『蝶々占い』(改)

好き、嫌い…
好き、嫌い…
好き…ウフフ…

(ーーきゃっ!)

床に散らばったものを目の当たりにして
息を飲む声

(な、なんてこと……
メ、メアリー!
あなた、一体ここで何をしてるの!?)
悲鳴に近い声をはりあげる
愚鈍な母親のおでましだ

なにって
見てわからない?
占いよ

好き(ぶち)…嫌い(ぶち)…
好き(ぶち)…嫌い(ぶち)…

近所のガキどもに色目を使って
捕まえてこさせた大量の蝶を
虫かごから一匹ずつ取り出しては
羽をむしりとる

(い、いやあ…
いやよ…お願い…やめて…メアリー……)

白い羽…
黒い羽…
黄色い羽…
紫の羽…
ほらみて
ステンドグラスみたいに綺麗な羽もあるわ!
それを容赦なくむしりとる(ぶちっ)

(ああ…ごめんなさい…メアリー…本当にごめんなさい…)

なんて滑稽なの
羽をむしりとられた無数の蝶の本体が
その野太い腹をくねくね揺らして
床にうごめいてる
まるで芋虫たちの求愛ダンスみたい…

いっそみんな踏み潰したくなる…

(ああ…メアリー…どうかママを許して…
あなたをこんなところに閉じ込めたから……
ママが悪かったわ…だからお願い
もうこんな……っ!?)

好き!(ぶちゃ!)嫌い!(ぷちっ!)
好き!(ぷちゃ!)嫌い!(ぶちょ!)

ねえ、ママも一緒に踊ろうよ?

床を踏み鳴らしてワルツを踊る
足の裏にかすかな弾力と汁気を感じながら

い、いや……いやよ……
いやあああああああアアアアあ!!!!

好き…嫌い…
好き…………嫌い

ああ、やっぱり……
ママ…あたしのこと…嫌いだったんだ……
ふふ…ちょうどよかった

(え……? なにを言ってるの?)

あたしもママのこと…
大嫌いだったから
でも……パパはもう、あたしのものよ
あたしのほうが、若いし、綺麗だし…
昨日だってパパの方から……

(メ、メアリーッ!?)

好き…嫌い…
好き…嫌い…
好き…ウフフ……

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。