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『尻~その真白き双丘の狭間で~』

私は短気な父が嫌いであったし、許せもしなかった。
とうに亡くなった今でさえそうだ。

あるとき、なぜ母親と結婚したのか、
家族でその馴初めを訊いたことがあった。

「尻が一番でかかった」

父は確かにそう言った。
母の尻を見て一緒になったと。

それを聞いた瞬間、ある種の生理的な嫌悪を感じるとともに
どうしようもなくその血が流れていることを受け止めざるを得ず
行くことも戻ることもできないような
尻の持っていきようのない狭間で
私はこれからも尻を愛していくしかないのだと
ひとり思い定めて、こんにちを生きている。

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。