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詩『ゆれるもの』 2011年6月

柱時計と向き合っていた
こつこつ刻む時を数えていた
数は足りるだろうか

やがて時は歌い始めた
水が滴る
風が吹く
雷がなる
やがて静かな海ができたと

星の鼓動が海を揺らす
揺れる潮(うしお)から心臓が生まれた
心臓は潮のなかで鼓動することを覚えたと

時は歌い終わると
大きく揺れて歪んだ
歪んだ波と波の狭間に闇ができた

闇が呼ぶ
口を大きく開けたり小さくすぼめたりして

泳がねば
泳ぎ着かねば
闇の向こうを覗かねば

闇の向こうに落ちた時
私は鼓動する心臓を抱えて
海の底にうずくまっていた
海の中で時を刻む柱時計の音を聞いていた

時が私の心臓を動かしている

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