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ワカ(メ)山カレー事件

「今はこんなに悲しくて涙も枯れはてて」
というのは中島みゆきの歌ですが、この一節を獄中から家族への手紙に書いた人物が犯人とされている事件を妄想しながら、海の香がするカレーを調理した記録。


材料

茎わかめ     多め
鯖水煮      1缶
玉葱       1/4
トマト      1個
ピーマン     1個
生姜       1欠け
大蒜       1欠け

ターメリック   大匙1
クミン粉     大匙1
コリアンダー粉  大匙1
ガラムマサラ   大匙1
唐辛子粉     小匙1
ローレル     1枚
クローブ     小匙半分
カルダモン    小匙半分
ココナッツオイル 大匙2

白ワイン     200㎖
水        100㎖

ウスターソース  大匙1
酢        大匙1

平成十年(1998)7月25日、和歌山市園部の夏祭りで提供されたカレーを食べた67人が苦しみ、内4人が死亡。これが平成の日本を揺るがせた「和歌山カレー事件」
最初は青酸化合物の混入が疑われたのですが鑑識の結果、ヒ素が混入されたことによる無差別殺傷事件として捜査。


トマトをミキサーでジュースにする。

まだ犯人が特定されていない内にマスコミが執拗に追っていたのが林眞須美。
リアルタイムでこの事件に接した人の中には、この名前を聞くとホースで水をカメラマンらにぶちまける林の映像が頭に浮かぶ人がいるのではないか。私もそうですが。
これは当時、テレビが何度もこの映像を流したからでしょう。怪しい人物という印象操作。
取材の者がポストの中を覗いたり、子供にまで執拗に話を聞こうとしていたことに対する怒りの表現だったらしいのですが、これがまんまと使われた。


大蒜と生姜を摺り下ろす。

この時代、一般的にマスコミの取材合戦は過熱。話題の事件で怪しいとされた一般人や芸能人のスキャンダルに食らいつき、なりふり構わず追い続け、時には発言の一部を切り取って疑惑を報じた。写真週刊誌等という物が人気があったのも一因。勿論、視聴者や読者がいち早く、そうした事件の情報を求めたから、それを提供したとも言える。

同年10月4日、渦中の人となった林眞須美と夫の健治が保険金殺人未遂と保険金詐欺容疑で逮捕。12月にはカレー事件の容疑者として再逮捕。


玉葱とピーマンを微塵切り。

この事件、これで解決とはとても思えない。闇がある。
林眞須美には死刑判決が出ているのですが動機も物的証拠も自白もない。
限りなく怪しいという状況証拠だけで死刑判決。
冤罪ではないかという声は未だにあり、そのために法務大臣も死刑執行の書類にハンコを捺せないのではないか。
万一、冤罪ということになったら執行後では取返しつきませんから。

私は林眞須美が清廉潔白なのに無実で収監されていると言っている訳ではありません。余罪のように言われている保険金詐欺については間違いなく彼女の犯行だろうと思っています。しかしカレー事件については無差別に住民を殺害する動機が不明確。


大蒜と生姜、スパイスをココナッツオイルで炒めて練りマサラ作り。

夫の健治は白アリ駆除会社を経営していてヒ素を自宅に置いていた。そのヒ素とカレーに混入されたヒ素が同一と鑑定されたことが証拠となっていますが、自宅にヒ素があったとはいえ、彼女がそれを持ち出して混入したとは言えない。誰かが持ち出した可能性もある。鑑定結果には不正や捏造或いは間違いがあったという話もある。本当にヒ素が同一だったのかもどうやら疑わしい。
一審判決までは林眞須美は黙秘。その後は犯行を否認。それでも死刑判決。
控訴も上告もしたものの判決は翻らず。疑わしきは罰せずという原則はこの事件には適用されず。
再審請求を二度出したものの棄却。現在も死刑囚として大阪拘置所に収監中。


トマトジュース、白ワイン、水、野菜に鯖、茎ワカメを投入。

林眞須美が犯人とされたのは、彼女しかカレー鍋に毒物を混入させる機会がなかったからという状況証拠のみしかない。一応、眞須美が鍋から離れた時間が20分程あったという証言もあった。その間に何者かが毒物を入れた可能性もある。しかしその証言をしたのは林家の次女だったので信用されず。

林眞須美は保険外交員だったので保険に詳しく、そのために保険金詐取が可能だった。その事実が余計に彼女ならやり兼ねないという印象に繋がった。


ガラムマサラ、粉唐辛子投入。鯖を崩しながら混ぜていく。

未だにこの事件には謎が多いとして、更には真犯人は○○だと断定したような説もネット上には散見される。しかし犯人捜しが本稿の目的ではない。
常識と思われていることや断定されていることでも、もしかしたらそうではないかもしれない。自分の頭で考えてみましょうという提案のモデルケース。
一般的に日本人はメディアへの信頼度が高い。新聞やテレビは絶対に嘘つかないと思っていませんか?
政府や警察が間違う筈がないと思い込んでいませんか?


ローレル、カルダモンとクローブを入れた出汁パック投入。混ぜながら煮込む。

マスコミが報道した通り、やっぱりあの女だったかとか、裁判所が判決を下したのだから間違いないと無条件に信じていませんか?少し調べてみるとおかしな点が幾つも出てくる。
何等かの意図が働いたのか、捜査が不十分だったのか、林眞須美が犯人に違いないと言う決めつけがあったのではないか。
警察や検察、裁判所は万一、冤罪となっても組織ぐるみで隠蔽することも可能でしょう。(あくまでも可能性の話で、実際にそうだと言っている訳ではありません。誤解なきよう)
最終的に執行を指示する法務大臣は大概、議員。万一、執行後に冤罪が明らかになったら取返しがつかず、自分の評判がた落ちで次の選挙に響く恐れがあるので執行の書類にハンコが捺せない?


ワカ(メ)山カレー事件

茎ワカメのコリコリ食感がいい。塩蔵だったのでそのまま使用で塩も要らず。程よい塩味がスパイスに絡んで美味い。ほぐれた鯖の身がキーマカレーっぽい?トマトからリコピン、鯖からDHAやタンパク質、茎ワカメには葉ワカメの二倍の食物繊維やカルシウム。

保険金詐欺の共犯として起訴された夫は既に刑期満了で出所。
林家には四人の子。長男は獄中の母とずっと向き合っている。
長女は自殺したらしい。
もしも冤罪と立証されたとしても、失われた時間と命は戻らない。
謎多き事件のあれこれを妄想しながら、ワカ(メ)山カレー事件をご馳走様でした。

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