぼれそうなシャンプーを頭になすりつけて、とりあえず1回目はこの量でいこ！
これが多量剛毛族である、私のシャンプールーティンです。

毛量多め＆剛毛＆スーパーロングというシャンプーにおける三重苦を背負った私は、この相談をある男性に投げかけました。その人は日本を代表するタブラ奏者・ユザーン。アフロなヘアスタイルと年一回のインド長期滞在…この特徴から考えて、いかにも私と同じように洗髪が嫌いそうだなと思い浮かんだのです。氏は自身のHPで「みんなでU-zhaanに聞いてみよう。」というコーナーを設けており、質問や相談を広く募集してるので、私も投稿してみたのでした。
数日後。返ってきた回答はこんな一文から始まっていました。
『僕は髪を洗うのが昔から好きです。』
あ、そうやったん…と思ったと同時に、外見でジャッジした自分を省みました。反省してます。
洗髪好きのユザーンさんから提案された解決方法は、短髪にする、またはLUSHから発売されている「ドライミー！」というドライシャンプーを使用してはいかがでしょうとのことでした。
大変有益な解決策にも関わらず、私は短髪にすることも、ドライミー！を買うこともなく、相も変わらず10日に1回、アマゾンの奥地を彷徨っておりました。

さて、10日に1回ペースで約半年間、洗髪を続けるとどうなるのでしょう。
①臭くなる
②脂ぎる
③フケが出る
正解は「めちゃめちゃ臭くなって何回洗っても脂も匂いも取れずフケが大量に舞う」です。
クサいと家族に指摘されたため、連続で3回シャンプーした直後の頭皮を夫に匂ってもらったところ「MAXでくさいのが10としたら、8」と言われ愕然としました。たった今、洗って流すを3度繰り返したばっかりなのに？　3日か4日に1回シャンプーしてた頃はここまでひどくなかったハズ。ということは、これから洗っても洗ってもどんどんニオイが蓄積する負のスパイラル…。

焦った私はプロの掃除屋に頼むことにしました。ゴミ屋敷の清掃は、業者に頼むに限ります。その日のうちに、某ヘアサロンの「ヘッドスパ」を予約し、サロンのドアを叩いたのでした。
「こんにちは！　ヘッドスパニストの◯◯です〜！」と明るい声でやって来たのは、耳元にイヤリングカラーを施した、ピュアな瞳が印象的な女性スタッフ。カウンセリングで彼女が私の髪に触れる度に「漏れ出る漏れ出る（においが）！」とヒヤヒヤしましたが、まずはマイクロスコープで頭皮の状態をチェック。私は鏡ごしにその様子を見ていたのですが、頭皮が画面に映った瞬間、普通に引いてました。さっきまでの明るい雰囲気とはまるで違う、深刻な声色で「これ、ぜんぶ汚れですね……」とスコープを色々な角度で頭に押し当てるうちに、ゆっくりと彼女は言葉を失っていきました。

そう、私の頭皮は積年の皮脂汚れでめちゃめちゃ汚かったのです。もはや野性の野良猫レベル。首を垂れる私に「ホホバオイルでしっかり頭皮ケアしましょう！」と、彼女は笑顔を向けてくれました。そこからは、クレンジング〜マッサージ〜トリートメントと至福の60分間、魅惑の変身。フォンテーヌ。野良猫から家猫へ。施術後、マイクロスコープで自分の頭皮を観て、ヘッドスパニストは神！　と確信しました。
帰りに受け付けで「次のヘッドスパ、予約しますか？」と聞かれた私が、サラサラの髪をなびかせながら、「YES!」と答えたのは言うまでもありません。

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この記事は、ヘアサロン雑誌『「yes」 vol.5 』に掲載されたものを転載しました。